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虫ん坊 2011年7月号 コラム:虫さんぽ 第17回:【夏休み関西さんぽ・後編】兵庫県宝塚市:手塚治虫記念館周辺を歩く

虫ん坊 2011年7月号 コラム:虫さんぽ 第17回:【夏休み関西さんぽ・後編】兵庫県宝塚市:手塚治虫記念館周辺を歩く

 手塚治虫先生が多感な少年時代を過ごした街・宝塚。その街の真ん中に、手塚ファンの殿堂・宝塚市立手塚治虫記念館は建っている。この夏、記念館へ行ってみようという方も多いと思うけど、記念館だけを見て帰ったんじゃもったいない! 記念館周辺には手塚なスポットが盛りだくさんなのだ。今回は、手塚治虫記念館から半日で巡れる宝塚界隈の虫さんぽです。



◎手塚治虫記念館から散歩スタート!

虫ん坊 2011年7月号 コラム:虫さんぽ 第17回:【夏休み関西さんぽ・後編】兵庫県宝塚市:手塚治虫記念館周辺を歩く

宝塚市立手塚治虫記念館。開館時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)、休館日:水曜日(祝日と重なるとき、春・夏休み期間中は開館)12月29〜31日、2月21〜2月末日 ※その他臨時旧館あり、入館料:大人700円、中高生300円、小学生100円

 今回の虫さんぽは、先月公開の大阪編に続いて「夏休み関西さんぽ」後編をお送りいたします。手塚治虫記念館を出発地点とし、手塚マンガの原点ともいえる場所を巡る、およそ3時間半の小旅行です(所要時間に手塚記念館の見学時間は含まれていません)。
 また散歩の締めくくりには、去る4月30日に宝塚文化創造館で開催された、宝塚市観光大使サファイアの公開選考会を突撃取材! 新たに二代目観光大使サファイアに選ばれたおふたりからは、虫さんぽ読者への直メッセージももらってきたぜ! うおおぉ〜〜〜っ!! 今回もぜひ最後までおつきあいいただきたいっ!!


◎建物に入る前から大興奮!

 ということで、まずは何よりともかく手塚治虫記念館へ直行しよう。宝塚駅からは花のみちをそぞろ歩き、宝塚大劇場の前を通過しておよそ8分で到着する。
 阪急今津線のガードをくぐると、正面に虹色に光るチタン張りの窓が目をひく円柱形の建物が見えてくる。これが手塚治虫記念館だ。建物の前では、高さ4〜5mはあろうかという大きな火の鳥のモニュメントがさっそく出迎えてくれた。さらに正面玄関へと向かうその足元には、手塚マンガの人気キャラクターたちの手形・足形プレートが!! 手塚ファンなら上を見ても下を見てもいちいち感動してしまうところだけど、早く進まないと、ここで一日が終わってしまいます。

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玄関前には人気キャラクターの手形・足形が。誰がいるかじっくり見てみよう

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小さな子どもが、手形足形を飽きずにながめてました


◎記念館内部は隅々までチェックすべし

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玄関ホールの床は手塚先生の顔型にモザイクタイルが敷き詰められていた。こ、これを踏んで歩くのはおそれ多いぜっ!!

 そして館内へ入ると、もちろんこちらも手塚キャラ一色!
 建物は地下1階から2階まで3フロアに分かれている。まず1階は常設展示室と、手塚アニメなどを上映するアトムビジョン映像ホール。地階は1分の1で再現された手塚先生の仕事場と、自分で描いた絵をその場でアニメにして動かしてくれるアニメ工房など。そして2階がすごい。企画展示室と、自分で操作して楽しめる情報・アニメ検索機、手塚マンガがその場で自由に読めるライブラリー、記念館限定オリジナルグッズが盛りだくさんのミュージアムショップ、そして手塚キャラに囲まれてお茶ができるジャングルカフェなどがある。
 記念館の建物の延べ床面積は1395平方メートル。ひととおり見学するのにかかる平均時間は、およそ1〜2時間くらいだろう。だけど実はこの記念館、ショーケース内の展示物だけが見所ではない。壁から天井から柱から、およそあらゆる場所に手塚キャラが隠れているのだ。それらを細かくチェックしようと思ったら、少なくとも3時間はみておいたほうがいいだろう。用がなくてもトイレへ入ることもお忘れなく!  それから館内は、企画展などで撮影禁止となっている場所以外は撮影OK。自分だけの思い出をバシバシ記録しちゃっていただきたい。

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1階の常設展示ルーム。『火の鳥・未来編』に出てくる「生命維持装置」のような形のケースの中に、貴重な品々が展示されている

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2階にある情報・アニメ検索機。自由に座って操作できる。手塚クイズにも挑戦できるぞ

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取材当日は『ブッダ』の企画展が開かれていた。7月1日からは「osamu moet moso feat.いとうのいぢ」という企画展が開催される(10月24日まで)。現在マンガ・アニメ業界で活躍中のクリエイターたちが「萌え」と「妄想」で表現した手塚作品の世界をイラストで表現。さらにライトノベル「涼宮ハルヒ」シリーズで注目のイラストレーター・いとうのいぢ氏(兵庫県出身)をフィーチャーするっ!!

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手塚記念館で販売中の「サファイア特別住民票」。特製クリアファイル付きで400円。今だけ入手可能な数量限定品なので、この夏のお土産にピッタリだ


◎コンサートや紙芝居で記念館を盛り上げる

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手塚治虫記念館の松本由美子さん。「これからもいろいろな企画を用意していますのでご期待ください」とのことでした

 ここで手塚治虫記念館の松本由美子さんにお話をお聞きしよう。松本さんドゾー!!
「手塚治虫記念館は1994年4月に開館しました。当時、手塚プロに対して記念館誘致のお話は、ほかの地域からもいくつかあったそうですが、最終的には手塚先生の育った宝塚市に、市の施設として建てられることが決まりました。
 私が宝塚市から記念館へ配属になったのは2005年4月からです。今の私の仕事は、新しいお客さまに足を運んでいただくにはどうするか、ここを何度も訪れたい場所にするにはどうするかを考えることですね」
 そのために工夫されていることはありますか?
「はい。5年前からゲストを招いてコンサートを開くなどの立体的な企画をいろいろと試みています。
 紙芝居師の安野侑志(やすのゆうし)さんによる、手塚先生の少年時代を描いた紙芝居は2008年から毎年上演しています。これは2006年に京都国際マンガミュージアムのオープニングセレモニーへ行った際、そこで安野さんが紙芝居を上演されていたのを観て、その場で安野さんに「手塚治虫」をテーマとした紙芝居ができないかと思い切って相談してみたんです。すると安野さんの方も手塚先生の少年時代のお話で暖めていた話があると。結局、それが2年後に実現したんです」


◎虫さんぽ必携のマップを無料ゲット!

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こちらは手塚記念館で無料でもらえる「たからづかワンダーマップ」。裏面には各ポイントの詳細な解説も付いているぞ

 続いて松本さんからいただいたのは『手塚治虫のたからづかワンダーマップ』と題されたB4サイズのイラストマップである。
 これは手塚先生が少年時代に昆虫を追って駆けめぐった野山の風景が、懐かしい絵柄でパノラマ化されて描かれている。まさに今回の虫さんぽの必携品となるものだ。  しかもこのマップ、記念館で何と無料で配布されているという。これは皆さん、ぜひ忘れずにゲットいたしましょう! しかし松本さん、タダでもらっちゃっていいんですか!?
「はいどうぞ(笑)。このマップは宝塚が手塚先生のマンガと切っても切れない深い関係にあるということがひとめで分かるものとして製作したんです。このマップに描かれている場所で現存するところは少ないんですが、イラストから当時の雰囲気を読みとっていただければ幸いです。
 このイラストを描いてくださったのは、京都精華大学(きょうとせいかだいがく)OBでイラストレーターのドウノヨシノブさんです。京都精華大学と記念館とは以前から交流がありまして、そうした縁がこのマップの製作にもつながりました。
 記念館としては、京都精華大、京都国際マンガミュージアムなど、関西を中心としたマンガ関連の組織とは、これからもいろいろと連携を深めながら、手塚先生の業績を後世に語り継いでいきたいと思っています。夏休みにはぜひ皆さん、記念館へ来てください。スタッフ一同、お待ちしております!」


◎手塚先生の少年時代のゆかりの地へ

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静かな住宅街の中を曲がりくねった上り坂が続く。昔は森や畑が広がっていたことを想像させますね

 うーん、やっぱり手塚記念館に長居してしまった(笑)。  まずはいったん花のみちを通って宝塚駅前まで戻り、JR線の線路を渡って、細い路地を北へと向かう。道は緩やかな上り坂になっていて、その先は御殿山(ごてんやま)という地名の通りの小高い山になっている。
 手塚先生は5歳から24歳までこの宝塚に暮らしていた。手塚先生のエッセイから、当時のこのあたりの雰囲気について書かれた文章を引用してみよう。 「ぼくの故郷の宝塚は、当時、昆虫の宝庫であった。有名な温泉や歌劇場はほんのひとかたまりの盛り場であり、だらだら坂をのぼりつめると、肥料の臭いや牛の鳴き声がし、視界がひらけて野菜畑と稲田になった」(講談社版全集第383巻『手塚治虫エッセイ集1』より)

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視界が開けたところにある瓢箪池(下ノ池)。最近は、危険だと言ってこうした池は周りを囲われたり埋め立てられたりしている場合が多いから、今では貴重な風景だ

 今ではすっかり住宅地になってしまい、当時の面影(おもかげ)はわずかしか残されていないが、それでも見所はあるのでご安心を!
 上り坂がどんどんキツくなってきて、住宅地の路地を抜け、先生のエッセイの通り視界がパッと開けたところで目に飛び込んでくるのが、広々とした人工の貯水池だ。  先生は子どものころ、この池を「瓢箪池(ひょうたんいけ)」と呼んでいたというが、正しい名称は下ノ池(しものいけ)という。下があるからには当然上もあったわけで、道路を挟んで向い側の御殿山公園となっているところには、先生が「釣り池」と呼んでいた上ノ池があったというが、残念ながらこちらは埋め立てられて今はない。しかしこのあたりまでくると比較的緑が多い場所もあり、今でもいろいろな昆虫が見つかりそうだ。


◎住宅街の(すみ)に建つ蛇神社

 この瓢箪池の横を通ってさらに坂道を上ってゆくと、住宅地の隙間に隠れるようにして小さな名もないお稲荷さんが(まつ)られている。地元の人でもなければほぼ間違いなくスルーしてしまう場所だ。しかし! ここも重要な手塚スポットなのである。
 手塚先生が少年時代、ここに名付けた名前は「蛇神社」。何とも雰囲気のあるネーミングだ。当時からフィクションの才能に満ちあふれていたことがよく分かりますね。
 そして、この蛇神社は1979年に発表した短編『モンモン山が泣いてるよ』の中にも、物語の中心的な舞台として登場している。物語の中では蛇神社は取り壊されてしまうが、本物の蛇神社は今もひっそりとこの地の平穏(へいおん)を守っている。


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小高い丘のような場所にひっそりと建つ蛇神社(お稲荷さん)。1995年1月の阪神・淡路大震災で倒壊した後、再建されたというが、鳥居はまた倒れてしまったらしく、ぼくが訪れたときは横に寝かされていた。今では住宅が視界をさえぎっていて、ここから町を見下ろすことはできないが、昔は非常に見晴らしの良い場所だったらしい

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蛇神社の境内に立つイチョウの木


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『月刊少年ジャンプ』1979年1月号に掲載された読み切り『モンモン山が泣いてるよ』。時代は戦争が始まる直前の昭和11年、手塚先生自身をモデルにしたシゲル少年が、紋紋山(もんもんやま)の奥の蛇神社で出会ったのは、自分を蛇神社の白ヘビだと名乗る青年だった。講談社版全集では第124巻『タイガーブックス4』に収録されている

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『モンモン山が泣いてるよ』の中では、イチョウではなくポプラの木になっているが、その場所の雰囲気は今もまったく同じだ


◎なかなかたどり着けない猫神社

 蛇神社から、住宅地をぐるりと迂回(うかい)して次に向かったのが、手塚先生が「猫神社」と呼んだ場所だ。本来の名前は千吉稲荷神社。う〜ん、手塚先生、またしてもクールな命名、100点満点です!!
 そしてこの猫神社もまた、手塚先生が昆虫採集にしばしば訪れた場所だそうで、しかもここはその当時の面影が色濃く残る貴重な場所なのだと聞いている。  ところがこの猫神社の神様は人を化かすのが好きなようで、地図でおおよその場所の目安は付けてきたにもかかわらず、なぜかなかなかそこへたどり着けない。住宅の隙間から、それらしきこんもりした森が見え隠れしているのに、そこへ向かう道が見つからないのだ。
「あれ〜、おかしいなァ……」と首をかしげながら何度か行きつ戻りつしたところで、ようやくその入り口を発見。まるでトトロの森のような不思議体験でありました。  ほんの数分だけど少年のころに戻ったような冒険気分が味わえて楽しかったので、今回のさんぽ地図でも、その入り口は曖昧に描いていただいた。初めて行かれる方はぜひこの体験をしてみてください。
 2010年3月、地元の人たちがここを「手塚治虫昆虫採集の森」と名付け、この神社の氏子の人たちが資金を出し合って記念碑を設置した。こうした地元の人たちの愛があれば、この神社の森は末永く残っていくことでしょう。

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やっとたどり着いた猫神社(千吉稲荷神社)の森。この入り口にあなたはたどり着けるかな?

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猫神社の鳥居の前に立てられた「手塚治虫採集の森」の記念碑。手塚先生は当時、このあたりで、2歳下の弟と競うようにして昆虫採集に明けくれたという

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猫神社の社殿。ぼくがここを訪れたときは、地元の青年がジョギング姿でこの石段を一気に駆け上がってきて、ペコリとお辞儀をすると、また一気に走り去っていくという光景が見られた。なんだか心和むとってもいい感じだった


◎「記念館はこちら→」案内プレートコレクション

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宝塚駅と宝塚南口駅周辺5箇所にある案内板。どこにあるか探してみよう! ※1箇所写真がない、スマン(大汗)

 蛇神社と猫神社の探索を終え、坂を下って宝塚駅まで戻ってくると、そこには現代の都会の風景が広がっていて、まるで時間旅行から戻ってきたタイムトラベラーのような感じがした。
 ここで、先ほど手塚記念館で松本さんから仕入れておいた小ネタを紹介しよう。それは「記念館はこちら」という案内プレートの設置場所の情報だ。松本さんによれば案内プレートには2種類あり、駅前など5箇所に設置されているという。
 まずひとつ目が阪急宝塚駅に隣接して建つショッピングビル「ソリオ1」の西側入り口横にある。続いて2つ目と3つ目は花のみちの入り口とその途中。4つ目は記念館側から宝塚大橋を渡った左側のビル「サンビオラ5番館」前。そして5つ目が阪急今津線宝塚南口駅を出たところのタクシー乗り場近くに設置されている。
 まー言ってしまえば単なる案内板ですから、わざわざ見に行くほどのもんじゃないとも言えますけどね。しかしコレクター気質のある人なら全部回ってみるとそれなりの充実感が得られるでしょう。いや5つあると知ったら全部回らずにはいられない人もきっと多いに違いない(笑)。


◎ジャングルカフェでお茶しよう

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宝塚大劇場は、今回は前を通過するだけ。手塚先生と宝塚歌劇との浅からぬ関係については、いずれまた「あの日あの時」で掘り下げてみたいと思います

 ここからは散歩も後半に向かいます。今日3度目の花のみちを通って再び手塚記念館方面へ。記念館の前を右に折れ、宝塚大橋を宝塚南口駅方面へと渡る。
 歩き疲れていたら、ひと駅だけ阪急宝塚駅から電車を利用してもOK。料金は150円だ。また、ここで記念館へ立ち寄って2階のジャングルカフェでお茶をしながら休憩するのもおすすめだ。記念館は受け付けでチケットの半券を見せれば当日限り何度でも再入館ができるからね。えっ、チケットを捨てちゃったって!? 早く拾って来たまえ!! 先に言わなくてスマン。


◎『スリル博士』にも登場した老舗(しにせ)ホテル

 そして到着した阪急宝塚南口駅前には1926年(大正15年)創業という歴史ある宝塚ホテルが建っている。ここが本日の虫さんぽ最後の手塚スポットだ。駅正面の建物は新館で、その向かって右隣に建つ建物が本館(旧館)である。この本館の建物が、1959年6月、当時『週刊少年サンデー』に連載していた『スリル博士』に登場する。
 ケン太を人質にして警察の包囲網を突破したスパイ団の首領が逃げ込んだのが、この宝塚ホテルだったのだ! この室内シーンにはワニのような顔をした怪人ゲラズリも登場するが、怪人ゲラズリは、浅草・蔵前(くらまえ)周辺を歩いた2009年6月公開の「虫さんぽ・特別編」でも蔵前国技館で暴れたシーンを紹介済みだ。脇役キャラで虫さんぽに2度登場したのはゲラズリが初めてだ(笑)。
 またこの宝塚ホテルは、この作品発表から4ヵ月後の10月4日、手塚先生の結婚式場となった場所でもある。恐らくこの時はすでに式場として決まっていて、そんな思い入れからこの場所を作品の舞台にしたのだろう。
『スリル博士』には、このほかにも宝塚周辺の実在する地名がいくつか出てくるが、それらはいずれまた、機会を改めて紹介したいと思います。

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宝塚ホテル本館。ここの1階には、昔懐かしい洋食メニューからコース料理までが楽しめるカフェレストラン「ソラレス」がある。ちょっとおめかしして出かけるのもいいかも

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手塚先生の奥様・悦子さんの著書『手塚治虫の知られざる天才人生』(1999年講談社刊)より、宝塚ホテルでの挙式後のスナップ写真

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『週刊少年サンデー』1959年5月28日号に掲載された『スリル博士』第13回「ケン太とダライラマ解決篇」。悪人たちが逃げ込んだのは宝塚ホテルだった!! 講談社版全集では第20巻『スリル博士』に収録

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続いて宝塚ホテル内でのシーン。ゲラズリが自分の胴体を開くと、その中にはダライラマが入っていた!! このシーン、講談社版全集ではカットされているので、紹介してみた


◎サファイア選考会へ潜入!!

 さて今回の虫さんぽでは、宝塚市と宝塚市国際観光協会が主催する、宝塚市観光大使 リボンの騎士「サファイア」最終選考会の模様も取材してきた。会場は手塚記念館からもほど近い宝塚文化創造館である。
 宝塚観光大使サファイアというのは、手塚先生の作品『リボンの騎士』の主人公・サファイアをイメージシンボルとして、サファイアの衣装を着て、宝塚市の観光大使として各種イベントで活躍するというものだ。
 2009年に行われた選考会で初代観光大使サファイアになったのは、定藤博子(さだとうひろこ)さんと十河亜裕子(そごうあゆこ)さんのおふたりだった。そして今回、この日の選考会で選ばれる2代目にそのバトンが渡される!!
 最終選考に勝ち残ったのは応募者34名のうち11名(うち1名棄権)。この中の誰がサファイアになるのかっ!?


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宝塚市観光大使サファイア選考会の様子。『リボンの騎士』の一場面を、サファイアになりきって演じるという審査の模様だ

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真剣な表情で審査に臨む選考委員たち


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2代目観光大使サファイアに選ばれた萩原由衣(はぎわらゆい)さん(左)と小田早祐莉(おださゆり)さん。おふたりの任期は2012年4月30日までの1年間。その間、宝塚市の観光イベントや手塚先生関連のイベントで活躍する予定だ。みんなで応援しよう!!



虫ん坊 2011年7月号 コラム:虫さんぽ 第17回:【夏休み関西さんぽ・後編】兵庫県宝塚市:手塚治虫記念館周辺を歩く虫ん坊 2011年7月号 コラム:虫さんぽ 第17回:【夏休み関西さんぽ・後編】兵庫県宝塚市:手塚治虫記念館周辺を歩く

手塚先生が宝塚歌劇の影響をモロに受けて描いた作品『リボンの騎士』。これは虫プロ製作のテレビアニメが放送中だった昭和42年に『別冊少女フレンド』増刊号として発行された総集編の前編(左)と後編。講談社版全集では第4〜6巻『リボンの騎士』全3巻に収録されている


◎2代目サファイアに直撃インタビュー!!

 ステージに立った10名は年齢が18歳から23歳の華麗なサファイアたち。うおおっ、どの子がいいか、早くも目移りしてしまうぜ〜っ! ってぼくが選ぶわけじゃないんですけどね(笑)。
 ちなみにサファイア観光大使の応募資格に性別は関係ないという。それは原作のサファイアが男であり女でもあるからだというが、残念ながら今回の最終選考には男性の姿はありませんでした。我こそはと思う男性の方、次回はチャレンジしてみたら!?  それはそれとして、今回の話題は、まず双子の姉妹で応募してふたりとも最終選考まで残ったという23歳の姉妹がいたこと。またパフォーマンスの審査では、お琴を演奏する人やアカペラで歌を歌う人がいて大いに盛り上がりました。
 そして結果発表。注目の二代目サファイアに選ばれたのは、お琴を演奏した19歳の学生・小田早祐莉さんと、地元ラジオでDJをやっている20歳の学生・萩原由衣さんのおふたりだった!!
 まだサファイアになりたてで緊張した表情のおふたりに、虫さんぽ読者の皆さんにオススメのスポットを紹介していただいた。まずは小田さんから! 「えーと、そうですね。花のみちを手塚記念館の方へ歩いてくると、途中にとてもきれいな花屋さんがあるんです。そこを歩くといつもすてきな花の匂いがするので、皆さんも散歩の途中に、ぜひ足を止めて癒されてみてください」
 続いて萩原さん、どうぞ!
「私は王道で、まず宝塚大劇場へ行ってシメは温泉でまったり、というのがいいと思います。それと大劇場へ行くときは、近くにある「ルマン」というサンドイッチ屋さんでサンドイッチを買って歌劇の幕間に食べるのがおすすめです!」  ということで、これらのスポットに行けば、もしかしたらおふたりに会えるかもっ!? それではおふたりそろって……!!
「ぜひ皆さんも宝塚へ遊びに来てくださ〜い!!」
 ではまた、次回の散歩でお会いいたしましょう。


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(今回の虫さんぽ、5時間17分、16568歩)



取材協力/宝塚市、宝塚市立手塚治虫記念館、宝塚市国際観光協会(順不同・敬称略)


黒沢哲哉
1957年東京生まれ。マンガ原作家、フリーライター。手塚マンガとの出会いは『鉄腕アトム』。以来40数年にわたり昭和のマンガと駄菓子屋おもちゃを収集。昭和レトロ関連の単行本や記事等を多数手がける。手塚治虫ファンクラブ(第1期)会員番号364番


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