今月のオススメデゴンスは、手塚治虫が描いた時代劇、「新選組」をご紹介します!
今年の手塚治虫文化賞は二作品の時代劇が受賞しましたが、手塚治虫にも時代劇作品がたくさんあります。「新選組」はそのなかのひとつで、オリジナルキャラクターの
本作品は架空の物語ですが、手塚治虫が描く歴史上の人物もこの作品の魅力のひとつで、近藤勇、沖田総司、坂本龍馬など、誰もが一度は耳にしたことのある人物が登場します。時代劇ファンならずとも楽しめる作品です。
解説:
(以下手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『新選組』あとがきより)
ぼくのかく時代ものは、だいたいに時代考証がメチャクチャで、こまかい部分を見れば見るほど、いいかげんな道具立てをしていることがバレてしまうのですが、この『新選組』も、ご多分にもれません。
『新選組』は、まだ新選組や沖田総司が、現在ほどブームになる以前、まだ
はじめの構想では、近藤勇の処刑から、
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父親を土佐の侍に斬り殺された少年深草丘十郎は、父の
現在では、新選組の物語といえば、近藤勇、土方歳三、沖田総司などのいわばトップ隊員を扱った作品が人気を呼んでいますが、こちらの手塚治虫版『新選組』は架空の一隊員を主人公に、フィクションをふんだんに盛り込んでいます。もっとも、上に挙げた新選組のヒーローたちも脇役として登場しますが、そもそも中盤の見せ場、芹沢鴨暗殺からして大きく設定が変わっていますので、その心づもりで…。
フィクションついでに、この漫画に登場する新選組の主力たちのイメージが、現代の私たちが持っているイメージと微妙に違っているところにも注目したいところ。沖田総司は神経質そうなぎょろ目の青年ですし、土方はサディスティックな性格の女顔で、一番かっこいいのが近藤勇というキャラクター設定。これはまた一味違って趣き深いです。
そしてあともうひとつ、さりげない読みどころは約4ページにわたり、町人や力士も巻き込んで『ウエスト・サイド物語』ばりに踊りまわる芹沢局長! こういったオペレッタ風な演出は手塚漫画にはしばしば登場しますが、これは結構派手な部類に入るかもしれません。シリアスで地味になりがちな幕末の空気を一時やわらげてくれる小粋な演出といえましょう。