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上村さんの自慢は、この酒まんじゅうは無添加でふくらし粉も使っていないこと。麹菌や酵母菌の力だけでふくらませているという皮は、しっとりもっちりとしていてクセになる食感だ。アンコも甘さ控え目で何個でもイケる感じである。
取材中も、お客さんがひっきりなしにやってきて、10個20個と買っていく。早いときは午前中で売り切れてしまうという。しかし完全手作りなので、これ以上増産するのは無理なのだとか。
「実は、今でも手一杯なので、取材はほとんどお断りしてきたんですよ」と言う上村さん。皆さん、荻窪へ行かれる際はこっそり静かに(そして午前中に)訪ねて見てください。
地図を見ると、北へ数分歩いたところによさげな公園があったので、そこでおまんじゅうを食べることにした。道の途中には80円ドリンクの自販機を発見。ラッキー!!
天沼弁天池公園は、住宅街の真ん中にあって、静かで落ち着いた公園だった。地面に積もったフカフカの落ち葉が足に心地いい。
人影もまばらな公園で、ひとりベンチに座っておまんじゅうを食べていると、まるで時間が止まってしまったかのように感じた。今から急いで画廊へ戻ったら、そこに手塚先生がいるんじゃないか、そんな錯覚も覚えた秋の昼下がりでした。
皆さんも荻窪へ行ったら、画廊跡と酒まんじゅうをチェキラッ!!
黒沢哲哉
1957年東京生まれ。マンガ原作家、フリーライター。手塚マンガとの出会いは『鉄腕アトム』。以来40数年にわたり昭和のマンガと駄菓子屋おもちゃを収集。昭和レトロ関連の単行本や記事等を多数手がける。手塚治虫ファンクラブ(第1期)会員番号364番