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「憧れの作家の幻の作品」というのは、いつの世もファンの心を躍らせるものです。
手塚治虫の場合、単行本化する際に必ずといってよいほど、原稿の編集が入る、というのは、ファンの間では有名。雑誌に連載されたそのままを今のファンが読むのは至難の業なんです。
全集で読める作品でも、オリジナル版を読んでみると、ぜんぜん読んだこともないエピソードがのっていた、という発見があるらしい。そんなオリジナル版を雑誌掲載時そのままに復刻しちゃおう! というファンにはうれしい挑戦が、最近続々と具体化されています。
そんないろいろな企画の中から、今回は国書刊行会から出る「手塚治虫オリジナル版復刻シリーズ 全3巻」にスポットを当て、企画者の濱田高志さん、編集者の樽本周馬さんにお話をききました。
濱田さん:彼(樽本さん)も僕も同じ関西出身で、共通の友人から彼のことは聞いていました。それで2003年ぐらいにたまたま連絡を取るようになって、「なんか一緒に仕事できるといいね」というような話をしていました。
もともと僕は手塚ファンなので、今のファンクラブも会誌0号のころからの会員なんです。手塚プロとはファンマガで連載させてもらったり、ソニーでアトムのトリビュートアルバムを作ったり、一時は、るみ子さんと一緒にラジオ番組をやらせていただいたりとつながりがあったので、彼とも手塚作品で何かできるといいね、という話をしていたら、友人でもあるジェネオンの森さんが、「リボンの騎士」や「ぼくのそんごくう」を復刻していて。そのうち自然とああした形で連載当時の状態のものを何か復刻できないだろうか、という企画が持ち上がってきました。
濱田さん:一番最初に案が出たのは全集版に改変がたくさんある「サボテン君」でした。他にも同じように改変が多くて、まだ復刻していない作品をピックアップしましょう、というので、いったん資料室の森さんに企画を預けました。
資料室の森さんと言えば僕らファンクラブの会員からすれば、もう手塚博士なわけですから、森さんの言うことであれば間違いないだろう、と。
森さんのほうからあがってきたのは「サボテン君」「冒険狂時代」「ピピちゃん」「ケン1探偵長」でした。
樽本さん:最初にリストみたいなものをいただいて、できれば全5冊ぐらいで出したいな、と思ってましたが、まずは3冊で始めましょうということになりました。出す順番はリストが年代順になっているので、前から時系列に並べました。
樽本さん:ええ。
樽本さん:手塚プロの森さんにチェックを入れてもらって、明日ぐらいにゲラの再校が上がってきます。「サボテン銃を取れ!」を別冊でこういう形でつけます。「サボテン君」連載分と「快傑シラノ」を合わせると280ページぐらいありますね。
「快傑シラノ」が前編完、で終わって、ふたたび「サボテン君」が開始するときの、サブキャラクター(クリスチャン)で出演していたサボテン君が再登場の仕方があざやかな楽屋オチで……(笑)ほんとに楽しい。
濱田さん:今だったらありえないですよね。実に大らかです。