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特集2:国書刊行会 復刻版シリーズ舞台裏 「手塚治虫オリジナル版復刻シリーズ 全3巻」企画・編集者インタビュー
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——中の表紙には題字が並べてコラージュされているようなイメージなっていますが、これはどのようなコンセプトなんでしょうか。

樽本さん:これはデザイナーのアイデアなんですけれども、雑誌掲載版を集めた、ということでスクラップブック的なイメージです。こういう箱に入っているので、クロス装で箔押しで、という方法もあるでしょうけれど、それだと本当に固い本になっちゃうので。デザイナーは女性なんですが、かわいらしかったり、わくわくしたりする感じを出したい、ということで。子供が切り抜いて貼ったようなイメージですね……わざわざ修正前のページを粗い紙に一度印刷して、実際に切り抜いて、本物の板に貼って作っています。



——オリジナル版の原本はどのような原稿を使われたのでしょうか。

濱田さん:原本に関しては、資料室の森さんを通じて本書でも解説を書かれている五十嵐(正克)さんに提供していただきました。その昔、五十嵐さんは手塚治虫ファンクラブ京都の会報誌「ヒョウタンツギタイムス」にイラストを描かれていて、僕もファンクラブ京都の会員でもあったので、お名前は存じていました。そんなわけで、間接的とはいえ、今回ご一緒できて嬉しかったですね。
樽本さん:五十嵐さんが雑誌を全部切り抜いたものを自分で製本して表紙をつけていたのをまたばらしてもらったものを原本として使わせていただきました。本当に感謝しています。
  あと、今の復刻技術はとても優れていまして……小学館クリエイティブの優れたまんが復刻本のほとんどを手がけているオフィスアスクという会社にレタッチをお願いしているのですが、もとの原本は当然シミもあって紙もザラ紙で印刷状態も非常に悪いものが、すべてピカピカの仕上がりになって感動しました。特にカラーの部分は元の原稿より綺麗なんじゃないか(笑)と思うぐらいで。クオリティの高さは日本一ではないかと思います。
  こういう古いまんが雑誌は国会図書館にも完全には所蔵されていなくて簡単には読めないものですので、こうやってまとめる意義はあるのではと感じます。あと『冒険狂時代・ピピちゃん』はオールカラー印刷で、かなり製作費がかかっておりまして、こういう値段になってしまいましたがその価値は十分あると思います。初版は少部数ですので切れると再版するのはちょっと先になりますので早めのご購入をお願いします(笑)。



レタッチ後の原稿のゲラ。
カラーのにぎやかな感じがよくわかります


——ちなみに、手塚の作品をまたやりたい、というご予定はあるのでしょうか?

樽本さん:第2シリーズをやりたいですね!
濱田さん:そうですね。是非とも。
樽本さん:手塚治虫作品というのは売れる・売れないは関係なく、常に読める状態にあるべき・世の中に存在すべき作品だと考えています。僕個人の考えとしては、公開版(雑誌版)もディレクターズカット(単行本版)もすべて読めるような状態が当然なのではないかと。理想的な形で出版できるのであればどこの版元から出ても構わないと思うんです。
濱田さん:この間、ベルギーに行った際に、エルジェのタンタン美術館に行ったのですが、すごく立派で。海外でのまんがの評価というか、アートとして大切にされているところは、日本でも参考にしてほしいな、と思います。

——最後に、虫ん坊読者に向けて、何か一言ありましたら。

樽本さん:当時の雑誌のB5判カラーのページを見ていると、こんなに素晴らしいものが50年代に読めたんだなあと正直驚きます。今でもこんなきらびやかなページって言うのはないだろうと。それが更に、手塚治虫のまんがである、という、二重の面での感動や喜びがあるので、ぜひそれを味わっていただきたいなと思います。
濱田さん:まだまだこういう形で読みたい作品はあるはずなんですよね。手塚先生が亡くなった時点で新作が読めなくなったわけですが、まだまだ未発掘のオリジナル版っていうのは、たくさんありますから。あと、できればやっぱり何か反応がほしいですね。賛否両論、いずれも。作っても意外と反応ってなかったりするんですよ。
樽本さん:本に特典応募ハガキが入っていまして、そこにアンケートがついていますので、そこから意見を送ってください。
濱田さん:続刊のリクエストでもいいですし。なにかしら気づいたことがあれば、送ってもらえば改良できるかもしれないし、なにか新たな企画を立てられるかもしれないし。

——TezukaOsamu.netのコメント欄や、虫ん坊投稿などでも、歓迎します。

濱田さん:あとこのシリーズの第三弾で「ケン1探偵長」が出ますが、実はさんわ子供新聞版については、資料室でも連載状況を把握できてなくて。そもそも現物がないそうなんですよ。ちょっと特殊な新聞なので。
  発行元の三和銀行のほうでも保存されていませんし、原稿もないそうなんです。ですから、さんわ子供新聞に関する情報が何かあれば是非ほしいですね。本当はこんなところで言うことじゃないのかも知れませんけど。ファンの方々からの貴重な情報をいただきたいです。


  手塚作品や本についての愛にあふれるお話、また、埋もれた原稿へのあくなき探究心を、お話のなかからひしひしと感じました。
  本当はもっとたくさん、あるのですが、紙面の都合上ごく一部をまとめてお送りします!泣く泣く原稿をカットした手塚先生の気持ちって、こんな感じだったのかしら…?
  「サボテン君」や「ケン1探偵長」の「ヒミツの本当の姿」が知りたい人、ぜひこの本を買って、読んでみてくださいね!



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