コラム「手塚を知りたい放送作家」第52話：怒りのボンバ！
2023/10/02
第５２話：怒りのボンバ！
みなさんは誰かを恨んだことはありますか？
恨むまではいかないまでも、他人に対して負の感情を持ったことは少なからずはあるはず。今回ご紹介する作品「ボンバ！」はそんな呪いの力を手に入れてしまった男の話です。
早速ですが本作の主人公、男谷哲がこちら。
見た目からして大人しそうな少年ですが、最大の特徴がその目です。
「目は口ほどにものを言う」なんて言葉がありますが、目は顔の印象を大きく左右します。漫画となれば尚更。
例えば、いつも明るく元気な僕も目を変えるだけでこんなにダークな雰囲気になるんです！
男谷くんの虚ろな目からは内に秘める心の闇が見て取れますね。そんな男谷くんは作品冒頭で、ある怪奇現象に悩まされます。それは夜な夜な聞こえてくる荒々しい音。
さてここでクイズです！男谷くんに迫ってくる「ドカッ！ドカッ！」という音は一体なんの音でしょう？
正解は...
馬でした！
通常であれば「パカラッパカラッ」という音が馬の足音としてよく表現されますが、この「ドカドカ」という荒々しい音は作品における馬の危険性をよく表しています。
実は僕がこの「ボンバ！」を読もうと思ったきっかけが馬の存在が際立っているマンガの表紙。
手塚先生のマンガの表紙には作中のキャラクターが描かれていることが多いのですが、この「ボンバ！」はリアルな馬が描かれています。一体どんなマンガなんだろう？と、気になってしまいました。
いざ読んでみると、結構ダークな展開...！
突如自分の前に現れた馬のボンバに対し、男谷くんはあろうことか殺人を依頼するんです。こうして馬を使った呪いの能力を手に入れた男谷くんは、通っている学校の教師に始まり...
バスに乗っていた自分の両親...
果ては電車の乗客４５人を馬の力を使って殺してしまいます。
恐るべし男谷くん...。そして、ボンバの力に溺れた男谷くんは青年へと成長し、こんな感じになってしまいます。
ウヒャアハーハハという言葉が出ているということは、これはもう頭がボンバしていると言っても過言ではありません。女性もドン引きしていますね。
男谷くんはなぜこんなふうになってしまったのでしょうか？彼は最初からこんな状態だった訳ではありません。彼を変えてしまった背景にはある人物の存在が関係しているんです。それがかつての男谷くんの学生時代の教師、水島礼子先生。
美しく聡明な水島先生にゾッコンラブの男谷くん。中学生の頃からず〜っと水島先生を一途に想い続けています。
大人しかった男谷くんは、一体なぜ殺人鬼になってしまったのか...。それでは彼のなにかを変えてしまった決定的瞬間の描写をここでご紹介。
水島先生は彼にどんな影響を与えたのか...。是非本編を見てお楽しみ下さい！
男谷という名字の割に、水島先生との距離感だったり、遠方から人を殺める性格だったりと、男っぽさとは真逆の印象を持つ男谷くん。この名前とのギャップにも手塚先生の考えが込められていそうな気がします。
人を呪わば穴二つ...。男谷くんがどんな最後を迎えるのかも是非見届けてあげて下さい。
誰かを恨んだり、呪ったりしてる方はご注意を。もしかしたらあなたの所にもボンバが現れるかもしれませんよ...。
ウヒャアハーハハ！！
藤原ちぼり
1979年生まれ、岡山県出身。放送作家。
『サラリーマンNEO』、『となりのシムラ』、『落語 THE MOVIE』などの人気番組の他、テレビアニメ『貝社員』の脚本も担当。『特捜警察ジャンポリス』、『サンドウィッチマンの週刊ラジオジャンプ』など、漫画を題材にした番組にも携わっている。
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