虫ん坊

コラム「手塚を知りたい放送作家」第30話:続・マグマ大使!ミニチュアの世界で出会った最小の男

2021/06/23

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第30話:続・マグマ大使!ミニチュアの世界で出会った最小の男



前回『マグマ大使』の特撮を見て、ミニチュアの素晴らしさに大感動。

そこでミニチュアについて色々調べていると、有明にミニチュア施設を発見しました!

前回記事:「特撮革命! マグマ大使」


その名も『スモールワールズTOKYO』。なんと世界最大の屋内型ミニチュア・テーマパークで1⁄80スケールのミニチュアが展示されているそう。


しかもここ、何がすごいって「住民権プログラム」というサービスが存在し、それを購入すると自分のフィギュアをミニチュアの世界の住人として、1年間施設内に展示してもらうことが出来るんです!ミニチュアの世界に住むってなんか夢がありますね!


360度カメラで自分を撮影し、それがフィギュアになるんだとか。いや〜、すごい時代になりましたね。撮ったものがそのままフィギュアになるなんて。


...ん? 撮ったものがそのまま...?


ここで僕はある考えに至ります。

もしも...、僕がマグマ大使の格好をして撮影を行った場合、出来上がるフィギュアもマグマ大使になるのではないのかと...。


マグマ大使がミニチュアの展示の中に紛れている...。これは中々面白い!

こうして僕はマグマ大使になることを決意。早速その準備に取りかかります。


まずは特撮のマグマ大使を見て、じっくり再確認します。



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キンキラキンだ。

すんごいキンキラキン。

ボディも硬そうだし、アンテナのような角もとっても長い。

おいそれとコスプレ出来るようなものではないことは一目瞭然です。

そもそもこんな格好をした奴が急に現れたら通報されてしまうのではなかろうか...。


他に方法はないものか。ふとメルカリでマグマ大使を検索してみると...

なんとマグマ大使のお面を発見!お面を一時的に被るだけなら簡単だし、通報されることもない!


これだ!早速ポチっと購入。

数日後...、届きました。


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はい、子どもサイズー。

うっかりでした。マグマ大使を見つけたことの喜びで、サイズ感なんて全然意識してませんでした。

しかもこのお面、マグマ大使っぽいけどなにかが違う...。

そういえば子どもの頃、こんなお面が縁日でズラリと並んでいるのを思い出しました。きっとキャラクター使用の許可はとってないが故の"なんか違う感"なのでしょう。これは買ってしまう子いるだろうな...。って、僕もまんまと買ってしまっている訳なんですけどね!


ちきしょう!!!


...ん? キャラクター使用の許可...?

あれ?そういえばよくよく考えると、僕がマグマ大使の格好をして、それをフィギュアにして、テーマパークの一角に置くって...。こんなの勝手にやったらヤバいんじゃないか...?


...うん、間違いない。これ絶対怒られるやつだ。

かといって手塚プロに連絡して...


ちぼり「僕がですね!マグマ大使の格好をしてですね!それをですね!

フィギュアにしまして、ミニチュアの住民になろうと思うんです!」


なんて支離滅裂な説明をする勇気もありません。


なんだ、企画倒れかー。いや!諦めるのはまだ早い!ギブアップはダメだ!

考えろ...なにか抜け道を...。


こうして僕はある一つの仮説に辿りつきました。

マグマ大使ではダメでも、ゴアならいけるんじゃないかと...。


ゴアというのは「マグマ大使」に登場する敵キャラ。

こんな見た目をしています。


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どうですか? 先ほどのマグマ大使と比べると、まだこっちの方が人間っぽい感じがしないですか?髪の毛や体格、顔...、これが"おじさん"って言われてもギリギリ納得できそうな風貌じゃないですか?

そう。ゴアなら最悪、誰かに何かを言われても...


ちぼり「え? ゴア? アハハ、違いますよ!これはおじさんの変装です!」


なんて言い訳も出来るはず...。よし!これでいってみよう!早速ゴアを分析。僕がゴアに近づくには何が必要かを考えます。そこから導き出された要素は以下の3つ。


①、髪の毛

②、牙

③、気合


まずは特徴的な髪の毛から。髪の毛は人の印象を大きく左右するものなのでここが決まればグッとゴアに近づくはずです。


ネットで出来るだけゴアに近いウィッグを購入。

装着してみます。



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昔の鶴瓶師匠みたいになりました。

全然ゴア感はありません。続いては牙です。人に恐怖を与える突き出した二本の牙。これさえあればかなり悪の存在感が増すことでしょう。

ウィッグを買ったのと同時にパーティー用の変装グッズ(牙)を購入していました。それでは装着。



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あんまり変化がありません。八重歯の大きい人みたいです。

この時点でのゴア感はほぼゼロ。マグマ大使をリアルタイムで見ていた人たちに聞いても、この風貌からゴアと答える人はそういないでしょう。

僕が考えたゴアになるための最後の要素、それは気合い。似せようという気持ちがクオリティを左右するのだと思います。古いタイプの人間なのでやはり最後は精神論です。


しかし、ただ漫然と気合いを入れるのではありません。僕はその気合を全て顔に集中させようと思います。ゴアを見て思ったのはやはりその表情。黙っていても、とてつもない威圧感があります。そうなんです。大事なことは顔で語ればいいんです。


鏡に向かって何度も表情を変え、僕の中に眠るゴアを呼び覚まします。

あぁ...、感じる。僕の中のゴアを。キタキタ...、ゴアが、ゴアが来る!



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これがみなさんの目にゴアとして映るかどうかは分かりません。

でも僕にとってはこれが正真正銘、100%のゴアです。

これを見て、誰かが「勝手にゴア使わないで下さい!」って言うでしょうか? 僕はその心配はないと思います。さぁ準備は整いました。


いざ!ミニチュアの世界へ!!!



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はい!やってきました〜。有明の『スモールワールズTOKYO』。

ゴアグッズを鞄の中に潜ませ、館内へ入ります。

3階が展示場。エレベーターを開けるとそこに広がったのはとてつもなく広大なミニチュアの世界。


世界観の違うゾーンが複数展示されています。



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山や崖といった壮大な場所や...、


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都会の街並み、


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夜の海外の街なんかも。

ちぼり「おぉぉぉぉ!!!」


これはテンションが上がります。フィギュア化のことばかりに捉われてしまっていましたが、そもそもはミニチュアの世界を楽しみに来たんでした。


とにかく細部まで精巧に作られています。



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街の一角の路地裏もこの通り。


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ビルを覗けば中には人の姿も。


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建物だけではなく乗り物もたくさん。

まさに圧巻です。

しかも様々な所にボタンがあり、それを押すと蒸気機関車やメリーゴーランドなど、ミニチュアの一部が動き出すという仕掛けも。


中には敷地の面積が大きすぎて、どのミニチュアが動いているのかが分からないものもありました笑。


ミニチュアなのにとにかくでかい!僕の写真で全容を伝え切れないのが残念でなりません。興味がある方は是非一度行ってみて下さい。


ひとしきりミニチュアを堪能し、さぁここからが本番です。

住民権を購入し、フィギュア作りのための撮影に入ります。


スタッフさん「それじゃあ撮影始めるんでこちらにお入り下さい」


通されたのは360度カメラの中。90台というカメラが僕の周りを取り囲んでいます。


それまでとは違う雰囲気や熱心に説明をしてくれるスタッフさんを目の当たりにして、急に「アフロと牙つけるとか、そんなことして大丈夫かなぁ...」と、ここまで来て、なんと僕は怖気づいてしまったのです。


やるしかないのに...。そのためにここに来たのに...。

考えれば考えるほど緊張して、どうしても置いた鞄を取りに行くことが出来ません。


髪と牙はダメでも、せめて...、せめて顔だけは...!

ここすらも諦めてしまうと、もうコラムを書く資格がない気がしました。僕の尊厳を守るためにもここだけはなんとか死守しないと!やはり最後は気合です!


スタッフさん「はーい、それじゃあ撮りますねー」


精一杯の勇気を振り絞り、渾身のゴア化!



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ゴアのやっていたポーズも咄嗟に真似しました。

スタッフさん「はーい、終了です。ありがとうございましたー」


ちぼり「ありがとうございました」


スタッフさん「1⁄80のフィギュアなんで、表情はそこまでリアルに表現できな

いかもしれません」


ちぼり「......」


そうですか。でもね...。

この表情がフィギュアになるとか、ならないとか、もはやそんなことはどうでもいいんです。僕がこの場でゴアの表情を出来たこと。それで僕はもう満足なのです。


ミニチュアの世界で小さな自分と遭遇し、さらなる成長の必要性を感じた1日でした。


そんな僕のフィギュアはこれから1年間、ミニチュアの中に紛れているはずなので、もしよかったら探してみて下さい!


表情に注目ですよ!






藤原ちぼりchibori10_twicon.gif

1979年生まれ、岡山県出身。放送作家。

『サラリーマンNEO』、『となりのシムラ』、『落語 THE MOVIE』などの人気番組の他、テレビアニメ『貝社員』の脚本も担当。『特捜警察ジャンポリス』、『サンドウィッチマンの週刊ラジオジャンプ』など、漫画を題材にした番組にも携わっている。

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