虫ん坊

コラム「手塚を知りたい放送作家」第26話:手塚治虫の感染症マンガ特集

2021/02/26

chibori26_title.jpg第26話:手塚治虫の感染症マンガ特集

ようやくワクチンも届き始めたけどコロナ収束にはまだ時間がかかりそう...。

僕は番組ごとに様々なチームでお仕事をさせてもらっているんですが、チームによってその危機感や対応も様々。テレワーク会議が主になった番組もあれば、対面会議を続けている番組もあります。


仕事一つとってもこれだけバラバラの考え方を、私生活も合わせてみんなが一つの意識に統一するのはまず無理だろうなぁ...、と感じている今日この頃です。


そんなwith コロナ 時代真っ只中ですが、手塚作品にもコロナ同様のパンデミックや感染症を題材にしたものがいくつか存在します。


以前『陽だまりの樹』のコレラの回を取り上げましたが、

今回は!現実の世界にはない、手塚作品に登場する摩訶不思議な感染症の数々をご紹介したいと思います!


まず最初は『ブラック・ジャック』に掲載されている感染症から。

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この感染症の症状は...ちぢむ!!!



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ブラック・ジャックが遭遇したのはアフリカの奥地で流行していた"身体が縮んでしまう"恐ろしい病気。最終的にはなんと30センチほどの大きさになった後、死に至るというものでした。


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最初は獣の間だけに広まっていたこの病気。しかし、やがて人間にも感染。

そして瞬く間に一つの村を全滅させてしまいました。


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見たことも聞いたこともない奇病にブラック・ジャックもお手上げ...。あのお金にうるさいブラック・ジャックが遂にはこんなことまで口にしてしまいます!


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最終的に病死した遺体の組織から免疫血清を作ることに成功しましたが、患者の治療には残念ながら間に合いませんでした。未知の感染症に挑む難しさがありありと伝わってくるお話です。

この病気は最後に死ぬということを除けば、縮むこと以外特に症状はありません。血清が使われるところまでは本編で描かれていませんでしたが、もし30センチに縮んでしまった人に血清を使っていたらどうなっていたんでしょう。


身体は徐々に元の大きさに戻っていく? 

それとも病気の進行が止まってそのまま30センチの大きさで暮らしていく?


もし、そのままの大きさなら色んなものをお腹一杯食べられそうですね!



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さぁ、続いて取り上げるのは『きりひと讃歌』に出てくる奇病です。


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こちらの症状はケモノ化!!!

発症すると徐々にイヌやタヌキのような見た目へと変貌し、呼吸困難の後に

死に至る奇病です。



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医師である桐人は一部地域で流行するモンモウ病を調べる為、現地の村へと調査に向かいます。しかし、その村で桐人自身もモンモウ病を発症...。生肉が食べたくなるという特有の症状が出始めます。


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この病気は感染症が疑われていましたが、実はその土地特有の風土病。

人から人へ移るのではなく、古い地層が混じった水を飲むことで発症します。

正式にはこの病気は感染症ではないのですが、作中で「感染症か風土病か」という論争も大きなテーマになっているので紹介させてもらいました。


モンモウ病気は土地の水を飲むのをやめれば病気の進行を止めることが可能。死ぬことはありません。しかし、その事実に気付いた頃には...



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桐人の姿はケモノの様に変わり果てていました。

死ぬことはなくなった一方でケモノの姿のまま生きていくことになったんです。


そこからは試練の連続...。化け物扱いされるし、見世物にされるし、

愛した女性は死んでいくしで、もう桐人が不憫でなりません。


しかし、最終的には自身の見た目に関する苦悩を克服。



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医師として海外で困った人を助けながら暮らしていくことに。

さらにラストでは同じくモンモウ病患者だった女性が出産に成功。



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葛藤しながらも病気を受け入れ、生きていく人々の姿は勇気を与えてくれます。もしも自分だったらこんなに強く生きられるのだろうか...。急にケモノになったら家族は受け入れてくれるかな...。まぁ、普段から妻には躾をされている身なのでさして変わりはないのかも。

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最後は『時計仕掛けのりんご』に掲載。『帰還者』という物語に登場する感染症です。

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この病気の症状は...干からびる!!!

感染すると同時に瞬時に干からびてしまうというとても恐ろしい病気です。


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なんとこの病気は宇宙の性感染症。地球人クルーの一同が宇宙船で宇宙人と接触した際、一人の女性が感染してしまいます。さらにこの時、女性は赤ん坊を身篭っていました。


その後、出産した娘にも感染。そして絶世の美女へと育った娘はこの恐ろしい感染症を使い、父を殺した男たちに復讐をしていくという物語です。


この病気の何が恐ろしいのかというと、感染から死に至るまでの速度。これまでに出てきた病気は発症してから死ぬまでにある程度の時間が残されていました。だから治療の可能性だってある。


しかし、この感染症ときたら...行為の最中に感染するや否や、すぐに死んでしまうんです。恐ろしい速さで迫り来る死の恐怖。どれほどの恐怖かは以下の男の叫びを見れば分かると思います。



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そしてみるみると身体の水分が奪われていき...


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最終的にはまるでミイラのようにカラカラに。行為前のウキウキした男の心情を考えると多少気の毒になってしまいます。まぁ極悪非道に父親を殺害しているので自業自得なのですが...。


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ちなみにこの病気は女性に感染しても媒体となるだけで、死ぬことはないんだそう。地球上の男を死滅させかねないなんとも恐ろしい病気です。その症状もさることながら、個人的には宇宙の性病という斬新な発想に脱帽しました。そして物語は驚きのエンディングへと向かって行く訳ですが、それは作品を見てのお楽しみということで。


さぁ、様々な感染症をご紹介しましたが、如何だったでしょうか?

手塚作品に登場する感染症。病気に翻弄されながらも生と向き合い、立ち向かって行く人々のドラマには考えさせられることがたくさんありました。


コロナも未だに謎の多い未知の感染症。今まで通りの生活に戻るにはもうしばらく時間がかかるかもしれません。出来る限りの対策をして、これ以上感染を広げないように気をつけましょう!


今回ご紹介したのは全て手塚先生創作の感染症でしたが、いつ何が起こるか分からない時代、ひょっとしたら近い将来、こんな恐ろしいウイルスや聞いたことのない症状の感染症が登場することだってあるかもしれません。


そういえば最近僕が目にした恐ろしい感染症といえば...、音声SNSの『Clubhouse』(クラブハウス)。恐るべきスピードで人々が利用を始め、昨日までクラブハウスを知らなかった人が、翌日には他の人にクラブハウスを自慢げに語る、という恐るべき光景が広がっていました。これはもはや感染と言っても過言ではないでしょう。


ちょっとでも乗り遅れようものなら「え? クラブハウス知らないの?」と、マウントを取られる始末。

ちなみに僕は感染していません。なぜならこのアプリは紹介制。


そう!感染したくても僕には友達がいないから〜!






藤原ちぼりchibori10_twicon.gif

1979年生まれ、岡山県出身。放送作家。

『サラリーマンNEO』、『となりのシムラ』、『落語 THE MOVIE』などの人気番組の他、テレビアニメ『貝社員』の脚本も担当。『特捜警察ジャンポリス』、『サンドウィッチマンの週刊ラジオジャンプ』など、漫画を題材にした番組にも携わっている。

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