虫ん坊

コラム「手塚を知りたい放送作家」第22話:歴史マニアに聞いた手塚光盛

2020/09/30

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第22話:歴史マニアに聞いた手塚光盛


久々に再会した仕事仲間と飲むことになりました。




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こちらの兜を被っている人物の名は長谷川ヨシテル。通称れきしクン。

文字どおり歴史に詳しいタレントさんで、色んな歴史番組に出演したり、時には裏方として時代考証なんかも行う歴史のプロフェッショナルです。

歴史に関する本も何冊も出版していて、面白い目線から歴史を紐解いてくれているので、歴史初心者にもオススメ!




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そんなれきしクンとの出会いは今から6〜7年前。歴史のコント舞台で一緒になったのがきっかけで、それからなんだかんだほぼ毎年仕事をさせてもらっています。




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出会った頃は自作の歴史小説を片手に夢を語っていたのに、たった数年で本当に叶えてしまいました。有言実行、素晴らしい!

そんなれきしクンですが、このコラムも何度か読んでくれたことがあるそうで、飲んでいる時に手塚にまつわる歴史の話を教えてくれました。




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以前、幕末の医師である手塚治虫先生のご先祖について、コラムで触れたことはありましたが...、まさか平安時代にまで遡るとは...。

手塚スイッチをオンにし、飲み会そっちのけで話を掘り下げます。

れきし「僕の出身地の埼玉県熊谷の偉人、斎藤実盛を討ち取ったとされるのが『手塚光盛』なんです」

なんだその面白そうな予感しかしない入り口は...!

この時点で飲み会は"手塚光盛の話を聞く会"へと変わりました。

せっかくなのでれきしクンの教えてくれた手塚光盛の物語をイラストと共にご紹介したいと思います。



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時は平安時代末期。木曾 義仲(きそ よしなか)の名で知られる源 義仲の配下として仕えていた手塚光盛。

そして寿永2年(1183年)、篠原の戦いに参加。

平家の有力武将には斎藤実盛。70を超える老将である実盛は「ナメられちゃいかん!」と白髪を黒く染め上げ、若々しい出で立ちで戦に出陣していました。



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手塚光盛はそんな斎藤実盛を一騎打ちで撃破。

この時の戦いは後世で"一騎打ちの鑑"と称されるほど素晴らしいものだったそうです。ただ...、一つだけ不思議なことがありました。正々堂々、自らの名を叫んだ手塚光盛に対し、斎藤実盛は己の名を語ることは無かったそうです。



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手塚光盛が首を持ち帰るも、名前を名乗らなかったこと、そして染めた黒髪のせいで一同誰の首だかピンときませんでした。源 義仲が川で首を洗うよう命じてみると、染めていた黒髪が白髪に変わり、斎藤実盛の首であったことが判明。



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斎藤実盛の首だと分かった源 義仲は人目もはばからず泣き叫びました。

実は実盛は幼少の頃に命を狙われていた源 義仲を屋敷から逃がした命の恩人だったのです。斎藤実盛が一騎打ちの時に名を名乗らなかったのも、そんな義仲のことを思ってのことだったとか...。知らなかったとはいえ、主君の恩人を討ってしまったことに手塚光盛も涙したそうです。


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その後、後白河法皇と対立し、源義経と源範頼に追討される義仲。

味方がどんどんと討たれていく中、残ったのは義仲を除いてたったの4騎。

その中には手塚光盛の姿もあったそうです。そして最後の最後まで主君の義仲を守って光盛はその命を落としたのでした。

話を聞くと手塚光盛って、真っ直ぐな人だったんだろうなぁという気がしました。まさか軽い気持ちで飲みに行っただけなのにこんないい話が聞けるとは...。

流石、れきしクンを名乗るだけあります。ありがとう。また飲みましょう!

家に帰って手塚光盛について調べてみると、手塚先生の描いている作品にも何度か光盛が登場していることが分かりました。

その中の一つが『火の鳥 -乱世編-



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平安末期の源平の戦いをテーマに描かれた作品で、平清盛、源義経、そして源義仲など、まさにれきしクンから聞いた平安の武将たちが続々登場していました。火の鳥の伝説に翻弄される歴史の偉人たちの物語は奥が深く...、特に手塚先生が描き直したとされるラストシーンは圧巻...!

そんな『火の鳥 -乱世編-』で手塚光盛が登場するシーンがこちらです。



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敗走中の義仲。史実に置き換えると、先ほど説明した味方が4騎になってしまうところ辺りでしょうか。そこへ火の鳥の情報を持って手塚光盛が登場します。

なんとその姿は手塚先生でした(笑)。

しかし、『火の鳥 -乱世編-』で光盛が登場するのはこの2コマだけ。

手塚先生は一体どんな思いで、このコマを描いたのでしょうか。

その胸中は定かではありませんが、一つだけ言えるのは実際の史実に自分の先祖がいたとしたら、そりゃあ創作意欲も湧くだろうなと。

それにしても、まさか手塚コラムを書いていて源平合戦を学ぶことになろうとは...。

数多の物語を生み出してきた手塚先生。

その制作の裏には作品の数以上のドラマがある気がしてなりません。

次はどんな作品と出会えるのか、楽しみです!





藤原ちぼりchibori10_twicon.gif

1979年生まれ、岡山県出身。放送作家。

『サラリーマンNEO』、『となりのシムラ』、『落語 THE MOVIE』などの人気番組の他、テレビアニメ『貝社員』の脚本も担当。『特捜警察ジャンポリス』、『サンドウィッチマンの週刊ラジオジャンプ』など、漫画を題材にした番組にも携わっている。

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