虫ん坊

コラム「手塚を知りたい放送作家」第27話:「ガラスの城の記録」を自分なりに完結させてみた

2021/03/25

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第27話:「ガラスの城の記録」を自分なりに完結させてみた



ミカンは冬が旬ですが、温室栽培したミカンは春〜夏が旬だそうです。



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どうも!藤原 ちぼりです。

そんなわけで今回のテーマは「未完」です!

数多い手塚作品の中には様々な理由で完結には至っていない未完の作品も存在します。例えば手塚先生が晩年に連載していた3つの作品。



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手塚先生がお亡くなりになって絶筆という形で未完になったものですが、実は『ルードウィヒ・B』は2014年に里見浩太郎さんや浅野温子さんの出演で舞台化され、未完だった物語が完結まで描かれています。

そして『グリンゴ』は2002年に漫画家の田中圭一さんによって後日談となる『グリンゴ2002』が執筆されました。

以前、ちばあきお先生の未完の野球漫画『プレイボール』の続編をコージィ城倉先生が描くというニュースが話題となりましたが、やはりファンとしては作品の続きって気になるところですよね。

未完で終わってしまったのはとても残念なことですが、続きを考察して楽しめるのも未完の作品ならでは、なのかなと。

そんな訳で今回は手塚先生の未完の作品を取り上げ、自分なりにその続きを考察してみようと思います。

「なんでお前が!」と思う方もいると思いますが、(僕もそう思います笑)未完の作品の楽しみ方の一つ、という軽い感じで見て頂ければ幸いです。


今回題材にする未完の作品は...『ガラスの城の記録』

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すぐに読みたい方はコチラ


双葉社の『現代コミック』にて連載されていた作品で、雑誌の休刊に伴い、未完となった作品です。

<あらすじ>

兵庫県の小高い丘の上にある通称『ガラス屋敷』。


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ここは資産家、札貫礼蔵の邸宅。

しかし、礼蔵がその姿を見せるのは年に1回程度。

それもそのはず...

chibori27_03.jpg礼蔵は冷凍睡眠を行っていて、起きるのは年に一度。

自分の資産を利息で増やすため、冷凍睡眠で寿命を伸ばしていたのでした。

そして礼蔵は自分だけではなく、家族も半ば無理やり冷凍睡眠につかせていたのです。

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冷凍睡眠を管理していたのは礼蔵の息子である四郎。

20年間ずっと家族を見守り続けていた為、42歳になり、娘も誕生しています。そんな中、限界が来た四郎は兄である一郎を起こすことに。

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一郎の年齢は眠らされていた当時のままの24歳。

そして一郎に管理を任して眠りについた四郎だったが、肝心の一郎ときたら...

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四郎の娘には手を出すし...

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父は殺してしまうしで、好き放題の大暴れ。

実は冷凍睡眠は長年眠ることで脳に支障を与え、倫理感が無くなってしまうという大きな欠陥があったのでした。


そして一郎は、後に目覚めた弟の四郎をも殺してしまいます...

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一度は警察に捕まり、死刑を宣告された一郎でしたが国務大臣に取引を持ちかけられます。それは「20年前に冷凍睡眠についた官僚や財界人、100人を始末したら無罪にしてやる」というものでした。

そして官僚たちの眠る『ガラスの城』に潜入するところで物語は終了します。


一郎は一体どうなってしまうのか!? 

官僚たちを始末し、晴れて無罪となるのか!? 気になるところです。


ではここで考察を行うにあたり、

登場人物を簡単な相関図にまとめてみました。

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一郎の周りにいる人物で今後の物語の鍵を握るのは4人だと僕は考えます。

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一人目がヒルン。棺に入って海の中で2千年間睡眠。現代に目覚めて一郎と共に行動をしています。とにかく一郎のことが大好きなストーカー気質の古代人レディ。

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二人目が四郎の娘、真理。一郎の姪でありながら一郎に恋をしてしまった女性。一郎もなんだかんだ真理に好意があることはこれまでの物語を見ていても分かります。物語では嫉妬に狂ったヒルンに刺されて重体。本日刑事に応急手当てをされ、生死不明のまま未完となっています。

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そして三人目が冷凍睡眠から目覚めた一郎の妹、律子。殺人犯に成り下がってしまった一郎を始末しようと画策している人物です。

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最後が一郎を追う本日刑事。一郎に脅され、不本意ではありつつも自宅で一郎を匿っていました。国務大臣に逆えず、一郎を逃してしまいますが、また必ず一郎逮捕のために現れると思います。

それでは今後の物語を予想して行きたいと思います。

以下、展開される内容は僕の完全な推測で本編には全く関係ありません。

何卒、ご了承のほどをよろしくお願いします!


物語は一郎とヒルンがガラスの城に侵入した直後からスタート。たった二人で一郎の命を狙う処刑人の集団を返り討ちにするほど高い武力を持っているので、難なくコールドスリープの装置に辿り着くと思われます。


しかし、二人とも長期間睡眠の経験者。

並べられた100人もの冷凍睡眠状態の人々を見て、果たして普通でいられるのでしょうか?


特に一郎は無理やり冷凍睡眠をさせられた人間です。感情が大きく揺さぶられるのは間違いありません。ではその結果、一郎はどう動くのか、僕の予想は...



怒りMAXで100人を始末



望まない状態で冷凍睡眠に入った一郎に対し、ガラスの城で眠る人々は自分の私利私欲の為に自ら眠りについた人たちばかり。この話を国務大臣から既に聞いていた一郎はその人々を目の当たりにして、激しい嫌悪感を抱くのではないでしょうか。その結果、父を殺した時のようにボタン一つで全員を始末するのではないかなと思います。もしくはもっとダイナミックにガラスの城ごと大爆破するとか。

こうして大臣との取引を見事成功させた一郎。これで晴れて無罪獲得!かと、思いきや...、僕はここで国務大臣が約束を反故にして一郎を殺そうとするのではないかと予想します。



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そう思う理由は二点。

1点目は、やはり国の大事なポストを務める人物ですから一郎のような殺人犯と取引したことが明るみに出ると困るということ。口封じのために一郎とヒルンを亡き者にしようとするでしょう。

そして二点目。人を見かけで判断したら決してダメなんですが、顔がかなりの小悪党です。さらには私腹を肥やして、お腹も肥やしているワガママボディ。

どういう食生活をすれば顔の下にこんなにお肉がたまるのでしょうか。僕的には登場した時点で裏切りのフラグが立っていると睨みました。


しかし、そこは向かう所敵なしの一郎とヒルン。大臣を返り討ちにします。

こうして一郎は大臣殺害という、さらに大きな罪を負ってしまうことに。


逃亡生活を続ける一郎の前に妹の律子が登場。殺人犯の一郎のせいで近隣住民から迫害を受けている律子は怒りに任せて一郎を殺そうとします。


なんとか説得しようとする一郎でしたが、聞く耳を持たない律子。

律子もまた冷凍睡眠の影響で昔の人格とは変わってしまっていたのでした。

そして律子に襲われた一郎は...


不可抗力で律子を殺してしまう


こうなってしまったのは全て冷凍睡眠、そして父親のせいだと天を仰いで叫ぶ一郎。


これまで幾人もの家族を手にかけている一郎なので、律子のことも容赦無く殺すと思う人もいるかもしれません。でも僕が注目したのは弟の四郎を殺した後のこの一コマ。

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そう、涙を流しているんです。冷凍睡眠の影響が出てるとはいえ、ここから読み取れるのは、一郎の心の全てが悪になっている訳ではないということ。殺せるチャンスがあったにも関わらず、父親しか殺さなかった点を振り返っても、一郎の家族に対する愛情は少なからず残っているものと推測します。

そして物語は進み、失意の一郎の前に現れたのは本日刑事。

その後ろにはなんと真理の姿も。


ヒルンに刺され、生死を彷徨っていた真理の元気な姿を見て安堵する一郎。

「俺と一緒に来るんだ」と真理を誘います。


作品では真理は父の四郎が一郎に殺されたことを知りません。奇跡的に怪我から回復した真理は本日刑事からその事実を告げられます。


一度は一郎を恨んだ真理でしたが、憎悪よりも愛情が勝り、一郎を説得する為、この場にやって来たのでした。


一緒に逃げたい一郎と罪を償って欲しい真理。両者の気持ちはすれ違います。

しかし、お互いを大切に想っている為、膠着状態が続きます。


そんな中、物語は急展開を迎えます。真理の生存を知ったヒルンは一郎を独り占めする為に刃物を持って再び真理に襲いかかるのでした。


ヒルンのスピードは早く、止めるにはもはや銃で撃つしかありません。

ここで一郎は運命の選択を迫られることになるのです。

真理を取るか、ヒルンを取るか...

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そして一郎は...

ヒルンを撃ち、真理を助ける


のでした。


これまで幾度となく自分を救ってくれたヒルンを咄嗟の出来事とはいえ撃ってしまった一郎。慌てて抱き抱えますが、ヒルンは一郎の腕の中で絶命してしまうのでした。


自分の行った行動に後悔する一郎。次第に自分の存在が人々を不幸にしてしまうと思うようになり、一郎は刑事と真理にお願いします。


一郎「もう一度、俺を眠らせてくれ...」


自分の脳を治療できる未来まで再び眠らせて欲しいと言う一郎。

ヒルンを失った一郎の姿を見た真理と刑事は一郎の願いを聞き入れることに。


しかし、国中から狙われている一郎。冷凍睡眠ではいつか見つかって殺されてしまう...。そして3人が出した答えは...


ヒルンの眠っていた棺で、海の中で眠る


というものでした。


ヒルンが眠っていたのは2千年。一郎はいつ目覚めることになるのか...。

それは誰にも分かりません。


真理と別れの挨拶でこれまでの行為を謝罪する一郎。

真理も涙しながら一郎の謝罪を受け入れます。


そして一郎はヒルンの眠っていた棺の中に入り、海の底で再び長い眠りにつくのでした...。


以上が僕の予想する『ガラスの城の記録』の続きの物語でした!

あくまで僕の個人的な予想なので、かなり好き勝手に考えさせてもらいましたが、こういう遊びも未完だからこそ出来るのではないでしょうか。

皆さんもお時間があれば是非考えてみて下さい!


続きを描くという目線でキャラクターを見ていくと、今までに気付かなかった発見なんかもあったりして楽しいですよ!


それではまた次回〜!




藤原ちぼりchibori10_twicon.gif

1979年生まれ、岡山県出身。放送作家。

『サラリーマンNEO』、『となりのシムラ』、『落語 THE MOVIE』などの人気番組の他、テレビアニメ『貝社員』の脚本も担当。『特捜警察ジャンポリス』、『サンドウィッチマンの週刊ラジオジャンプ』など、漫画を題材にした番組にも携わっている。

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