手塚治虫による「ファウスト」の3度目のマンガ化です。
1970年2月、東京にほど近いN市のNG大学で、50年間研究に打ち込んできた一ノ関教授は、いまだに宇宙の真理が究明できないことに絶望し、自殺しようとしていました。
そこへ魔女メフィストが現われ、新しい生命と新しい人生を与えてほしいという一ノ関教授の願いを聞きいれます。
そして教授とメフィストは、教授がすべてのことに満足して「時よとまれ、お前は美しい」といった時、悪魔に魂をゆずるという契約をします。
メフィストは教授を、時間をさかのぼって1958年の過去へつれていき、若返り薬をのませます。美しい青年に若返った教授は、記憶を失い、坂根物産社長・坂根第造にひろわれ、第一と名づけられます。
第造に気に入られた第一は養子となり、第造が胃ガンで亡くなったあとに全財産をゆずりうけます。
そして、自分の手で生命をつくりだすという野望の達成に向けて歩き始めたのです。
(未完)
1988/01/01-1988/11/11・1988/12/09-1988/12/16 「朝日ジャーナル」(朝日新聞社) 連載
1984年に制作発表した劇場用アニメーション『ファウスト』が事情により制作できなくなり、黒澤明監督が映画『影武者』が製作できない思いを絵コンテともいうべき絵を描くことによって表現したように、手塚治虫もマンガを描くことによってかわりに作品化させようとしました。それがこの『ネオ・ファウスト』で、手塚治虫が、週刊誌「朝日ジャーナル」に自ら企画を持ちこみました。 しかし突如おそった胃ガンという病魔には勝てず、第2部を2回掲載したところで未完となってしまいました。 手塚治虫は、1950年に、描き下ろし単行本として『ファウスト』を発表しており、その後、新「ライオンブックス」シリーズの中の1編として、日本の時代物に翻案した中編『百物語』(1971年)を発表。これが「ファウスト」の3度目のマンガ化でした。