2021/10/28
生涯に渡って漫画を描き続けた手塚先生は毎年様々な作品を生み出しました。そういえば僕が生まれた1979年の手塚作品ってなんだろう?と、探してみると...、誕生月の6月に連載がスタートした作品がありました!
戦中戦後を舞台に描かれた手塚治虫先生の自伝的作品。
決まった主人公がいる訳ではなく、複数の男たちの戦後を生き抜くそれぞれの様子が収められています。
特にハッとさせられるのが、度々描かれる食糧難のシーン。
現代は食うに困ることはありませんが、ほんの少し前は食べることもままならない時代だったんですよね。
他の手塚作品にも戦中戦後の空腹を描いたシーンは度々出てきます。
「紙の砦」より
戦争のことを頭で分かっていても、体験している訳ではないので、その辛さは考えも及びません。戦争をテーマにした作品を読むと、こんなにほほんと暮らしていいのかな...と、毎回思います。
自分の生年月日を調べて、「どついたれ」が出てきたのも何かの縁!戦争は体験することは出来ませんが、空腹なら感じられることが出来ます。
そこで!食べたくても食べられないしんどさを少しでも知る為に、これから1週間ご飯を控えてみようと思います!
作家としてなんでも体験することはとても大事!知っているのと知らないのではもし今後空腹をテーマに何か書く時もリアリティが違ってきます。
そんな訳でまずは嫁に宣言。
作る手間が省けるのか歓迎ムードです。
意気揚々とスタートした1日目。初日は単純に食べる量を減らしました。いきなり何も食べないのは身体に悪いので1週間をかけて徐々に減らしていくことにしたいと思います。
この時点で食べたくても食べられない戦時中と違うじゃん!という気もしなくもないですが...、身体を壊しては元も子もないのでお許しを!
そして二日目...、この日は炭水化物を抜いてみることにしました。ご飯が何よりも好きな僕にとって炭水化物を抜くことは地獄の所業。でも当時の人はそのご飯すらまともに食べられなかったんだよなぁ...。そう思うとなんだか切ない気持ちになります。
おかずは豚もやしなど、カロリーの低いものをコンビニで購入。そんな僕の食事を見た嫁は...
ご飯の用意はいらないと言ったのに、コンビニの料理を食べていることが気に入らない様子。たしかによくよく考えると別にヘルシーなものを作って貰えばとよかったなと。なんか僕だけ嫁の料理を避けてるみたいになってしまいました...。ゴメンなさい。
お腹どころか嫁からの愛も減ってきています。とはいえ、ここでスタンスを変える訳にもいきません。このまま続行です!
三日目。幸い外での仕事はなく、リモート会議だけだったのでこの日は3食おかゆにしてみました。すぐ腹ペコになります。おかゆを入れた瞬間にお腹がグルグルと音を立ててるのが分かります。
中途半端に食べるのが一番お腹が空くかも...。もともと身体がでかいだけに食を細くするという作業が辛い...。なんでこんなことをやっちまったんだ...。少し後悔し始めました...。
せっかくなので体重計に乗ってみることに。普段全く測らないので体重計に乗ること自体超久々。前回いつ乗ったのかも正直覚えていません。
なんと100.5キロ。驚異の100キロ超えでした。
昔測った時は95キロぐらいだった気がします。5キロ以上太っている...。そういえば最近、Tシャツきた時におっぱいが出てるな〜と思ってはいましたが...。
そうか遂に大台を超えてしまったか...。身長が高いのでごまかせていた部分はありましたが...、これはヤバイ。
突然叩きつけられた現実に呆然...。企画が吹っ飛ぶほどショックを受けています...。
みんなに報告せねば...
...そんな風に思ってたのかマイファミリ―。知らなかったよ...。
そういえば「100キロを超える人は才能」という言葉を聞いたことがありますが、まさか僕にそんな才能があったなんて...。文才をくれよ。
あぁ神様...。あれがいけなかったのでしょうか...。コンビニ寄るたびにファミチキを買ってたあれが...。もしくはあれですか? 最近食べてハマってしまった魅惑のスイーツ、マリトッツォですか...。あれがいけなかったんですか...。
なんか100キロを超えてるヤツが「空腹の辛さを知ろう!」って言ってること自体、急に恥ずかしくなってきました。
どんだけ食ってきたんだよ、俺は...!この食いしん坊め!戦時中の人に申し訳ないよ...!
これはもうただ単に空腹を知る企画だけではなくなってきました。ダイエットも兼ねています。というかダイエット企画です。これをきっかけに痩せなければ...!
コロナが収まったら子供授業参観もきっとあるでしょう。その時に子どもにパパが太っていることで恥ずかしい思いをさせる訳にはいきません。
そんな決意を胸に、迎えた4日目...。
いよいよ絶食に挑戦!徐々に食べる量も減らしてきたので1日くらい食べなくてもそこまでキツくないはず...。というか、これくらいやらないと体重も減らないでしょう。
朝昼食べず、意外と行けるかも...と思ってましたが、夕方になると空腹がピークに。そもそも食べる量を減らしていたのでエネルギーが足りてません。身体に力が入らず、自分が弱っていることがとてもよく分かります。
たった3、4日食べる量を控えただけでこの有様...。これが日常的だった昔の人はどれだけ苦しかったことでしょう...。
今でも十分しんどいですが、昔の人の気持ちを知ろうと思うと、ここからな気がします。お腹が減ることの辛さがちょっと分かりかけてきた今だからこそ、ここでやめてはいけない...。そんな気持ちになりました。
そして5日目。
この日も絶食を試みました。歩くとなんだかフラフラし、何もやる気が起きません。仕事をしては横になるをひたすら繰り返します。
水を飲んでお腹を紛らわせますが全く効果がありません。これは辛い。昨日が一番しんどいと思いましたが余裕で超えてきました。
うぅ...、たしかにこんなのをずっと体験したら、それを作品に落とし込んで後世に伝えたい気持ちは分かる気がします。それだけ印象に残る体験ではあったんだろうなと...。
そういえば、と...体重計に乗ってみると...
たった二日そこらで3.1キロも減っている...。もともとの体重が多いから減る量も多いのは昔からの体質ではあるんですが...それでもこれはちょっと驚きです。
やったー!減ったぜー!ダイエット成功だーい!...なんて思う元気もなく、感想としては「うわぁ〜...」と引いてる感じです。
ちょっともう止めといた方がいいかも...。安全を考え、残り2日を残した状態で空腹体験をストップすることにしました。
今回、空腹というものを体験してみて今暮らしている日常がどれだけ恵まれているか思い知らされました。食べたい時に好きなだけ食べられる。そんな当たり前のことがどれだけありがたいことなのか...。
体験も終了したということで不足していたエネルギーを摂取。
うまい!食べ物の美味しさにも改めて気付くことが出来ました。我慢していた分、モリモリ食べてしまいます。
そして...
急に食べたもんだから下痢になっていましました!みなさんもダイエット後の急な食べ過ぎには注意して下さい!
そしてエネルギーもチャージして体重計に乗ってみると...
99.3キロ
...数日の努力が水の泡。今の自分に対する気持ちを一言で表現すると...
「どついたれ」です!
1979年生まれ、岡山県出身。放送作家。
『サラリーマンNEO』、『となりのシムラ』、『落語 THE MOVIE』などの人気番組の他、テレビアニメ『貝社員』の脚本も担当。『特捜警察ジャンポリス』、『サンドウィッチマンの週刊ラジオジャンプ』など、漫画を題材にした番組にも携わっている。
バックナンバー
コラム「手塚を知りたい放送作家」第2話:ゴールデン街と静寂と
コラム「手塚を知りたい放送作家」第3話:振り返れば奴がいるとかいないとか
コラム「手塚を知りたい放送作家」第4話:トキワ荘跡地と知らないおじさん
コラム「手塚を知りたい放送作家」第5話:百鬼丸みたいになりたくて
コラム「手塚を知りたい放送作家」第6話:妻の支えってハンパない
コラム「手塚を知りたい放送作家」第7話:手塚グルメに舌鼓
コラム「手塚を知りたい放送作家」第8話:アトムってやっぱりすごい
コラム「手塚を知りたい放送作家」第9話:手塚にあった怖い話
コラム「手塚を知りたい放送作家」第10話:漫画家の先生にインタビュー...のはずだったんですが...
コラム「手塚を知りたい放送作家」第11話:渋谷で見つけたアトムの謎
コラム「手塚を知りたい放送作家」第12話:『マンガの描き方』を見て描いたマンガ
コラム「手塚を知りたい放送作家」第13話:痛みで学んだ手塚治虫
コラム「手塚を知りたい放送作家」第14話:第1回 手塚でバズってるツイートGP
コラム「手塚を知りたい放送作家」第15話:手塚先生の缶詰の聖地で缶詰してみた
コラム「手塚を知りたい放送作家」第16話:家から一歩も動かず手塚旅行に行ってみた
コラム「手塚を知りたい放送作家」第17話:STAY HOME
コラム「手塚を知りたい放送作家」第18話:子どもに手塚マンガを読ませてみたら......
コラム「手塚を知りたい放送作家」第19話:手塚を彩るミュージック
コラム「手塚を知りたい放送作家」第20話:ファミコンの『鉄腕アトム』をやってみた
コラム「手塚を知りたい放送作家」第21話:中野ブロードウェイで見つけた『鉄腕アトム』
コラム「手塚を知りたい放送作家」第22話:歴史マニアに聞いた手塚光盛
コラム「手塚を知りたい放送作家」第23話:ベレー帽をかぶってみた
コラム「手塚を知りたい放送作家」第24話:ブッダを読んで悟りを開こう!
コラム「手塚を知りたい放送作家」第25話:手塚治虫の逃亡劇のように
コラム「手塚を知りたい放送作家」第26話:手塚治虫の感染症マンガ特集
コラム「手塚を知りたい放送作家」第27話:「ガラスの城の記録」を自分なりに完結させてみた
コラム「手塚を知りたい放送作家」第28話:手塚でテレビの企画書を書いてみた
コラム「手塚を知りたい放送作家」第29話:特撮革命!マグマ大使
コラム「手塚を知りたい放送作家」第30話:続・マグマ大使!ミニチュアの世界で出会った最小の男
コラム「手塚を知りたい放送作家」第31話:『やけっぱちのマリア』を読んでジェンダーを考える