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ストーリー

この作品は、隠れた手塚治虫の自伝的作品です。

稀代のストーリー・テラー手塚治虫は、たくさんのフィクションを生み出す一方で、折に触れて自分の半生をマンガにしています。『紙の砦』や『ゴッドファーザーの息子』など、明らかに自伝とわかる作品もあれば、『モンモン山が泣いてるよ』のように、フィクションとない交ぜになったもの、また『マコとルミとチイ』のような、日常を描いたエッセイ風のマンガもあったりします。

作者本人もしばしば断っているように、これらの自伝的作品は、事実そのままのものではないのですが、これらの作品の中で活躍している、あわてんぼうでおっちょこちょいながら、どこか根性の座った青年、手塚治虫というキャラクター(ときによりしばしば、高塚修とか、大寒鉄郎とか、名前を変える)はとてもリアルで、私達読者はやっぱり、作者本人とおのずとイメージを重ねてしまいます。

この『どついたれ』では、戦中戦後の荒廃した大阪を舞台にたくましく生きてゆく男達の姿が描かれています。主人公の戦災孤児で、アメリカに復讐してやろうと心を燃やす哲、葛城製作所の若旦那の健二、転んでもただではおきないタフなチンピラのヒロやんにトモやん。それにわれらが高塚修こと手塚治虫。
ヒロやんたちや哲、健二のドラマティックな物語の合間に、高塚修という作者の分身の視線がはさまれます。
大阪から郊外まで 5 時間以上を歩きとおした末に、農家にお米を恵んでもらう話、焼け跡のお菓子工場からチョコレートを拾い食いして、こっぴどくしかられる話。ここに描かれた大阪の様子には、つかまっては DDT を吹きかけられる孤児達の体臭や、闇市の人いきれが、今にもコマの間からにおってきそうなリアリティの迫力があります。

大変残念なことに、この『どついたれ』はごく序盤で打ち切りとなっており、今後漫画家・高塚修と葛城健二らがどう組んで、どう成功してゆくのか、ヒロやんやトモやんたちがどう絡んでくるのかは描かれておりません。しかし、きっと手塚治虫の人生と重ねあわせるようにして、戦後の大阪が持ち前の輝かしい生命力で、生き生きと復活してゆくさまが、虚実を織り交ぜ、ドキドキワクワクするようなストーリーに仕上げられていたに違いない、と思うのです。

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  • どついたれ 1
  • どついたれ 2

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