虫ん坊

コラム「手塚を知りたい放送作家」第36話:忍術を初めて使った日

2021/12/27

chibori36_title.jpg第36話:忍術を初めて使った日


手塚をテレビで取り上げるべく水面化でコソコソしているちぼりです。

そちらにまだ動きがないので、今回は通常のコラムをお届けしたいと思います。

小さい頃、僕には憧れていた職業があります。それは...忍者。


と言っても、僕に限らず少年なら誰しも一度は憧れたことがあるんじゃないでしょうか。少し前だと「NARUTO」、僕の小さい頃だと「忍者ハットリくん」など。時代毎に子どもが夢中になる忍者マンガがある気がします。


様々な忍者マンガがありますが、手塚先生も忍者マンガを描いてますね。


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「おれは猿飛だ!」

忍者学校に通う落ちこぼれ忍者の佐助が主人公。

見た目は可愛い佐助ですが、里を襲われ目の前で両親を殺されてしまうなど、結構な悲劇から物語が始まります。


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様々な忍術を使うのですが、忍術の使用には免許証が必要と、細かい設定が面白いです。免許証を没収されてふてくされる所も幼さが残っていて可愛らしい。ちょっと生意気だけど応援したくなる魅力的なキャラですね。


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忍者マンガを見ていると幼い頃の記憶が蘇ります。

当時、僕が見た忍者の修行の一つに「植物の苗を植えて、それを毎日跳ぶと植物の成長と共に自分のジャンプ力もアップする」という修行がありました。


忍者に憧れていた僕はそれを実施しようと、家の花壇に生えてた花を抜いて、裏山に植え替えたんです。


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その日はよかったんですが、次の日も跳ぼうと裏山に行って見ると、なんの目印もせず自然の中に埋めちゃったもんだから、どこにあるかさっぱり分からなくなり、泣きじゃくった記憶があります。

今考えると目印を付けてないのももちろんですが、植えたのが花っていうのも間違いだった気がします。そんな高く伸びないだろうに...。ジャンプ力を鍛える前にまず頭だよ。って、当時の自分に言ってあげたいですね。


さて、マンガでは派手な忍術を使いますが、実際の忍者ってどうだったんでしょう?

調べて見ると、ほんとの忍者の術は意外と地味でした。

例えば、草木の陰に隠れる「木の葉隠れの術」
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そして木の裏に身を潜める「観音隠れの術」


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いや、かくれんぼかいっ!

これを術って呼んでいいものか...と疑問に思いますが、そもそもガチの忍者ってスパイ的な諜報活動をメインにしていたので、見つからないことが一番大事。だから隠れたり、逃げたりする術がメインなんだそう。そういう意味ではマンガのようなド派手な忍術は御法度なのかもしれません。


「おれは猿飛だ!」の中でも隠れる忍術は度々登場してきます。


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そんな隠れ系の忍術の中で、実際の忍者が使っていたもので、僕が特に驚いたのは「うずら隠れの術」。

うずらという鳥は、じっと動かないことで天敵の目をごまかすそうです。この術は四つん這いになり、うずらの如く動かない。そうすると「あれ? 石かな?」って敵をごまかすことが出来るんだとか。


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いや...これ無理じゃない?

しかもこの術の補足を見て見ると、当時の忍者は「たとえ、槍で刺されたとしても声を殺して耐え忍んだ」そうです。


...槍で刺されてる時点でほぼバレてない?


万が一その場をやり過ごせたとしても、槍でがっつり刺されたら高確率でその後死んじゃいますよね...。忍者って大変だなぁ...。



そういえば僕もうずら隠れの術を使った経験があることを思い出しました。



あれはまだ僕がテレビ業界に入って間もない頃。参加させてもらった番組の収録に伺ったんです。


通常テレビの収録ってセットの建て込みだとか、技術さんの準備などが収録のかなり前から行われています。出演者さんがスタジオに入ってくるのは、それらの準備が全て整った後。


作家もそんなに早く行く必要はないのですが、業界入りたてで右も左も分からなかった僕は、一番早い時間から現場にスタンバイ。


スタジオに到着すると知っている人ゼロ。大道具のスタッフさんや技術スタッフさんなどはいますが、会議では会うことがない方々なので面識もありません。相手からの「誰だ?こいつ...」という冷ややかな目が突き刺さります。


そこから収録が始まるまでおよそ、5〜6時間。何もすることがないのです...。そしてしばらくして、会議で会っていた制作スタッフさんたちがやってきました。知った顔の登場にホッとしたのも束の間。みなさんやることが多く、バタバタと動き回っています。


作家はアイデアを出したり、台本を書いたり、どちらかというと収録前にやる仕事が多く、実は収録当日ってやることはほとんどないんです。


いつもにこやかに接してくれるADさんも、この日ばかりは戦場で戦う戦士の顔になっていて、気軽に話しかけられる雰囲気でもありません。


スタジオの端には通称"たまり"と呼ばれる、テーブルにお茶菓子などが置かれた、座ることの出来る休憩スペースがあります。(たまりのない番組もあります)


入りたての番組で一番下っ端の作家の僕はこのたまりに座る勇気もなく、ただただ時間だけが流れていきます。


次第にみんなが必死に働いてる中、ボーッと突っ立っていることに罪悪感を感じて来ました。



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熱意だけで朝から来たはいいものの、完全な大失敗。

居場所がなく、耐えきれなくなった僕は...


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局のトイレに籠り、うずら隠れの術を発動。

忍者は見つからないことが本分ですが、僕の当時の気持ちとしては...

「みんな!僕はここだよ!ねぇ、誰か僕を見て!」


と、同じうずら隠れの術でも、気持ち的には真逆だったと思います。

朝イチから収録に行くもんじゃない。この日僕は身をもって痛感しました。

何ごともほどほどが一番。みなさんもお気をつけ下さい。


それでは最後に佐助の使った忍術で衝撃を受けたものをご紹介してコラムを終わりたいと思います。


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束ねた髪を高速で回し、空を飛んで移動する忍術。

見た目ほぼタケコプター!!!

ドラえもんが始まる9年も前に連載されていた本作で、まさかこんな絵が見られるとは...。流石は手塚先生。


それではこの辺でドロンさせていただきます。また次回〜!



藤原ちぼりchibori10_twicon.gif

1979年生まれ、岡山県出身。放送作家。

『サラリーマンNEO』、『となりのシムラ』、『落語 THE MOVIE』などの人気番組の他、テレビアニメ『貝社員』の脚本も担当。『特捜警察ジャンポリス』、『サンドウィッチマンの週刊ラジオジャンプ』など、漫画を題材にした番組にも携わっている。

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