虫ん坊

コラム「手塚を知りたい放送作家」第35話:手塚をテレビで流すまで①

2021/11/29

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第35話:手塚をテレビで流すまで①



早いものでこのコラムも今回で35話目。

回を重ねるごとに少しずつではありますが、手塚治虫先生や手塚作品についての知識も増えていってます。

知れば知るほど手塚先生って本当にすごいなぁ...と思うし、漫画に与えた影響の大きさに驚くばかりです。


でも、今の若い世代の人たちはどれくらい手塚先生のことを知ってるんだろう? うっすらとしか知らない人も多い気がしますよね。お亡くなりになられてからかなりの歳月が過ぎているので当然と言えば当然なのかもしれませんが...。


そんな中で僕には最近よく思うことがあります。


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ご縁あって書かせて頂いているこのコラム。書く度に発見がある手塚作品だからこそ、僕にできる形で世の中に発信していきたい!これまで読んだ作品の中にも若い人たちに読んで欲しいものはいっぱいあるんです!

と、意気込んではみたもののなんの影響力もない僕がただコラムを書いてるだけでは世の中に手塚を発信することなど出来るはずがありません...。


なにか手はないものか...。

例えば...、SNSで告知しまくるとか?

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ダメだ...。フォロワー400人しかいないんだった...。逆に手塚の品位を下げてしまいそうな気がする...。

いっそビラを配るとか...


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もっとダメだ...。手塚プロダクションから絶対にクレームが入ってしまう...。

う〜ん...。なにか良い手はないものか...。

やっぱり放送作家なんだから番組と通して手塚作品の魅力を伝えられるのが一番良い気がする。そもそもメディアだと伝えられる範囲も桁違いだし。


割とコラムを書き始めた頃から考えてはいたことだけど、これがなかなか難しいのです...。現状担当している番組で漫画を入れ込めるモノもないしな〜...。


チャンスがあれば企画書を書いたりしてるけど、これまた全然通らない...。

まぁ、そもそも番組の企画が通る確率なんてめちゃくちゃ少ないので分かってはいたことなんですけど...。そういえば前に出した手塚先生のドラマの企画もさっぱり音沙汰ないなぁ...。

ちきしょう!!!なんて僕は無力なんだ...!

手塚先生に申し訳ない...!


己の無力さを痛感する中、ある日一本の電話が。


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なんとまさかまさかの漫画のレギュラー番組の話が舞い込んで来たのです!

運命を感じられずにはいられません。ここなら手塚を取り上げることだって不可能ではないはずです。

そして始まった番組の会議。広告代理店や制作会社を含めてどんな番組にするかを話し合っていきます。


基本的な番組のテーマは"色んな漫画作品に出会える"こと。その他、漫画に関する様々な企画を行っていく漫画バラエティです。漫画が大好きなだけにテンションが上がります!


会議で色んな人の話を聞いていると「へぇ〜」と思うこともありました。電子書籍の需要がどんどん高まっているこれからの時代は、古い漫画を読まれる機会が昔より増えるんだそうです。


書店では置ける本の数に限界があるのに比べ、web上では数に際限はありません。昔の漫画を手に取る機会は実は今の方が増えているんだとか。


確かに...「サボテン君」は今の書店ではなかなか置いてないだろうしなぁ...。


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(西部劇がテーマのミルクを飲むと力が湧いてくるサボテン君のお話だよ!)




紙の単行本部数が減っているのは、紙漫画で育った僕には正直寂しい所ですが、電子書籍ってそんな影響もあるんですね。

ビッグタイトル以外の手塚作品も読んでもらい易い時代になったのかもしれません。これは俄然やる気が出ます!


とはいえ、僕一人の意見で番組内の企画が決められるはずもなく、みんなでアイデアを出し合いながら少しずつ形にしていきます。


新しい漫画作品の紹介に話の熱が入る中、切り出してみました。



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ちぼり
「『シーン』っていう擬音を漫画に使ったのも手塚先生が初だったり、色々と今の漫画に影響を与えている部分も多いと思うんです。例えばそんなところを紹介するとか...」


これまでにコラムを書いて得た知識をここぞとばかりに発揮します。



スタッフ
「そんなコーナーも全然ありだと思いますよ!」



おぉ、好感触! 流石、手塚作品です。



スタッフ
「でも、手塚プロに許可とか取れるのかなぁ...。ルートもないし...」


ちぼり「あ、僕手塚プロでコラム書かせてもらってるんで、聞くだけなら多分出来るかと...」


スタッフ「え!? そうなんですか!?」



実はコイツ、すごいヤツなのか? みたいな空気が一瞬流れました。

水戸黄門が印籠出した時みたいな感じのような...。


とはいえ、手塚プロに話している訳ではないのでどうなるか全く分からないのですが...。


こうして思わぬ形で始まった「手塚作品をテレビで紹介しよう!」という企画。番組スタートまでにはもう少し時間があり、これからどんな展開になっていくのか全く分かりませんが、なんらかの形で手塚の魅力をもっとたくさんの人たちに伝えていければ良いなと思います!


今後の展開に乞うご期待!


藤原ちぼりchibori10_twicon.gif

1979年生まれ、岡山県出身。放送作家。

『サラリーマンNEO』、『となりのシムラ』、『落語 THE MOVIE』などの人気番組の他、テレビアニメ『貝社員』の脚本も担当。『特捜警察ジャンポリス』、『サンドウィッチマンの週刊ラジオジャンプ』など、漫画を題材にした番組にも携わっている。

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