2023/08/31
ふと気がつくと月をボーッと眺めている。
そんな時ありますよね。
つい最近も各国がアポロ計画以来半世紀以上ぶりに月面探査に乗り出すといニュースを見たばかり。今も昔も人はなぜ月に魅了されるのでしょうか。人類が月を目指すのは、本能に刻まれた思いがあるからなのかもしれません。
そんな人間が月を目指す理由が描かれた作品が「ノーマン」です。
1968年に「週刊少年キング」で連載されたSF漫画「ノーマン」。
個人的にあまりSF漫画を読んでこなかったのですが、これがまぁ面白い!!せっかくなので今回はそんな「ノーマン」の魅力をお伝えしたいと思います。
物語は突如世界に現れた不気味な月からスタートします。
ちなみにこの記事をアップした本日31日は13年ぶりのスーパーブルームーンだそうです。今、ちょっと月を見上げてみるのもオススメですよ!
さて本題に戻りまして...、モノを自在に動かす念動力の超能力を持つ少年、中条タクは謎の案内人に連れられて、父母と共に5億年前の月にワープします。
タクたちが降り立ったのは月のモコ帝国。5億年前の月は戦争の真っ最中でモコ帝国はタクのような超能力を持つ逸材を未来や他の惑星から集め、強力な戦闘員にすることで、敵からの月の侵略を止めようとしていたのです。
そんな「ノーマン」の魅力、その一は...
悪役は作品の第二の主人公と言っていいほど重要です。主人公の壁となり、成長させる大事な役どころ。他の作品でも魅力的な敵キャラは多いですが、「ノーマン」の敵は強敵という点においてズバ抜けているんです。
月の侵略を企てている敵キャラのゲルダン星人。
まず第一に超ウルトラ残忍。
そして自由自在に姿を変える変身能力。
ゲルダン星人の大きな特徴なのは尻尾ですね。変身をしていてもたまに尻尾が見えている時があります。見分ける時の参考になる一つのポイントです!
この他にも「人を塩にしてしまう毒」や「四肢がバラバラになっても復活する再生能力」、「念動力」、「口から毒ガス」に「スーパーテクノロジー」などなど。普通なら一つでも十分に強力な能力をしこたま持っているんです!完膚なきまでにボロボロにされることが目に見えている相手。でもだからこそ、この「ノーマン」という名作が成り立っているんです。
そんな強大な敵に立ち向かうのが「ノーマン」の魅力、その二...
とんでもない敵には頼れる仲間たちが必要不可欠。
様々な超能力を持った仲間がいるんですが、それぞれキャラが濃い!
決して長くはない作品にも関わらず、それぞれのキャラがしっかり立っていて活躍どころもしっかりとあります。さらに物語に深みを増すポイントが...
共に戦う仲間の裏切りは主人公のタクの心に大きな傷を残します。あえてここでは誰が裏切り者かは伏せておきますので是非予想して、本作をお楽しみ下さい。
ちなみに僕のオススメキャラはタクの上官であるベガー少佐です。ハッキリ言って無茶苦茶な野郎です。
最初は胸糞悪すぎるのですが、物語が進むにつれて軍人として国を守る為という確固たる信念が垣間見えてきて徐々に嫌いになれなくなりました。こういう見せ方って上手だな〜と。まんまと手の平で転がされた感じです。
そして「ノーマン」の魅力、その三が...
主人公タクの母親への愛です。タクの念能力発現のきっかけにもなっているママですが...割と序盤でベガー少佐によって冷凍ママにされてしまいます。
ちょこまかされると息子が集中できない。
そんな理由だけで人間を冷凍してしまうベガー少佐。
ママが冷凍されていることなんぞ露ほども知らないタクは、がむしゃらに超能力を鍛える日々。
タクのママへの深い愛情は物語をクライマックスへと導く大きなきっかけにもなるんです。冷酷無比な敵にも大きな変化をもたらす母への愛は必見ですよ!
そして「ノーマン」の魅力、最後が...
実は冒頭の不気味な月が伏線となっていて、結末で回収されるのですがとても上手にまとまっていて読後感が非常に良いです。
その答えを是非その目でご覧になって下さい!
タイムスリップにワープ、異星人との戦いに超能力などなど。明らかに盛り過ぎな状態なのにとても綺麗にまとまっている作品で本当に勉強になりました。
いやー、それにしてもゲルダン星人怖いですね〜。たまに宇宙人が人類に混じっている説なんかもありますが、ひょっとしたら今こうしている間も近くにゲルダン星人が潜んでいたりなんかして...。
1979年生まれ、岡山県出身。放送作家。
『サラリーマンNEO』、『となりのシムラ』、『落語 THE MOVIE』などの人気番組の他、テレビアニメ『貝社員』の脚本も担当。『特捜警察ジャンポリス』、『サンドウィッチマンの週刊ラジオジャンプ』など、漫画を題材にした番組にも携わっている。
バックナンバー
コラム「手塚を知りたい放送作家」第2話:ゴールデン街と静寂と
コラム「手塚を知りたい放送作家」第3話:振り返れば奴がいるとかいないとか
コラム「手塚を知りたい放送作家」第4話:トキワ荘跡地と知らないおじさん
コラム「手塚を知りたい放送作家」第5話:百鬼丸みたいになりたくて
コラム「手塚を知りたい放送作家」第6話:妻の支えってハンパない
コラム「手塚を知りたい放送作家」第7話:手塚グルメに舌鼓
コラム「手塚を知りたい放送作家」第8話:アトムってやっぱりすごい
コラム「手塚を知りたい放送作家」第9話:手塚にあった怖い話
コラム「手塚を知りたい放送作家」第10話:漫画家の先生にインタビュー...のはずだったんですが...
コラム「手塚を知りたい放送作家」第11話:渋谷で見つけたアトムの謎
コラム「手塚を知りたい放送作家」第12話:『マンガの描き方』を見て描いたマンガ
コラム「手塚を知りたい放送作家」第13話:痛みで学んだ手塚治虫
コラム「手塚を知りたい放送作家」第14話:第1回 手塚でバズってるツイートGP
コラム「手塚を知りたい放送作家」第15話:手塚先生の缶詰の聖地で缶詰してみた
コラム「手塚を知りたい放送作家」第16話:家から一歩も動かず手塚旅行に行ってみた
コラム「手塚を知りたい放送作家」第17話:STAY HOME
コラム「手塚を知りたい放送作家」第18話:子どもに手塚マンガを読ませてみたら......
コラム「手塚を知りたい放送作家」第19話:手塚を彩るミュージック
コラム「手塚を知りたい放送作家」第20話:ファミコンの『鉄腕アトム』をやってみた
コラム「手塚を知りたい放送作家」第21話:中野ブロードウェイで見つけた『鉄腕アトム』
コラム「手塚を知りたい放送作家」第22話:歴史マニアに聞いた手塚光盛
コラム「手塚を知りたい放送作家」第23話:ベレー帽をかぶってみた
コラム「手塚を知りたい放送作家」第24話:ブッダを読んで悟りを開こう!
コラム「手塚を知りたい放送作家」第25話:手塚治虫の逃亡劇のように
コラム「手塚を知りたい放送作家」第26話:手塚治虫の感染症マンガ特集
コラム「手塚を知りたい放送作家」第27話:「ガラスの城の記録」を自分なりに完結させてみた
コラム「手塚を知りたい放送作家」第28話:手塚でテレビの企画書を書いてみた
コラム「手塚を知りたい放送作家」第29話:特撮革命!マグマ大使
コラム「手塚を知りたい放送作家」第30話:続・マグマ大使!ミニチュアの世界で出会った最小の男
コラム「手塚を知りたい放送作家」第31話:『やけっぱちのマリア』を読んでジェンダーを考える
コラム「手塚を知りたい放送作家」第32話:手塚キャラでテレビスタッフオールスターを考えてみた
コラム「手塚を知りたい放送作家」第33話:催眠術で手塚先生になりました
コラム「手塚を知りたい放送作家」第34話:私はどついたれで痩せました
コラム「手塚を知りたい放送作家」第35話:手塚をテレビで流すまで①
コラム「手塚を知りたい放送作家」第36話:忍術を初めて使った日
コラム「手塚を知りたい放送作家」第37話:手塚をテレビでな流すまで②
コラム「手塚を知りたい放送作家」第38話:アトムの馬力を分析
コラム「手塚を知りたい放送作家」第39話:七色いんこになれるかな?
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コラム「手塚を知りたい放送作家」第41話:シュマリのボディを手に入れろ!
コラム「手塚を知りたい放送作家」第42話:シュマリのボディを手に入れろ!後編
コラム「手塚を知りたい放送作家」第43話:西武園ゆうえんちのレオランドに初潜入!
コラム「手塚を知りたい放送作家」第44話:神保町で手塚作品の書店を開店しました!
コラム「手塚を知りたい放送作家」第45話:ライバルを作ろう!
コラム「手塚を知りたい放送作家」第46話:トキワ荘マンガミュージアムに行ってみた!
コラム「手塚を知りたい放送作家」第47話:夜の椎名町を歩く
コラム「手塚を知りたい放送作家」第48話:チャットGPTに手塚作品を考えてもらったら...
コラム「手塚を知りたい放送作家」第49話:魔法のガムで作りたいモノ
コラム「手塚を知りたい放送作家」第50話:休載と手術とバンパイヤ