コラム「手塚を知りたい放送作家」第38話：アトムの馬力を分析
2022/05/25
第３8話：アトムの馬力を分析
とてつもないパワーを持ち、人々の為に役立てるアトム。
そのパワーは１０万馬力と公表されています。
すごいということは十分伝わるのですが、ふと疑問に思いました。
そもそも馬力ってなんだ...？
調べてみると「ある重さの物体を、どれだけの時間で、どれだけの距離を動かしたか」という「仕事率」を表す単位だそうで、自動車では「最高出力」を表す際に使用される単位なんだとか。
具体的には、"１馬力＝約７５kgの物体を１m動かす力"とのこと。
分かるようでいまいちピンと来ない...。
そんな訳で今回はアトムの１０万分の１のパワーである"１馬力"がどれほどのモノなのか自ら体験をして調べてみたいと思います！
"１馬力＝約７５kgの物体を１m動かす力"なので、早速７５kgの人に協力を仰ぎ、１mを移動してみました。
普通にしんどい。重さ的にも絵面的にも...。
馬のパワーを実際に感じるにはやはり触れ合うことが一番！
そこで乗馬体験を行ってみることに。早速都内にある乗馬倶楽部に連絡して予約を取ります。しかし...
スタッフ「体験で初心者の方に乗ってもらうのは大人しい馬が理想でして、うちの場合、比較的に高齢の馬を用意させてもらってるんです。藤原さんの体重だとちょっと馬的に厳しいかもしれません...」
どうやら僕が重すぎて馬に乗せることが難しいそう...
馬的に厳しい...。人生で初めて耳にする言葉...。馬力を探る以前にダイエットをするべきなのかもしれません。
スタッフ「でもこれだけは言わせ下さい！あくまで年寄りの馬だから厳しいのであって馬が若ければ問題ないんで！決して馬に馬力がない訳ではないんで！」
プロの馬へのプライドが電話越しにヒシヒシと伝わって来ました。
なんか...すいません...。
馬力を探ってこんな傷つき方をするなんて...。
スタートからつまずくどころか、崖から落ちたような気分です。
とにかく馬を...。なんとか馬と接さなければ企画倒れになってしまう...。
関東近郊で馬を見られる所を探した結果、巡り会えた馬は...
ポニー！
意外と普通の馬がいるところが無いことが判明。
逆にポニーは結構いました。
背中の高さが１４８cm以下の馬のことを総称してポニーと呼ぶそうです。
馬力を探りにきてポニー見たところでなんの参考にもならないだろう...。
そんな風に思いながらポニーを眺めていました。
小さい身体につぶらな瞳...
可愛い。めちゃんこ可愛い。
傷ついた心がポニーの可愛さによって癒されているのを感じます。
餌をあげてみます。
可愛い。微動だにせずポリポリと食べています。
子どもたちがポニーを囲む中、一人で人参をあげるおじさん。
ハッ...！馬力のことを調べに来たのに気づいたらほんわかしちゃってる...
本来の目的を忘れる所でした。ここからはポニーを観察！気合を入れて馬に秘められた馬力を探りたいと思います。
ほとんど動かない。
ヤバいです...。微塵も馬力を感じません。
やはりポニーでは役不足だったのか...
しかし、しばらく観察していて気付いたことがあります。
それはポニーの周りにいる子どもたちの笑顔。
なんて幸せそうな顔。乗っている子はもちろん、それを見る子どもたちも。
"魅力"という単語も"馬力"と同じく"力"という漢字を使います。力強さばかりに捉われていましたが、人を虜にする魅力というこのパワーも馬力と言えるのかもしれません。
例えばポニーが０.５馬力だと仮定すると...、アトム一人＝２０万ポニー。
ポニー１頭でこれだけの子どもに幸せを与えられるのだとしたら、アトムの１０万馬力って、やっぱりすごいんだなぁ〜と実感出来ました。
そういえばうちの子も、僕が馬になって乗せてあげるとすごい喜ぶし...、
そうだ！せっかくならもっと本物の馬に近づけてみよう！その方が馬の魅力も加わってもっと喜んでくれるはず！
そんな訳で馬のお面を購入。家で被って子どもたちを乗せてあげます。
「ギャー！」
「気持ち悪―い！」
「こっち来ないで〜！」
阿鼻叫喚。
ポニーの周りで見た子どもたちとは真逆の表情になってしまいました。んー、人を笑顔にさせるのって難しいですね。
藤原ちぼり
1979年生まれ、岡山県出身。放送作家。
『サラリーマンNEO』、『となりのシムラ』、『落語 THE MOVIE』などの人気番組の他、テレビアニメ『貝社員』の脚本も担当。『特捜警察ジャンポリス』、『サンドウィッチマンの週刊ラジオジャンプ』など、漫画を題材にした番組にも携わっている。
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