コラム「手塚を知りたい放送作家」第55話：手塚先生の新選組がドラマ化されるってよ！
2024/02/02
第５５話：手塚先生の新選組がドラマ化されるってよ！
最近ニュース記事にもなっていましたが、２０２４年４月からテレビ朝日にて手塚先生の描いた「新選組」がドラマ化されるそうです！
タイトルは「君とゆきて咲く～新選組青春録～」。せっかくの機会なので読んでいなかった手塚先生の「新選組」をこの度、読んでみました！
実は自分も構成作家として歴史を扱う番組をやったことがあり、新選組の情報もそこそこ知っているので、僕の新選組プチ情報などを交えながら手塚先生の新選組を紹介していきたいと思います。
ちなみに手塚先生がこの「新選組」を描いたのは１９６３年。今でこそ新選組は漫画のテーマとして取り上げられることも多いですが、当時はほとんどなかったんだとか。流石の目の付け所ですね〜。
そんな手塚先生の「新選組」。物語の主人公は深草丘十郎という青年で、親を殺された仇を打つために新選組の門を叩きました。
丘十郎が入隊試験で出会ったのが、鎌切大作という青年。歳は同じくらいに見えるのに、剣の腕前は段違い。果し合いを挑んできた男を大作はいとも簡単に倒してしまいます。
「新選組」を扱った作品は実在した隊員たちを中心にしているケースが多いですが、手塚先生の新選組ではこの二人のオリジナル隊士を軸に話が展開していきます。
見事、新選組へ入隊した丘十郎。新選組の隊服に袖を通します。
新選組といえばやはりこのダンダラ（ギザギザの山形）模様の入った羽織ですよね！新選組のトレードマークと言っても過言ではありません！
それではここで ちぼりプレゼンツの新選組プチ情報をお届け！
諸説あるのであくまで一説ではありますが、実はこのダンダラ模様...
忠臣蔵の赤穂浪士のパクリなんです！
新選組の局長である近藤勇が赤穂浪士に憧れていた為に、赤穂浪士のダンダラ模様が新選組の隊服として採用されたんだとか。でも実際のところは隊士に不評だったらしく、１年もしないうちに着る人もいなくなったそうです。当時のセンスではダサかったんですかね？
作品に戻りますが、やはり武士をテーマにした作品だけに派手なチャンバラシーンが多くてワクワクします！なんだか読んでいると自分も武士になったような気持ちになってきます！
「いざ、尋常に勝負！！！」
そんなチャンバラシーンで僕が驚いた、手塚先生ならではの描写がこちら！
コマ自体を敵もろとも切り裂いて圧倒的な強さを表現しています。こういう枠に捉われないアイデアは毎度のことながら脱帽しますね。
そして、手塚先生の新選組は史実とオリジナルのキャラを上手く掛け合わせているのも大きな特徴の一つ。
例えば、新選組の局長といえば近藤勇ですが、その前に局長を務めていたのが芹沢鴨。酒を飲んでは大暴れ、商人から金をぶん取ろうとし、金を渡さなければ放火までしてしまう。傍若無人な振る舞いで新選組の悪評を轟かせた人物です。
史実であれば新選組内の近藤派によって暗殺されてしまうのですが、本作の場合、芹沢の悪行に耐えきれなくなった丘十郎と大作の手によって殺されてしまいます。
史実をベースにしながらもオリジナリティ溢れる展開で、新選組を知っている僕も「次はどうなるんだろう！？」と、ワクワクしながら楽しむことが出来ました。
それではここで、芹沢鴨に関するプチ情報！新選組を扱うほとんどの作品においてガサツ＆ろくでもない悪役として描かれている芹沢鴨ですが、実は前職は...
めちゃくちゃ高学歴の神官なんです！
そして隊士の稽古に付き合ったり、近所のこどもたちと遊んだりと面倒見の良い一面もあったそう。キャラクターがブレる為か、そこが表現されている作品は少ないみたいですね。
ちなみに作品内で芹沢が決めていたとされる新選組のルール。
切腹がめちゃくちゃ多いです。
京都での新選組の５年に及ぶ活動の中で命を失った隊士は２３人。
なんとそのうち切腹で死んだ隊士は１６人もいるそう。そりゃあこんなルールにしてたら切腹の方が多くもなりますよね...。
さて、江戸幕府の徴募によって組織された新選組が目の敵にしていたのが、長州藩・土佐藩などの倒幕を目論む尊王攘夷派志士です。本作でも尊攘派の坂本龍馬と丘十郎が巡り合うシーンが描かれています。
本来なら敵であるこの坂本との出会いが丘十郎の運命を大きく左右することに...。丘十郎の成長も本作の見どころです！
さてさて、ここでまたまたプチ情報。立場的に対立状態にあった新選組と坂本龍馬（長州藩）。しかし、なんと驚くべきことに後の世では...
坂本龍馬の子孫と、近藤勇の子孫が結婚しているんです！
以前、日本の偉人の子孫を紹介する番組を担当していたのですが、そこで発覚した驚きの事実...。（ただし、龍馬の兄の子孫なので直系子孫ではなく、坂本家の血統です。）
まさか敵対している二人の子孫が結ばれるなんてこれには流石の龍馬と近藤勇も驚きでしょう。
それでは最後に手塚先生の描いた「新選組」の最大の見せ場を紹介したいと思います。それは丘十郎とある人物の一騎打ち！
果たして丘十郎と戦う人物は誰なのか？そしてどんな理由で戦うのか？気になった方は是非作品を見てチェックしてみて下さい！
個人的に手塚先生の「新選組」で一番驚いたのは、新選組、最大の見せ場である池田屋襲撃を描いていないこと。この部分は新選組の出世を決定づけた大事な部分ですが、手塚先生はあえて描いていません。王道中の王道を外し、オリジナルキャラの展開で見せていく。こういう挑戦を行なっているからこそ、手塚治虫は唯一無二の存在でいられたんでしょうね。まさに作家。自分もハッとさせられます。
さてさて、今回は手塚先生の「新選組」を紹介させて頂きました。一体ドラマはどんな感じに仕上がるんでしょうか？
今から楽しみで仕方ありません！！
藤原ちぼり
1979年生まれ、岡山県出身。放送作家。
『サラリーマンNEO』、『となりのシムラ』、『落語 THE MOVIE』などの人気番組の他、テレビアニメ『貝社員』の脚本も担当。『特捜警察ジャンポリス』、『サンドウィッチマンの週刊ラジオジャンプ』など、漫画を題材にした番組にも携わっている。
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