写真と文/黒沢哲哉 地図と絵/つのがい
西武園ゆうえんちを舞台にした虫さんぽ+、第3回はみんな大好き、お土産コーナーをめぐります! クロスワードパズルのヒントは、お土産コーナー「レッツゴーバザール」にもあるらしい!?
差出人不明の謎の招待状に導かれ、手塚治虫と手塚マンガにゆかりの地を巡る我々虫さんぽ+(プラス)隊。今回の目的地は埼玉県所沢市の「西武園ゆうえんち」だ。
このゆうえんちの中にある手塚キャラクター満載のエリア「レッツゴー! レオランド」。ここで我々は手分けして招待状に書かれたカギを探し、クロスワードのマス目をひたすら埋めようとしていた。
ところが現時点で埋まった文字は4つ。閉園時間が迫る中、残る3つのカギは一向に見つからないままだ。果たして時間内に全ての文字を埋めることができるのか!!
まずは「レッツゴー! レオランド」の概要をおさらいしておこう。すり鉢状になった楕円形のランド内には、手塚マンガの人気キャラクターがテーマとなった3つのアトラクションと2つのプレイスポットがある。さらにランドの外周に沿って「レオとライヤの夕日列車」が走っている。
前回までに「アトムの月面旅行」、「レオとライヤのジャングルダンスパーティ」の2つのアトラクションで各1つずつ、さらに「巨大すごろく」で2つのカギを発見した。
だがその後新たな発見はなく、ただ時間だけが過ぎていった。
探索に疲れた隊員たちはめいめいにアトラクションで遊び始めた。
「飛べ! ジャングルの勇者レオ」はサーカスのスターである空飛ぶゾウに乗り空中散歩を楽しむアトラクションである。
「レオとライヤの夕日列車」は「レッツゴー! レオランド」の外周に沿ってランドを1周するクラシックな機関車だ。これは楽しそう! いや、隊長としては謎を解くためにぜひ乗ってみなければならない。ということでぼくも乗ってみた。じつはこの列車はランド内を巡るだけではなく乗車中にある"ミニストーリー"が展開する。そのストーリーをより楽しむためには2両目の真ん中あたりに乗車するのがオススメだ。
列車を降りて戻ってくると、隊員の数が減っている。聞けば閉園前におみやげを買うと言って、おみやげショップ「レッツゴー! バザール」へ走って行ってしまったのだという。
その反対側では別の隊員たちがアトムとジャングル大帝の「巨大トリックアート」の前でスマホを構えて写真を撮っている。ここは平面の絵がカメラで撮ると立体風景に見えるトリックアート(だまし絵)の壁画だ。
面白そうなのでぼくも写真を撮ってみることにした。まずは『鉄腕アトム』の背景でパチリ。未来都市で空中に浮いているような写真が撮れた。
続いて『ジャングル大帝』の背景の前に立つ。こちらはいまにも落ちそうなつり橋の上に立っている写真が撮れる。
と、その時だ。ぼくに向けてスマホを構えていた隊員が背景を指差して言った。
「隊長、カギを見つけました!」
驚いたぼくが振り返ると、そこには大人になったレオとその隣に息子のルネの姿が描かれていた。
これはヨコのカギ1に違いない。つまり1のヨコのマス目に入る文字は「ルネ」だったのである。残るカギはあと2つ!
さらに朗報が続いた。「レッツゴー! バザール」へ買い物に行った隊員から連絡が入ったのだ。
「隊長、カギを見つけました!!」
レッツゴーバザールへ急行すると、店内は手塚キャラクターのグッズで一杯だった。西武園ゆうえんち限定のグッズもあるので、どれを買おうか目移りしてしまう。
ちなみに西武園ゆうえんち内では自販機など一部を除いて日本のお金は使えない。日本円はあらかじめ、ゆうえんち内だけで使える西武園通貨に両替しておく必要があるのだ。だがぼくはあらかじめ300園(せいぶえん)分を両替してあるので心配はない。
どれを買おうかな~と迷っているところへ、連絡をくれた隊員が商品を山盛りに入れたカゴを持って駆け寄ってきた。
その中から隊員が差し出したのは、円筒形の容器に入ったお菓子だった。商品名は「鉄腕アトムチョコインクッキー」。チョコレートが入ったザクザク食感のクッキーで、これも西武園ゆうえんち限定のおみやげだ。
おお! これはまさしくタテのカギ3のチョコインクッキーに違いない!! 容器にはアトム、ウラン、プルートウの絵が描かれている。だが答えは簡単だ。プルートウとアトムの文字はすでにマス目の中に入っているし、タテの3に入る文字の上から2文字目まではすでに埋まっている。つまりタテの3に入る文字は「ウラン」で決まりだ!!
残るカギはついにあと1つとなった。ぼくは大急ぎでおみやげを買いまくり、次の探索へ向かうことにした。
買ったおみやげは以下の通り。すべて西武園ゆうえんちの限定商品である。※カッコ内は日本円に換算した金額
「鉄腕アトムチョコインクッキー」80園(せいぶえん)(960円)
「レオのハガキうちわ」50園(せいぶえん)(600円)
「西武園焼きかま」拾園札と百園札、各20園(せいぶえん)(240円)
「レッツゴー! レオランドメモ帳」40園(せいぶえん)(480円)
「レッツゴー! レオランド肉球グミ」50園(せいぶえん)(600円)
ちなみに今回の虫さんぽ+(プラス)案内人の西武園ゆうえんち マーケティング課長 高橋亜利さんによれば、「レッツゴー! バザール」のおみやげ一番人気は「肉球グミ」だということだ。確かにこれはかわいいし値段も手ごろなので、親しい人に配るのに最適です。
最後のカギとなるヨコのカギ7「二回やすみ」とは何なのか。前回「巨大すごろく」で「二回やすみ」と書かれた絵を見つけたが、そこに描かれていたのはピノコだった。
いやまてよ「二回やすみ」という文字は本当にあのピノコの絵だけなのか!? もしかしたらまだほかにも「二回やすみ」と書かれている絵があるのでは!?
そう思った我々は再び「巨大すごろく」へと走った。「二回やすみ」と書かれた場所を探せ!!
......そして間もなくぼくの目に飛び込んできたのはピノコの絵ではない、もうひとつの「二回やすみ」の絵。そこに描かれていたのは『リボンの騎士』でサファイヤ王子の秘密を暴こうとする悪人・ジュラルミン大公だった。7のヨコのマス目に入る文字は「ジュラルミン」だったのだ!
ようやく全てのマス目を埋めることができた。ついにゴールだ!
いや、まだ1つだけやり残していることがあった。ご記憶だろうか、案内人の高橋さんが去りぎわに言っていた言葉を。確か彼はこう言っていたはずだ。
「最後にひとつだけ......今回の謎解きとは関係ありませんが、「夕陽館」にはぜひ立ち寄ってください」
夕陽館というのは、レオライナーを降りてすぐ目の前の丘の上に建っていた映画館だ。あそこにいったい何があるのだろうか。
我々は丘を降りてきた人を呼び止めて聞いてみた。するとその人はかなり興奮気味にこう答えた。
「これから夕陽館へ行かれるんですか? いやあ、あそこはすごいですよ、ぜひ行かれるべきです! 最初は映画館の中から始まるんです、当たり前ですよね映画館なんですから。
ところがですね、街でキングギドラが暴れ出したっていう情報が入ってきて、私たちは自衛隊の特殊車両に乗って逃げることになるんです......そこにキングギドラがですね......!! いや......この先は言わないほうがいいでしょう......ぜひ楽しんできてください!! ちなみに事前にトイレは済ませておいた方がいいですよ!!」
良くわからないが夕陽館でやっているのはどうやら「ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦」というアトラクションらしい。視界いっぱいに広がる立体的な映像を見ながら座席が上下左右に激しく揺れるシミュレータータイプのアトラクションだ。対象年齢は4歳以上、身長100cm以上。身長130cm未満のお子さんは18歳以上の保護者の方と同乗が必要だ。
我々も何とかその最終回に間に合い、心も体も思いっきり揺さぶられてきた。
その感想は入館前に聞いたのとまったく同じだった。
「いやあ、あそこすごいですよ、ぜひ行かれるべきです! 最初は映画館の中から......」以下略。
こうしてワクワクドキドキの1日を終えた我々は丘を下り最初に降り立ったメインエントランスへ戻ってきた。振り返ると目の前に夕陽館の建物が夕焼けに染まり赤くそびえ立っている。その瞬間、ぼくはこの風景に見覚えがあるような不思議な感覚に襲われた。あれはいつのことだろう。そうだ、ぼくがまだ小学生のころ、両親と弟と一緒に出かけた映画館の帰り道......そうだ、これはまさしくあのときの風景だ!
思えば招待状に導かれてここへやってきた我々は、手塚キャラにまつわる謎を解きながらいつの間にか「レッツゴー! レオランド」と西武園ゆうえんちの全てをめいっぱい楽しんでいた。あの招待状が我々に体験させたかったことはまさにこれだったのだ。
我々は全員が心地よい疲れとともに充実した気持ちで心を満たされながら、ここ西武園ゆうえんちを後にしたのだった。
さて次はいったいどんな招待状が届くのか。次回の虫さんぽ+(プラス)でもぜひご一緒いたしましょう!!
協力/西武園ゆうえんち
黒沢哲哉
1957年東京生まれ。マンガ原作家、フリーライター。
手塚マンガとの出会いは『鉄腕アトム』。以来40数年にわたり昭和のマンガと駄菓子屋おもちゃを収集。昭和レトロ関連の単行本や記事等を多数手がける。手塚治虫ファンクラブ(第1期)会員番号364番
つのがい
静岡県生まれ。漫画を描くこと、読むこととは無縁の生活を送ってきたが、2015年転職を境にペンを握る。
絵の練習としてSNSに載せていた「ブラック・ジャック」のパロディ漫画がきっかけで、2016年手塚プロダクション公式の作画ブレーンとなった。
web:https://www.tsunogai.net/
twitter:http://twitter.com/sunxoxome/
■バックナンバー
虫さんぽ+(プラス)
・大阪編 第2話:大阪・中津の軍需工場跡地で、辛かった戦争時代の想い出を歩く!
・大阪編 第3話:大阪・十三で戦争の悲惨さを残す文化遺産を訪ねる!
・奈良編 第2話:写楽くんの足跡をたどりつつ古代史ミステリーを探る!!
・奈良編 第3話:その時が来なければたどり着けない!? 伝説の神社!!
・洞窟探検編 第1話:盗まれた名画の行方を追ってアトムが向かった場所は!?
・洞窟探検編 第2話:荒涼とした大地で手塚治虫が見たものは!?
・洞窟探検編 第3話:手塚治虫、大洞窟の中を命がけの逃亡!!
・北海道・道南-道東横断編 第1話:標高550メートルの山頂でヒグマに囲まれる!?
・北海道・道南-道東横断編 第2話:北海道東端の駅で子グマとSLの物語に思いを馳せる!!
・北海道・道南-道東横断編 第3話:財宝が隠されている神秘の湖はココだった!!
・ミッドナイト 東京タクシーさんぽ 第1話:早稲田で乗せた老女は幽霊だったのか!?
・ミッドナイト 東京タクシーさんぽ 第2話:杉並から早稲田へ、時限爆弾を追え!?
・ミッドナイト 東京タクシーさんぽ 第3話:ニセ警官はタクシーで庚申塚を目指す!!
・北海道・道東-道央-津軽海峡編 第1話:鉄格子の中から愛を込めて!?
・北海道・道東-道央-津軽海峡編 第2話:北見山地にエゾオオカミの生き様を見た!!
・北海道・道東-道央-津軽海峡編 第3話:海峡の歴史を物語る"あの船"を訪ねる!!
・マイ・ベストさんぽ【東京編】第1話:四ツ谷の下宿はどこにある!?
・マイ・ベストさんぽ【東京編】第2話:幻の地下ホテルを探せ!!
・マイ・ベストさんぽ【東京編】第3話:手塚先生の仕事場へタイムスリップ!!
・マイ・ベストさんぽ【大阪編】第1話:手塚マンガの原点となった町、松屋町を歩く!!
・マイ・ベストさんぽ【大阪編】第2話:手塚少年がアニメと出会った文化施設とは!?
・マイ・ベストさんぽ【大阪編】第3話:手塚少年の夢と空想を育てた幻の科学館!!
・東京・御茶ノ水、神田編 第1話:神田明神でお茶の水博士とともに疫病退散を祈る!!
・東京・御茶ノ水、神田編 第2話:明大通りの坂道でアトムマンホールに出会った!!
・再録・虫さんぽ 第1回:豊島区南長崎 元トキワ荘周辺・その1
・再録・虫さんぽ 第2回:豊島区南長崎 元トキワ荘周辺・その2
・虫さんぽ+(プラス)東京・椎名町、下落合、早稲田編 第1話:失われたはずのあの建物が目の前に......!?
・再録・虫さんぽ 第5回:江戸東京博物館『手塚治虫展』と両国・浅草界隈
・再録・虫さんぽ 第6回:埼玉県飯能市・鉄腕アトム像周辺(前編)
・再録・虫さんぽ 第7回:埼玉県飯能市・鉄腕アトム像周辺(後編)
・虫さんぽ+(プラス)東京・椎名町、下落合、早稲田編 第2話:ブラック・ジャックが終電車で出会った客は...!?
・虫さんぽ+(プラス)東京・椎名町、下落合、早稲田編 第3話:鉄腕アトム、意外なコラボと幻の原画発見の真実とは!?
・虫さんぽ+(プラス)東京・東久留米編 第1話:初夏の舗道で冷たく光るクールなアイツを発見!!
・虫さんぽ+(プラス)東京・東久留米編 第2話:駅前に立つブラック・ジャック像の秘密を探れ!!
・虫さんぽ+(プラス)東京・東久留米編 第3話:手塚治虫が「終の棲家」に選んだ街は...