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虫さんぽ+(プラス)東京・椎名町、下落合、早稲田編 第3話:鉄腕アトム、意外なコラボと幻の原画発見の真実とは!?

2021/05/03

東京・椎名町、下落合、早稲田編 第3話:鉄腕アトム、意外なコラボと幻の原画発見の真実とは!?

写真と文/黒沢哲哉 地図と絵/つのがい

 のこる最後のキーワード「熊」が示すままに、下落合駅から電車に乗った虫さんぽ隊。目指したのは「高田馬場」。アトム誕生の地であり、手塚プロダクションのホームタウンでもあるこの地から、さんぽ隊はさらにあの大学を目指します! 駅前から直行バスが出ている「あの大学」と「熊」の関係やいかに...?

(※今回の虫さんぽ+は緊急事態宣言前に訪ねたものです)


高田馬場駅からバスに乗って向かったのは......!!

 前回、西武新宿線の下落合駅から上り電車に乗ったぼくは、終点までは行かず、次の高田馬場駅で下車した。

 下落合駅でぼくが推理した3つ目のキーワード""の指し示す場所......それは間違いなく"あの大学"だ! ぼくの推測は西武線の電車の中で確信に変わっていた。

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 西武新宿線高田馬場駅の改札口を出たぼくは、迷わず駅前のバス乗り場へと向かった。都営バス「早大正門」行きバスの乗り場だ。そう、次に目指す目的地はこのバスの終点、早稲田大学にあるのだ。

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西武新宿線を高田馬場で下車。3つ目のキーワードの謎を解くための最後の旅がここから始まる

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ある確信を抱いていたぼくは、改札を出て都営バスのバス停へ向かった

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行き先は「早大正門」。そこに果たしてキーワードの答えはあるのだろうか

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バスの車窓の風景は、昔とは大きく変わってしまったが、かつて学生時代に通い詰めた映画館「早稲田松竹」は健在だった

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バスが「早大正門」に到着。冬枯れの冷たい風が顔や手を凍らせる

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早稲田大学のシンボル「大隈講堂」。昭和2年(1927年)に竣工した歴史ある建物で国の重要文化財に指定されている

 バス揺られること数分、終点の「早大正門」に到着した。目の前にそびえたつ金色に輝くレンガ造りの建物は早稲田大学のシンボルとなっている「大隈記念講堂」、略して大隈講堂だ。

 そういえば早稲田大学の前身、東京専門学校を創立した大隈重信侯の名前にも"隈(くま)"の文字が含まれている。招待状の""とは字が違うのだが、ここが招待状の場所で合っているのだろうか。それは間もなく明らかになる。

 ちなみにぼくも数十年前にこの大学の今はなき第二文学部という学部に"5年間"在籍していた。文系の大学は普通は4年で卒業するものだが、ぼくは勉強が大好きだったのだ。この大隈講堂前に立つと青春時代を思い出して懐かしさがこみ上げてくる。

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早稲田大学本部キャンパスの正門。新型コロナでオンライン授業がメインのため大学周辺に学生の姿はほとんどなかった

アトム通貨発祥の地を歩く!

 さて、3つ目のキーワードが示す場所へ向かう前に、せっかくここまで来たのである場所を先に見学することにしよう。早稲田大学本部キャンパスの北側を通る商店街「大隈通り」だ。

 この通りも手塚治虫にゆかりのある場所なのだ。その理由は街灯の柱を見ていくと分かる。街灯の柱に鉄腕アトムのプレートがはめ込まれていて、そこに「アトム通貨発祥の地」と書かれている。

 アトム通貨というのは地域の加盟店で金券として利用できる地域通貨で、2004年の4月7日からスタートした。現在ではここ高田馬場・早稲田地域だけでなく、埼玉県新座市、愛知県春日井市、宮城県女川町などにも広まっている。その始まりの場所がここ大隈通りだったのだ。早稲田を訪れた際にはぜひこの街灯もお見逃しなく。

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sanpo10_tokiwaso-waseda03-09.jpgアトム通貨発祥の地である大隈通りを散策してみた

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街灯の柱には鉄腕アトムの絵が

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おや、アトムと一緒にいるこの熊は何者?

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アトム通貨のポスターを掲げた飲食店

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再び大隈講堂前へ戻ってきた。そこへひとりの男性が現れた......

3人目の案内人登場!!

 再び先ほどの大隈講堂前へ戻ってくると、そこに長身の男性が待っていた。

「虫さんぽ+(プラス)の黒沢さんですね」

 彼はそう口を開いた。そう、彼こそが今回の虫さんぽ+(プラス)3人目の案内人、早稲田大学総務部総務課の中村仁さんなのである。

 中村さんはぼくを大隈講堂のすぐ横にある「Uni.Shop & Cafe 125」へ案内してくれた。

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男性の正体は、今回のさんぽの3人目の案内人、早稲田大学の中村仁さんだった。その中村さんの隣にはまたしてもあの熊のキャラクターが。この熊は早稲田大学のマスコット「ワセダベア」である!

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Uni.Shop & Cafe 125。営業時間:8:3019:30、土日祝日も営業(夏期/年末年始を除く)問い合わせ:03-5291-7491(ショップ)、03-3208-7350(カフェ)

 ここは早稲田大学のオフィシャルショップで、大学に関連するグッズが多数販売されているほか、カフェが併設されていて軽食を食べることもできる。大学の構内だけど一般の方も利用できる。

 店内へ入るとレジ横に並ぶグッズにすぐ目が止まった。鉄腕アトムと学生服を着た熊のキャラクターが共演する絵入りのグッズが山積みになっていたのだ。

 この熊は「ワセダベア」という名前の早稲田大学のマスコットキャラクターである。

 しかしなぜそのワセダベアと鉄腕アトムがグッズで共演しているのか? その疑問に中村さんが答えてくださった。

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Uni.Shop125 のワセダベア×鉄腕アトムコラボグッズコーナー。人気商品はTシャツ、キーホルダー、ハンドタオルだそうである

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早稲田大学総務部総務課の中村仁さん。ワセダベアと鉄腕アトムのコラボを実現させた仕掛人だ!

「ワセダベアは早稲田大学創立125周年記念キャラクターとして2000年の10月に誕生しました。

 創立125周年というのは半端な年に聞こえるかも知れませんが、じつは本学の創設者である大隈重信は「人生125歳説」を唱えていました。「人間は本来、125歳までの寿命を有している。適当なる摂生をもってすれば、この天寿をまっとうできる」というのが人生125歳説です。適切に体力を保つことと同時に、人間の精神の強さと、高い志を持つことが生命の根本であることを訴えました。だから早稲田大学にとって創立125周年はとても意味のある年なのです。

 そこでマスコットキャラクターの公募を行い最終的に選ばれたのがワセダベアでした。ワセダベアをデザインされたのは本学法学部出身で在学時代は漫画研究会に所属されていたマンガ家の弘兼憲史さんです」

ワセダベアとアトムの奇跡のコラボへ!

 おお、ワセダベアはあの弘兼憲史さんがデザインされたんですね! だけど中村さん、まだワセダベアとアトムとの関連が思い浮かびませんが......

2020年にワセダベアが20歳を迎えるので何か記念になることをやろうということで1年ほど前からずっと案を練っていました。話題性のあることで盛り上げたいというのと同時に、何か形の残るものにしたい思いもあって、何がいいかずっと悩んでいたのです。

 そんなときにたまたま手塚プロダクションと仕事をしていた私の友人(早大卒)から「そういえば早稲田ってアトムとコラボとかしないの?」というメールが来たんです。

 私にとっては思いも寄らない提案でしたが、やれるとしたらワセダベアとがいいなぁ...と思い、よくよく調べてみると、ワセダベアは2000年生まれで鉄腕アトムは2003年高田馬場生まれ(という設定)と実はお互いの年齢も出生地も近い(笑)!しかも手塚プロダクションの本社は高田馬場にあって地域とも縁が深いし、アトム通貨などですでに地元との交流もある。さらに世界的に有名なアトムは留学生の多い早稲田にもなじみやすいかも...。これはアリかも! と思い、2019年4月に手塚プロダクションにコラボしたいというお話をしました。そこからトントン拍子に進みまして、2020年4月からワセダベアとアトムのコラボグッズ販売を開始させていただきました。

 コラボグッズは現在、Uni.Shop & Cafe 125 と早稲田大学生協の店頭、それから各ショップともオンラインショップでも購入できます。Uni.Shop 125 と早稲田大学生協はそれぞれ独自に商品を企画しており、店頭ではそれぞれ別の商品が販売されています」

 中村さん、夢のコラボ実現の経緯が良く分かりました!

・ワセダベア×鉄腕アトムコラボグッズ通販はこちら早稲田大学オフィシャルグッズ オンラインショップ WASEDA-SHOP

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ワセダベア20周年を記念したポスター。ワセダベアは学生服以外に様々なコスプレもする

キャンパス内のもうひとつのグッズ売り場へ!!

 Uni.Shop & Cafe 125 で中村さんから話をうかがい、ワセダベアとアトムのコラボグッズをいくつか買った後、続いてもうひとつのグッズの販売場所である早稲田大学生協ライフセンターに案内していただいた。

 早稲田大学生協ライフセンターは大学キャンパスのいちばん奥、17号館の1階にある。こちらにもコラボグッズ専用のコーナーが設けられていて、魅力的な商品が数多く並んでおり、そちらでもまたいろいろと買い込んでしまった。中村さん、ありがとうございました!!

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Uni.Shop & Cafe 125 を出て大学のキャンパス内を歩き、生協のお店へ向かう。途中で大隈重信像にごあいさつ

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早稲田大学生協ライフセンターのある17号館は体育館になっていて、剣道場や柔道場が入っている

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早稲田大学生協ライフセンター。営業時間:平日10:00-19:00、土曜10:00-17:00、休業日:日、祝日、問い合わせ:03-3202-4019

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早稲田大学生協ライフセンターのワセダベア×鉄腕アトムコラボグッズコーナー。早稲田カラーであるエンジ色のグッズが多い

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缶バッジのガチャガチャは1回300円。全11種類+シークレット

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中村さんにシークレット缶バッジの画像を送っていただいた。欲しい!!

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フェイスタオル(2,200税込み)もなかなかいいデザインだ

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人気商品だというメモ帳。1枚1枚に校旗を持ったアトムの絵が印刷されている

◎57年前のアトムと早稲田大学のコラボイラスト発見!!

 ところで、このコラボの話が進んでいる最中に、じつは手塚プロダクションでうれしい発見があったという。それは、ここに紹介した2枚のアトムの絵のうちの左の絵。アトム、ウラン、ヒゲオヤジの3人が早稲田大学の校旗を掲げているこのイラストが新たに見つかったのだ。

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手塚先生が1964年に描いたアトムと早稲田大学のコラボイラスト。左の絵が今回新たに発見されたものだ。この2点の絵はそれぞれポストカードとしてUni.Shop125で販売中(各100税込み)

 右のお茶の水博士が大隈重信像のコスプレをしているイラストは、『手塚治虫のすべて』(1981年大都社刊)にも収録されていて、過去に早稲田を歩いた虫さんぽでも紹介している。

・虫さんぽ 24回:音羽~早稲田 手塚マンガの出版と収集、その歴史を歩く!

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『手塚治虫のすべて』(1981年大都社刊)に、手塚先生が早大切手研究会のために描き下ろしたポストカードのイラストとして紹介されたもの

 しかし左の校旗のイラストは過去の出版物では一度も紹介されていないのだ。こうして2枚の絵を並べてみると、右下に入った「虫」のサインや絵のバランスなどから、恐らくこの2枚は同じ時に描かれたものだと思われる。

 この新たなイラスト発見の経緯を手塚プロダクションに聞いたところ、別の業務中にたまたま見つかったということで、本当に偶然だったようである。

 ということでこの2枚の絵も今回のコラボグッズに加わり、現在はポストカードやメモ帳等に使用されている。

 平和の祭典、東京オリンピックが開かれた1964年、手塚治虫はアトムが早稲田大学を応援するこの2枚のイラストを描いた。それから57年後の2021年、2度目の東京オリンピックイヤーにアトムが再び早稲田大学とコラボしているのを見ると、じつに不思議な縁を感じざるを得ない。

 もしかして手塚治虫も今回のコラボが楽しそうで自分も加わりたくなったのかも知れません。

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Uni.Shop125 のレジ前には、校旗を持ったイラストのポスターがあった

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Uni.Shop125での戦利品。上2点がハンドタオル(各500円)、下2点がキーホルダー(各800円)すべて税込み

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そしてこちらはTシャツ(3,200税込み)! コレクションではなく夏になったらバッチリ着るつもり

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早稲田大学生協での戦利品。左上から時計回りに巾着(880円)、メモ帳(330円)、アクリルキーホルダー(550円)、定規(390円)各税込み

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今回のさんぽは東京メトロ東西線早稲田駅で解散。ではまた次回!!

そして旅はまだ続く......!!

 こうして謎の招待状に書かれていた最後のキーワードの謎も解けた。3つ目のキーワード""が示していたのはワセダベアだったのである。

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 さて、次なる招待状は我々をどこへ導いてくれるのでしょうか。次回の虫さんぽ+(プラス)でもぜひ皆さんご一緒いたしましょう。

協力/早稲田大学Uni.Shop & Cafe 125早稲田大学生活協同組合

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黒沢哲哉

1957年東京生まれ。マンガ原作家、フリーライター。

手塚マンガとの出会いは『鉄腕アトム』。以来40数年にわたり昭和のマンガと駄菓子屋おもちゃを収集。昭和レトロ関連の単行本や記事等を多数手がける。手塚治虫ファンクラブ(第1期)会員番号364番


sanpo_tsunogai.jpgつのがい
静岡県生まれ。漫画を描くこと、読むこととは無縁の生活を送ってきたが、2015年転職を境にペンを握る。
絵の練習としてSNSに載せていた「ブラック・ジャック」のパロディ漫画がきっかけで、2016年手塚プロダクション公式の作画ブレーンとなった。
web:https://www.tsunogai.net/
twitter:http://twitter.com/sunxoxome/


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