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虫ん坊 2015年4月号:手塚マンガあの日あの時 第39回:人か獣か!? 手塚マンガの人外ヒロイン&ヒーローを読む!!

虫ん坊 2015年4月号:手塚マンガあの日あの時 第39回:人か獣か!? 手塚マンガの人外ヒロイン&ヒーローを読む!!

 手塚治虫のマンガに出てくるキャラクターは人間だけではない。中でも特に目立つのがヒトとケモノの中間的なキャラたちだ。動物型の宇宙人、悪魔の科学者によって動物に改造された犯罪者、ヒトに化ける妖怪変化などなど……。近ごろ、そんなあやかしの人獣たちが活躍するマンガやアニメが“人外もの”と呼ばれて人気らしい。だったら手塚マンガの“人外もの”も読んでみたらどうですか? ということで今回は手塚マンガの人外ヒロイン&ヒーロー作品を振り返ります!!



◎足の不自由な少女の夢

虫ん坊 2015年4月号:手塚マンガあの日あの時 第39回:人か獣か!? 手塚マンガの人外ヒロイン&ヒーローを読む!!

『ブラック・ジャック』第5話「人間鳥」より。人力飛行コンクールの会場に突如飛来した翼を持った人間の少女。驚いてその様子を見上げているのは手塚マンガの人気キャラクターを始め、ほかのマンガ家のキャラクターの姿も見える

 まずはこちらの画像をご覧いただきたい。これは『ブラック・ジャック』の連載第5話「人間鳥」から引用したものだ。人力飛行コンクールの会場に突如舞い降りた翼を持った少女。じつは彼女の翼はブラック・ジャックが与えたものだった。生まれつき足が不自由な彼女の夢をブラック・ジャックが聞き入れ手術をほどこしたのである。
 足かけ10年にわたる連載の中でイルカからミイラまで様々な患者を治療してきたブラック・ジャックだが、人間に翼をくっつけてしまうというのは、かなりぶっ飛んだ発想のエピソードと言っていいだろう。


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虫ん坊 2015年4月号:手塚マンガあの日あの時 第39回:人か獣か!? 手塚マンガの人外ヒロイン&ヒーローを読む!!

同じく『ブラック・ジャック』「人間鳥」より。生まれつき足が不自由だった彼女に手術で翼を付けたのは、何とブラック・ジャックだった。だが翼のある彼女を見世物に利用しようと企む人間が現れるなど、翼を持ったことで彼女は決して幸福にはなれなかった。そこでブラック・ジャックが決断した再手術とは……!? 画像は3点とも講談社版手塚治虫漫画全集『ブラック・ジャック』第19巻より



◎人外に萌える今どきのマンガファン

 ところで最近、こうした人間以外の“何か”をメインキャラクターとした“人外もの”と呼ばれるマンガやアニメが人気となっているのをご存知だろうか。
 例えば『月刊コミックガーデン』に連載されている『魔法使いの嫁』(ヤマザキコレ)はヤギのような異様な頭部を持った魔法使いが人間の少女を嫁にするというお話である。
 また『ミステリマガジン』で連載中の高橋陽介のマンガはその名もズバリ『人外な彼女』という作品で、吸血少女、魔女っ子など毎回違ったタイプの人外少女が登場するお話だ。
 鉄腕アトム誕生以前のドラマを描くマンガ『アトム・ザ・ビギニング』(コンセプトワークス/ゆうきまさみ、漫画/カサハラテツロー)が連載されている雑誌『月刊ヒーローズ』では、村田真哉原作、隅田かずあさ作画の『キリングバイツ』という作品が人気だ。
 これは人間の頭脳と獣の牙を併せ持つという“獣人”の少女・ラーテルが活躍する物語で、獣人対獣人の激しい牙闘(キリングバイツ)が描かれる合間に、ラーテルのワイルドでセクシーな魅力が随所に織り込まれているのが人気の理由だろう。


◎現代社会のすぐ隣にある人外の世界!?

“人外(じんがい)”を広辞苑で引くと「人間の住む世界の外。出家の境涯。」とあり、これを“にんがい”と読むと「人倫にはずれていること。また、そういう人。ひとでなし。」という意味もあるそうだ。
 小説では小栗虫太郎が戦前の1939年から40年にかけて書いた『人外魔境』という秘境を舞台にした短編の連作小説があり、“人外”という言葉自体は決して最近出来たものではない。
 だけど今のマンガ・アニメファンが言う“人外”はこれらとはまったく意味が異なっている。現代の“人外”は、スク水(スクール水着)やニーソ(ニーソックス)などと同様“萌え”属性のひとつなのである。


◎手塚マンガは人外の宝庫!

 ここで再び手塚マンガに戻ろう。“人外”という切り口で手塚マンガを振り返ってみると、なんと! まるで昨今のブームを先取りしていたかのような人外萌え〜的な(?)作品があるわあるわ!! それっぽいテーマの作品タイトルを並べただけでも、ものすごい数になる。
 例えば1959年から60年にかけて『週刊少年サンデー』に連載された『0マン』は、リスを先祖として人類とは別進化を遂げた0マン族の少年・リッキーを主人公としたお話だ。リッキーは見た目はごく普通の人間の少年だけど、0マン族はもふもふの大きなシッポを持っていて、もしもリッキーからこの巨大なしっぽを顔にギューッと押し付けられたら、ぼくは萌え死んでしまうことは確実だ。


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講談社版手塚治虫漫画全集『0マン』より。人類がサルからヒトへと進化を続けているころ、それとは隔絶された世界でリスからヒトへと独自の進化を遂げている0マン族という種族がいた。異種族同士の出会いはやがて大きな不幸を生むことになるが……


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0マン族は人間社会ではシッポを服の中に隠して生活している。このもふもふのシッポはそうとうな弾力性と膨張力を持っているらしい


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0マン族にとっては種族の証でもある大事なシッポだが、主人公リッキーは、あるアクシデントでそのシッポを失ってしまった。そんなリッキーに母親は毛糸で作った新しいシッポをプレゼントする


◎獣や鳥が人類文明に疑問を投げかける!!

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講談社版手塚治虫漫画全集『W3』第3巻の表紙として手塚が描き下ろしたのは、本編には登場しないボッコ隊長がギターをつまびいているオフショットの絵だった

 同じく『週刊少年サンデー』に1965年から66年にかけて連載された『W3(ワンダースリー)』は、宇宙から地球へ派遣された3人の宇宙人調査官が主人公の物語。3人はそれぞれ地球の動物に姿を変えて潜入調査を開始するが、女隊長のボッコが変身したのはウサギだった。このウサギ姿のボッコ隊長が何ともなまめかしく、これぞまさに現代の“人外ヒロイン”に通じる無垢でセクシーなキャラクターだったのだ。
 また1971年から75年にかけて『SFマガジン』に連載された『鳥人大系』は、映画『猿の惑星』のように知能を持った鳥類が進化し、次第に人間社会を侵食していくという大人向けの風刺童話であるが、ここでは鳥類の女性と人間の男が交わったり、その逆が描かれたりという背徳的な描写もあって、現代の人外ファンにも訴えかけるポイントが多々あるに違いない。


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『W3』より。ウサギの姿になっても仕草がいちいち少女らしくて愛らしいボッコ隊長。ぼくのお気に入りのシーンをチョイスしてみた


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『鳥人大系』より。鳥人の支配する世界で家畜のように飼育されて生きてきたマグダラという女。彼女は自分の命を救ってくれた鳥人のポロロさえも犯そうとする


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同じく『鳥人大系』より。失われた人類の知恵や知識をなぜか持っている男・山猫。鳥人たちはこの男を懐柔するため、彼の元へセクシーな女鳥人を送りこみ、ハニートラップを仕掛る!


◎現代社会で人外がもてはやされる理由(わけ)

 それにしてもそもそもなぜ今“人外”がブームなのか。これはぼくのまったくの推論だけど、男がどんどん草食化して逆に女が肉食化してきていることとか、性の多様化とか、結婚観の変化とか、男女に対する旧来の価値観がどんどんと変わってゆく中で、それに異を唱えたりするとたちまちバッシングを受けてしまう。そんなこんなで一部の若者たちの間に「人間の異性はもういいや」的な疲労がたまってきているんじゃないかと思うのだ。


◎かつて猫耳少女が流行した時代があった

 ただし、このブームも見方を変えれば、たまたま誰かが“人外”という言葉を使い、それが広まって、そこにカテゴライズされる作品が増えたからブームだと言われているだけで、じつは“人外”的なマンガやアニメや小説の類は手塚マンガ以外にも昔から数多くあったのだ。
 例えば猫耳少女の元祖と言われる大島弓子の『綿の国星』が雑誌『LaLa』に連載されたのは1978年から87年にかけてのことであり、1984年には虫プロの製作で劇場アニメーション化もされている。
 このころは“萌え〜”という言葉すらもなかったが、まだ晴海で開催されていたころのコミックマーケット会場をぼくが訪れたときには、猫耳を付けた女の子や大きいお兄さんたちが、まさに「萌え〜」という表情をして闊歩していたのである。


◎手塚の人外もの作品に共通するものは!?

 ということで、決して手塚マンガが“人外”ブームの元祖というわけでもないのだが、じゃあ逆に言うと手塚はいったいどんな意味を込めてこんなにもたくさんの“人外”的マンガを世に送りだしていたのかという疑問が湧いてくる。
 その答えとも言える言葉が講談社版手塚治虫漫画全集のあとがきにある。以下にその文章を引用しよう。
「ぼくは“変身もの”が大好きです。
 なぜ好きかというと、ぼくは、つねに動いているものが好きなのです。物体は、動くと形が変わります。いつまでも、静かだったり、止まっているものを見ると、ぼくは、イライラします。動いて、どんどん形が変わっていくと、ああ、生きているんだな、とぼくは認め、安心するのです。(中略)
 こういうわけで“変身”は、ぼくのマンガの大きなひとつの要素です。調べてごらんになるとおわかりですが、どのマンガにも、どこかに、変身──姿を変えたもの──のテーマがかくれています。」(講談社版手塚治虫漫画全集『メタモルフォーゼ』あとがきより)。



◎手塚の変身願望がストレートに出た短編群!

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「メタモルフォーゼシリーズ」第1話『ザムザ復活』雑誌掲載時のトビラ絵。「メタモルフォーゼ」シリーズは1976年から77年にかけて『月刊少年マガジン』に全6話が不定期掲載された。※画像は『別冊太陽 手塚治虫マンガ大全』(平凡社刊)より引用

 そうなのだ。手塚の作品に出てくる“人外”たちは、じつは何らかの理由で人がケモノに、あるいはその逆に変身した結果、人と異形の物との中間的存在となってしまった者たちが非常に多いのである。
 手塚がこのあとがきを寄せた『メタモルフォーゼ』シリーズは、まさに手塚の変身願望が全開となった作品群だった。
 シリーズ第1話「ザムザ復活」は、凶悪犯罪者たちが死刑宣告を受ける代わりにケモノや虫に改造されてしまうという近未来の世界を描いている。主人公の青年ザムザはこの計画を推進しているマッドサイエンティストの助手である。だがザムザはライオンに改造された女性エレーナに恋をしてしまったのだった。
 また第5話「ウォビット」は、ウワサを頼りに人狼ウェアウルフを追い求めて旅をする男を描いた怪奇仕立ての物語だった。主役のサングラスの男、ロックベルト・トランシルバートを演じたのは手塚の人外マンガの代表作ともいえる『バンパイヤ』で悪役を好演したロックだった。
 しかし彼の前に現れたのは人狼ではなく、もっと恐ろしい怪物だった──!!


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『ザムザ復活』より。科学者の助手としてメタモルフォーゼセンターで働くザムザは、やむなく人殺しをしたことでライオンに改造されてしまったエレーナに心を寄せる。だがそれはエレーナの不幸を早めるだけだった……。講談社版手塚治虫漫画全集では『メタモルフォーゼ』に収録


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「メタモルフォーゼシリーズ」第5話『ウォビット』雑誌掲載時のトビラ絵。このエピソードは1976年11月号と12月号の2回に分けて掲載され、本シリーズ中でも特に力の入った力作だった。※画像は『別冊太陽 手塚治虫マンガ大全』(平凡社刊)より引用

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『ウォビット』より。人浪を追い求めているはずのロックベルト男爵の手が、まるでオオカミのような手に……!? これはいったい何を意味しているのだろうか。この後、物語はさらに予想も付かない展開へと発展してゆくことになる。講談社版手塚治虫漫画全集では『メタモルフォーゼ』に収録


◎獣に化けるセクシーな物の怪たち

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『百物語』を収録した講談社版手塚治虫漫画全集『ライオンブックス』第5巻の表紙には薄布をまとったスダマの姿が描かれている。ちなみにスダマは「魑魅(ちみ)」の別の読み方だ。「魑魅」について広辞苑には「(「魑」は虎の形をした山神、「魅」は猪頭人形の沢神) 山林の異気から生ずるという怪物。山の神。すだま。」とある

 じつは手塚は1970年代から80年代にかけて、この『メタモルフォーゼ』シリーズ以外にも、こうした変身ものの短編=結果的に現在の人外ブームを先取りしたような読み切り作品を数多く発表している。
 1971年に『週刊少年ジャンプ』に2回に分けて読み切り掲載された『百物語』はゲーテの『ファウスト』を下敷きとした時代劇だった。切腹を命じられた下級武士・一塁半里の目の前に現れたスダマと名乗る女悪魔。彼女は半里の魂をもらう代わりに3つの願いを叶えてやると言う。
 物語はこうして『ファウスト』になぞらえて進むんだけど、この作品の見所は何と言ってもスダマを始めとするエロティックな人外ヒロインたちの化かし化かされの変化合戦にあった。
 『さらばアーリィ』(1981年)は、タクラマカン砂漠の奥地で青年がチーターのような耳を持った野人の女性・アーリィに出会うという物語。
 同じく1981年発表の『グロテスクへの招待』は好きになった生き物と同化してその姿を変える不気味な力を持った少女のお話であった。


虫ん坊 2015年4月号:手塚マンガあの日あの時 第39回:人か獣か!? 手塚マンガの人外ヒロイン&ヒーローを読む!!

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『百物語』より。むく犬の姿で一塁半里の前に現れたスダマは、その場で魑魅の正体を現わした!! 変身途中の人外的な描写が何ともなまめかしい


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『百物語』より。不破臼人と改名し新たな人生を歩み始めた塁半里。彼ががひと目ぼれしたのが玉藻前(たまものまえ)という名の九尾の狐だった。ひと目見て、こいつはヤバい女だと分かるが、分かっちゃいてもこういう女性に惹かれてしまうのもまた男なのかも知れない。こんなところで俺は何を言ってるんだろうか


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『百物語』より。今まさに臼人の精気を吸い取らんと全裸で臼人に覆い被さる玉藻前。性の根源に潜む母性を浮き彫りにした悪夢的描写が素晴らしい!!



◎新たな時代へ脱皮するための“変身”

 この時期、手塚の“変身”願望が込められた短編作品が数多く見られるのは、手塚自身が新しい時代のマンガ界に向けて脱皮し、変身をはかって再び飛び立とうとしていたからに他ならないだろう。
 手塚は作品の作り方に行き詰まったとき、しばしば原点へと立ち返る。そしてその原点からもう一度、新たな道を探って歩き始めるのだ。それがこの時は“変身”だったのである。


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『さらばアーリィ』雑誌掲載時のトビラ絵。砂漠の真っ直中で主人公が出会ったケモノ耳と毛皮をまとった美女アーリィ。コスプレ的コスチュームの彼女が砂漠のど真ん中にいた理由は果たして……!? ※画像は『別冊太陽 手塚治虫マンガ大全』(平凡社刊)より引用

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『さらばアーリィ』より。アーリィは人間の言葉は話さず、その仕草もまったくのケモノである。講談社版手塚治虫漫画全集では『タイガーブックス』第7巻に収録



◎手塚の人外マンガから見えてくる現代

虫ん坊 2015年4月号:手塚マンガあの日あの時 第39回:人か獣か!? 手塚マンガの人外ヒロイン&ヒーローを読む!!

『グロテスクへの招待』雑誌掲載時のトビラ絵。タイトルも奇抜だけど2色カラー印刷のこの表紙のインパクトも相当強烈だ。しかも話の内容がまったく想像できない。※画像は『別冊太陽 手塚治虫マンガ大全』(平凡社刊)より引用

 自分が自分でしかないという絶対的価値観を捨てたとき、人は果たして幸福になれるのか、それとも不幸になってしまうのか。
 手塚が生涯をかけて描き続けた、こうした変身願望を形にした作品群を読むとき、21世紀の現代に生きる若者たちが“人外”に憧れるその思いの正体──もしかしたらそれがほんのちょっぴり垣間見えてくるかも知れません。
 ではまた、次回のコラムにもぜひお付き合いください!!


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『グロテスクへの招待』より。物語は謎の少女ネリを中心として進んでいく。会うたびにその姿を変えるネリ。彼女の体にいったい何が起きているのだろうか!? 講談社版手塚治虫漫画全集では『タイガーブックス』第7巻に収録



黒沢哲哉
 1957年東京生まれ。マンガ原作家、フリーライター。手塚マンガとの出合いは『鉄腕アトム』。以来40数年にわたり昭和のマンガと駄菓子屋おもちゃを収集。昭和レトロ関連の単行本や記事等を多数手がける。手塚治虫ファンクラブ(第1期)会員番号364番


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