ぼくらは欲望のままに物質の豊かさを求めて、わき目もふらず突っ走ってきましたが、いまがここらで立ち止まって周りを見渡す最後のチャンスではないかと思います。
(『ガラスの地球を救え』より)
最先端の科学を手にする、ということは「力」を手にする、ということです。
そして人以上の「力」を手にした時、そこに「慢心」が生まれ、「人より強い=人より偉い」という 間違った考えに支配されがちです。
力を支配するために使うのではなく、弱い者を支えるために使おうとする「心」の発展が進んだら、その時、科学の発展を本当の意味での「進歩」と言えるようになるのかもしれません。
自然への畏怖をなくし、傲慢になった人類には必ずしっぺ返しがくると思います。
(『ガラスの地球を救え』より)
科学とは本来、人間を幸福にするための技術です。
なのに、いつの間にか科学の発展は人間のしあわせを置き去りにしてしまいました。
新しい命をガラス容器の中で作り出そうとしているこの場面。
ここには科学万能が生命の尊厳など二の次にしてしまう恐怖があります。
科学が「人類のしあわせ」ではなく、「科学者たちのためだけのしあわせ」を追求しはじめたとき、地球は破滅の口を開くのかもしれません。
そこへと誘う悪魔はいつも、「科学」と向かい合う人の頭の中に潜んでいます。
コンピュータの利用度がますます増大して、人間は生産や頭脳労働から解放される、というより、追放されるか、もしくはコンピュータに管理される奴隷のような存在になるかもしれない。
そうなれば、ロボットは人間、つまりあなた自身のことになるかもしれませんよ。
(アンドロイド・『鉄腕アトムの未来学』 週刊読売掲載エッセイより)
ペット用ロボットがすでに発売されていますね。
お手伝いロボットももうすぐ市販されるそうです。
となると、次に登場するのは教育ロボットと育児ロボットかもしれません。
そして、そういうロボットがあれば、「塾通いの必要はなくなり、世界中どこにいても同じ内容の教育を受けらます」、「これで女性も育児から解放され、充実した自分自身の生活を守れます」と宣伝されることでしょう。
そんな科学の進歩をあなたは歓迎しますか?
全自動洗濯機があるのに、洗濯板を使う必要はない。 それと同じことだよ。
そんな声も聞こえて来ます。
けれど、子供を育てるということは、親としての自分自身も一緒に育てて行くということでもあるはずです。
子育てに失敗したり、大好きな先生を失望させたり、 そんな中から育まれて行く「何か大切なもの」を 最先端科学は奪って行く危険も はらんでいるのです。