講談社 週刊少年マガジン 表紙用イラスト 1977年
三つ目族の子孫で不思議な力を持つ少年・写楽保介が、古代史にまつわる難事件に立ち向かう、ミステリータッチのSFです。
中学2年生の写楽保介は、いつも額に大きなバンソウコウを貼っている、まるで幼い子どものように純真な少年です。ところが、ひとたびバンソウコウがはがれると、その下から第三の目があらわれて、たちまち、恐ろしい超能力を発揮する悪魔のような三つ目人になるのです。
写楽保介は、クラスメートの男まさりな女の子・和登千代子とともに、古代遺跡や財宝にからむ謎に次々と巻きこまれていきます。
1974/07/07-1978/03/19 「週刊少年マガジン」(講談社) 連載
月一回の読切りの掲載から出発し、人気を呼んで毎週連載となった作品です。
『W3』の連載が中断してからしばらく疎遠になっていた「週刊少年マガジン」への久し振りの作品掲載を企画したのは、『W3』のごたごたの際に手塚担当だった宮原照夫氏。劇画偏重の当時の「マガジン」にキャラクターの魅力や漫画らしいロマンあふれる設定で読ませるマンガを、というリクエストに、世界の古代遺跡のミステリーと、可愛らしいが見るからに奇妙な格好の写楽というキャラクターで答えました。
この作品によって講談社とのつながりが復活し、全400巻を数える手塚治虫漫画全集の刊行が行われることになります。
講談社 週刊少年マガジン 表紙用カット 1975年
手塚治虫が19年ぶりに「週刊少年マガジン」に連載した作品で、同じ時期に「週刊少年チャンピオン」に連載していた『ブラック・ジャック』とともに、70年代を代表する傑作です。
最初は、月1回の読み切りとして掲載されましたが、その後、毎週連載となりました。当時の「週刊少年マガジン」は、「おれは鉄兵」(ちばてつや)や「野球狂の詩」(水島新司)など劇画路線が中心だったため、手塚マンガの味わいはひじょうに新鮮に映りました。また、写楽保介の魅力的なキャラクターのおかげで、少年雑誌の連載でありながら、多くの女性読者の心をつかんだという点も『ブラック・ジャック』と共通しています。
写楽保介
額に第三の目を持ち、かつて高い知能と文明を誇ったが滅ぼされた「三つ目族」の生き残りの少年。日本の中学校に通っている。普段は第三の目をバンソウコウで隠しており、その間は幼児のような性格。だが、バンソウコウをはがすと三つ目族本来の知能が覚醒し、攻撃的な性格になり、超能力も使えるようになる。二つ目の人間文明を敵視しており、世界征服をたくらんでいる。
>キャラクター/写楽保介
写楽保介
和登千代子
写楽のガールフレンド。気が強く、空手の名手。お寺の娘で、厳しく育てられている。いじめられがちな写楽の唯一の味方。三つ目になった写楽に好意を持っているが、彼の引き起こす事件に巻き込まれがち。
>キャラクター/和登さん
和登千代子
犬持医師
ヒゲオヤジ
写楽の育ての親で、医師。ある夜、なぞの女性に赤ん坊だった写楽を託された。写楽を育てていくにつれて、異常に高い知能と恐ろしい性格に気づき、普段は第三の目をばんそうこうでふさぐことを決意する。第三の目の能力を危険視ししており、外科手術に踏み切ろうともした。
ラーメン屋・来々軒のオヤジ。剣持医師とは友達で、一時期写楽を預かる。江戸っ子気質でがらっぱちだが、写楽には同情的。
>キャラクター/ヒゲオヤジ
文福
須武田博士
ある日突然写楽を訪ねてきた謎の男。ボロボロの学帽のようなものをかぶっているが、それを取るとものすごい量の髪の毛が飛び出す。悪巧みが趣味のような男で、三つ目となった写楽の知力と超能力が目当て。いつも妙なカラスを連れている。
考古学者。犬持医師とも知り合いで、三つ目となった写楽の古代文字を読む能力をたびたび利用している。
講談社 週刊少年マガジン 連載時 扉絵 1977年
(前略)
「三つ目族というのは、ほんとうにあるんですか?」
「あるはずがないでしょう。三つ目族の先史文明なんて、でたらめですよ。SF的といいますか、いろんなもっともらしい資料をかき集めて、そこから空想したのですよ。
だいたいインドとか東南アジアなどに、ひたいにたてに割れた第三の目を持った偶像が多いでしょう。あれから発想したんです。それをいつもばんそうこうではってかくしているのは、マスクにアクセントをつけるためです。
写楽の顔かたちは、『バッグズ=バニイ』という、うさぎの漫画シリーズにわき役で登場する、ほら、エルマーというちびで舌たらずの教授がいるでしょう、あれがヒントです。もっとも、この顔にきまるまでには、ずいぶんいろんな顔をかいてみましたがね。」
(後略)
(講談社刊 手塚治虫漫画全集『三つ目がとおる』13巻 あとがきより抜粋)
講談社 週刊少年マガジン 連載時 扉絵 1977年
講談社 週刊少年マガジン「怪植物ボルボック」扉絵 1975年