科学の進歩は、 本来人類に幸福をもたらすはずだったものです。
ところが、いまでは地球を痛めつける悪い奴になってしまった。
かつて荒唐無稽だと笑われたこともあるぼくのマンガどころの騒ぎではおさまらない。
(『ガラスの地球を救え』より)
閉ざされた人工の世界でしか、生きることが出来なかった、 未来の子どもたち。
この悲しい物語は、ただの「物語」だと、いま、言えない現実があります。進み行く環境汚染。
危険な食品添加物、そして世界のどこかで続けられている核実験。
世界はこのまま「濁った空気の底」に沈んでしまうのでしょうか・・・
(人間は)残忍でウソツキで、嫉妬深く、他人を信用せず、浮気者で派手好きで、同じ仲間なのに虐殺し合う──醜い動物です。
しかし、それでもなお、やはり、ぼくは人間がいとおしい。
生きる物すべてがいとおしい。
(『ガラスの地球を救え』より)
大量虐殺、人種偏見、征服欲・・・数々の映画やマンガの中でヒットラーはそんなイメージのシンボルとして描かれてきました。
けれどヒットラーだけが特別な怪物だったわけではありません。
誰の心の中にも「ヒットラー」という名の闇は潜んでいるのです。
自分の欲望や信念が他人の命よりも大事だと思いはじめたら、それがあなたの中の「ヒットラー」が目覚めた、ということかもしれません。
そんな自分自身の「闇」に見て見ぬ振りをするのではなく、しっかりと見据えて克服することで豊かで平和な世界が開かれて行くのでしょう。
人間を模倣して人間のような鳥ができてしまえば行きつく所は破滅のみ !
(『鳥人大系』より)
何故、人間の真似をすれば破滅への道を進むしかなくなるのか。
それは人間がほかの動植物を、あるいは地球という星そのものを我が物だとして「支配」しようと考える種だからです。
ほかの物を支配しようとしたとき、そこには抑圧された者たちの悲しみと怒りが生まれてしまいます。
悲しみや怒りや絶望を産み落とさずにはいられないシステムが長続きするはずはありませんね。
手塚治虫の目はそんな風に「人間という社会」を見つめています。