ただ一つ、これだけは断じて殺されても翻せない 主義がある。
それは戦争はご免だということだ。
(『手塚治虫エッセイ集』より)
戦争というのは、兵隊が戦って死んでゆく、という単純なものではありません。
歴史の上で何回も戦争は繰り返され、そのたびに多くの子どもたちが犠牲になってきました。
いまも世界中で沢山の子どもたちが、大人たちの争いの中で傷つき、手足を奪われ、両親や兄弟と引き離され、命も未来も踏みにじられています。
その現実から目を逸らさないこと。
「関係ないじゃん」とそっぽを向かないこと。
平和な世界を望むなら、まずそこからはじめなければなりません。
ぼくたちは間違った道に踏みこんできたのかもしれないが、あの罪のないたくさんの子どもたちを思うとき、
とても人類の未来をあきらめて放棄することはできません。
(『ガラスの地球を救え』より)
震えながら、悲鳴を懸命に噛み殺しながら、子供たちは爆撃機が通り過ぎて行くのを待っています。
狭く暗い防空壕の中で身を寄せ合う子供たち。
もし宇宙から見下ろしたら、いま地球に生きているすべての生物が、この防空壕の中の子供たちと同じように見えるのかもしれません。
圧倒的な暴力と狂気が暴れまわる世界の中で、なんとかそれが通りすぎるまで生き永らえていたいと身を縮めている。
それがわたしの、あなたの姿なのかもしれません。
自国の民を平気で弾圧している悪らつな権力者、 政治家も、問われれば、涼しい顔で“緑は大切だ、動物を保護しよう、生命は大切にしよう”と言ってのける。
でも、ぼくがもっと悲しく思うのは、権力者ばかりでなく、僕らのような普通の市民が案外こんな状況を支えてしまっているような気がするからなのです。
(『ガラスの地球を救え』より)
爆弾の雨が降り注ぐ中、敵も味方も全滅だと知って、初めて世界から戦争がなくなった、という場面です。
つまり人間が全滅しない限りこの地上で起こる戦争は終わらない。
そんな悲しみと憤りがこの場面には溢れています。
自分たちを滅ぼさなければ戦争という問題解決手段を捨て去ることが出来ない。
本当に人間はそれほど愚かな生き物なのでしょうか。