虫ん坊

手塚治虫生誕90周年企画 スペシャルインタビュー第9回 さかなクン【後編】

2019/09/20

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さかなクン。所属する株式会社アナン・インターナショナルの事務所にて。

ギョギョギョ! 手塚治虫90周年企画スペシャルインタビュー第10回目のゲストは、さかなクンが登場!

"マンガの神様"と呼ばれ、自身のマンガ作品を通して、生涯、命の尊さや人間賛歌を描いた手塚治虫。

さかなクンも "お魚の第一人者"としてTVや雑誌、講演会と様々なメディアで活躍し、大好きなお魚についてのお話を通して、命の尊さや感動することの素晴らしさを伝え続けています。また、イラストレーターとしても、表情豊かでイキイキとしたタッチを持ち味に、現在「朝日小学生新聞」にてイラストコラムを連載、訪れた水族館へイラストを寄稿するなど、積極的に活動を行っています。

後編では、好きな手塚マンガやマンガ表現についてはもちろん、お仕事への姿勢、今後新たに挑戦してみたいことなどについて語っていただきます。

プロフィール:

さかなクン

東京都出身、館山市在住。

2010年には絶滅したと思われていたクニマスの生息確認に貢献。さらに海洋に関する普及・啓発活動の功績が認められ、「海洋立国推進功労者」として内閣総理大臣賞を受賞。

2011年農水省「お魚大使」、2012年文科省「日本ユネスコ国内委員会広報大使」、 2014年には環境省国連生物多様性の10年委員会(UNDB-J)「地球いきもの 応援団」の生物多様性リーダーを務める。

20153月には東京海洋大学の名誉博士が授与された。

皆様にお魚の情報や正しい知識、美味しい食べ方や環境問題、漁業従事者の皆様とともに明日の漁業を考えて頂こうと全国各地で講演を行っている。


――手塚作品もお好きと伺っていますが、手塚作品はいつごろ読まれたのでしょうか?

さかなクン 物心ついたころからですね。兄がマンガ好きで、『火の鳥』を全巻持っていたので、読ませてもらっていました。手塚先生は、日本のマンガを築き上げられた大先生ですので、もう本当に、日本というか、世界の宝だと思っています!

――マンガ自体は、結構読まれていましたか?

さかなクン はい、マンガは大好きで、よく読んでいました。手塚先生の作品はもちろん、赤塚不二夫先生の『モーレツア太郎』なども好きでした。ウナギイヌちゃんは、クロアナゴちゃんというお魚にそっくりなんですよ!

水木しげる先生も大好きなんです。水木先生の『墓場鬼太郎』のあのオドロオドロしい感じがすごく好きで。水木先生の娘さんが、手塚先生の作品を読んでいたらお父さんから「コラー!」と怒られたっていう逸話があって。描いているジャンルは違うのに、やっぱり、マンガ家の先生はお互い意識し合っているんですね。

お魚の先生方同士の想いというのもそれぞれ違ったりするので、どの世界でも一緒なんだなぁと思いました。

――手塚キャラで好きなキャラクターはいますか?

さかなクン はい! ヒゲオヤジさんも大好きですし、『ジャングル大帝』のレオさんやブラック・ジャックさんの仕草や格好良さも大好きですし......、でも一番『リボンの騎士』のナイロンさんが好きです。再放送でやっていたアニメを観ていたんですけど、なぜか敵側なのにナイロンさんが出るたびに喜んでいました(笑)。

――ちょっと、魚っぽい顔をしているからですかね(笑)。もちろん、『海のトリトン』も......(笑)。

さかなクン トリトンも好きです!! お魚の世界と同じで、多種多様で個性豊かなキャラクターがたくさんいて、ひとりひとりの魅力が素晴らしく表現されていて、それぞれにストーリーがあり、トリトンの世界に引き込まれていました。

手塚先生の作品は、本当に奥が深いですよね。人には感情があるのでいろんなことを思いながら生きているし、友情を育んだりイザコザがあったり幸せを感じたり、人間はなにをもってどこにたどりつくんだと考えさせられたりするけれど、でもそれは命があってのことなんだと根本的なことに気付かされます。

なんの作品だったかな? 亀や鳥、人間や他の生き物みんなが繋がってる絵があって、あれは涙が出そうになりました。形は違えど、みんな同じなんだって。壮大さにジーンときます。自分もそういった世界観をいつかお魚で描いてみたいです!

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講談社版手塚治虫漫画全集『ブッダ』8巻からの1シーン。ありとあらゆる生物が手を繋ぎ、楽しそうな姿で描かれている

――イラストレーターのさかなクンから見て、手塚のマンガ表現で面白いと思うところはありますか?

さかなクン 私たちには私たちにしかできないことがあるように、手塚先生の世界は手塚先生の世界であって、誰も近づくことができないものだと思うんです。人間は頑張れば、手塚先生のようにこんなにたくさんの作品がつくれて、こんなすギョ(ご)い表現ができるんだ!自分にできるのは、自分にしかできない魚の絵の表現をしていくことなんだ!と痛感します。

NHKの番組で拝見したと思うのですが、手塚先生が作品を描かれる時にクラシックを流してたというのを聞いて、確かに手塚先生のマンガを読んでいると、本当に音が聴こえてくるような、そのシーンそのシーンで、自分の頭に音が流れてくるような、匂いさえしてくるような気がしてくるんです。本当に1コマ1コマ、その世界に入り込めて、温度や音さえ聴こえてくるような、あの世界の域に達するというのは、本当に真似しようと思ってもできないですよ。全魂を込めて描かれているんだと感じますね。

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――さかなクンが最終的に行きつきたいのは、やっぱり、絵の世界なのでしょうか。

さかなクン 魚類研究者の先生方は、魚の生態を調べるために海に潜ったり、研究室に籠って細胞を研究したりと、様々なフィールドでギョ(ご)研究されています。自分の場合は、お魚からいただいた感動を皆さんに届けるにはどう表現したら良いかを研究していると言えます。絵はそのための大切な手段のひとつですね。

思い出したのが、以前、歴史学者の磯田道文先生と対談させていただいた時に、オタクとプロフェッショナルの違いは何だ?!というお話になったことがあります。

――大変興味深いですね。

さかなクン 自分はまったく意識せず、小さい頃からただ単にお魚が好きという気持ちから部屋でお魚を描いたり、図鑑を読んだりしていましたが、これは自分ひとりで完結していることなんです。自分だけで喜んでいるうちはまだオタクで、仕事にするのは難しい段階かも知れません。

でも、プロフェッショナルというのは、どんなお仕事であれ、その技術でもってまわりの人たちを幸せにすることができる人だという話になってハッとしたんです。感動を届けたり、みんなで喜びを共有することができたら、それはプロフェッショナルなんじゃないかなぁと後になって思いました。

「好きなことを仕事にすると苦労するから、趣味に留めておいた方がいいよ」って言われたこともあったんですけど、実際、時間が経って大人になってみて、絶対この仕事以外は出来なかっただろうなと思うんです。友達からも「よく魚で食っていけるようになったな」と言われるんですけど、「お魚だから、プロになって食べていけるんだよ!」って感じで(笑)。

――今後、新たに挑戦してみたいことはありますか?

さかなクン 手塚先生の作品のように、自分が描いたお魚の絵を見てくださった方がおいしそうな匂いがするとかこの海の世界は冷たそうだな、泳いでみたいなって感情移入できるような表現ができればなぁと思います。

こうしてお話して伝えることはもちろん楽しいですが、それは生きている間だけできることですよね。でも、絵というのはずっと生き続けると思うんです。後生の方にも見てもらうために、作品を残すことができたら嬉しいですね。ただ、「残しておきたい」と思ってもらえるような作品じゃないと廃棄されちゃうかもしれないので(笑)、ずっと残していただけるような作品をひとつでも多く描いていきたいです。実は、いまそういった楽しい企画を考えて動いているところなので、ぜひ、楽しみに待っていてください!

――最後に、さかなクンみたいに好きなことをやり続けたい、好きなことを仕事にしたいという人が現れたとしたら、どんなアドバイスをしますか。

さかなクン 人間もひとりひとり、お魚も一匹一匹、違う個性を持っているように、みんなそれぞれ、夢中になれるもの、好きになれるもの、得意分野ってあると思うんです。嫌いなものっていうのは、頑張って克服しようとしても、なかなか難しいですよね。でも、ちょっとでも興味が持てるものとか、これだけは人に譲れないというものは、それを見ているだけでも落ち着くし、語れる仲間がいるだけでも、すごく元気になれるはずです。是非ともその好きという気持ちを大切に持ち続けて欲しいですね。

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大好きなお魚を身にまとい、キラキラしながら好きなことを語る姿が印象的でした。さかなクン、お忙しい中本当にありがとうございました!


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