虫ん坊

手塚治虫生誕90周年記念企画 スペシャルインタビュー 第5回 最果タヒさん

2018/11/03

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「月刊少年マンガ雑誌での詩の連載」「詩集が文庫本売上第1位」など、枠を壊し、常に新しい詩の可能性を追い求め活動をし続ける現代詩人・最果タヒさん。
「手塚治虫は、人というより現象」と語る自身も、もはや〝現象〟となっています。
手塚治虫90周年企画スペシャルインタビュー第5回は最果タヒさんを迎え、共著、作詞など多岐に渡る活動や創作過程、そして「大人になってからハマりました」と言う、手塚作品について大いに語っていただきました!


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2004年よりインターネット上で詩作をはじめ、翌年より「現代詩手帖」の新人作品欄に投稿をはじめる。2006年、現代詩手帖賞を受賞。2007年、詩集『グッドモーニング』を刊行、中原中也賞受賞、2012年に詩集『空が分裂する』。2014年、詩集『死んでしまう系のぼくらに』刊行以降、詩の新しいムーブメントを席巻、同作で現代詩花椿賞受賞。2016年の詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』は2017年に映画化され(『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』石井裕也監督)、話題を呼んだ。小説家としても活躍し、『星か獣になる季節』『少女ABCDEFGHIJKLMN』『十代に共感する奴はみんな嘘つき』など。対談集に『ことばの恐竜』、エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』『もぐ∞』。最新詩集は2017年『愛の縫い目はここ』、清川あさみとの共著『千年後の百人一首』では100首の現代語訳をした。また同年、ルミネのクリスマスキャンペーンで詩を書いた。


―――詩を通じて様々な方面でご活躍されている最果さんですが、まず詩の創作を始めるきっかけはなんだったのでしょうか。

最果タヒさん(以降、最果) 小っちゃい頃、親が絵本の読み聞かせをしてくれてたんです。たぶんそのおかげで言葉が好きになったんだと思います。落書き帳に言葉をたくさん書いていました。そのころはただ書くのが好きで、作品を作るという意識はなかったのですが......。十代になって、音楽が好きになり、歌詞を通じて「言葉の作品ってかっこいいな」と思うようになりました。一見、脈絡が無い言葉の並びなのに、なぜかぐっときてしまう。そういうかっこよさに魅了されました。
書くことはその頃もまだ続けていて、当時はブログにいろんなことを書いていました。思い浮かんだままに、文脈を気にせずに書いていたと思います。そのブログを読んだ人に「詩っぽいね」と言われて、それから詩の投稿サイトに投稿したり、詩の雑誌に投稿したりするようになりました。その投稿欄で新人賞をもらって、その後、詩集が中原中也賞を受賞しました。詩を書こう、と思って書き始めたわけではないので、こうして詩人の仕事をやっているのは、自分でも不思議です。

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中原中也賞を受賞した著書『グッドモーニング』。こちらは文庫化されたもの

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第33回現代詩花椿賞を受賞した『死んでしまう系のぼくらに』

最果 中原中也賞をきっかけに、本屋さんでも詩集に目立つポップがつけてもらえるようになって。そのとき偶然、第一詩集『グッドモーニング』をお店で手に取った、という編集者さんから連絡をいただいて、それで「別冊少年マガジン」(講談社)で詩を連載するようになりました。それまで詩や小説の雑誌に詩を書いていたので、漫画誌に書くのは新鮮でした。普段詩を読まない読者の方がきっとほとんどで、そういう人たちの目に触れる、ということを考えながら書いていると、だんだん、読む人の存在を意識するようになって......。それが、私にはすごくよかったんです。私は自分の気持ちを吐き出すために詩を書いているわけではなくて、言葉を書くということに楽しさや面白さを感じていたのですが、その面白さってなぜ生じているんだろう? と疑問でもあったんです。自分でも自分がなぜそれをやっているのかよくわからないところがあって......。でも、読む人のことを意識した途端、それがとてもクリアになりました。

私にとって言葉は、自分だけのものではなくて、他人と自分を繋ぐあいだにあるもので。言葉を書くことは、読む人の意識に触れていくこと。「書かれていることはよくわからないけれど、でもぐっときた」みたいなふうに、もしも言葉だけで心に触れることができたら、私はとても嬉しいし、きっとその手応えを感じた時に「面白い」って思うんだって。「マガジン」に載せてもらっているうちに、自分がどう言葉を捉えているのか、知ることができました。

自分の言葉を「詩だ」と意識できたのも、誰かからの言葉によってですし、自分にとっての言葉がなんなのかも、「マガジン」の編集さん、そしてその連載の読者の方によって教えてもらったのだと思っています。いろんな人に導かれて、今もたのしく詩を書くことができています。


―――詩集の出版だけでなく、ミュージシャンや写真家などアーティストとの共著作品も出版されていますが、共著の楽しさや難しさについてお聞かせください。


最果 
共著はどれも、編集さんから「この人とやったら面白いものができそうだよ」と提案していただいて始まっています。毎回、そのお話をいただく度にわくわくしています! 自分一人で書くことももちろん楽しいですが、そういうときも、1日前の自分、3日前の自分とは、違うものを書かなくては、と思っていて。他の人と一緒に作ると、否応無しに自分の作ってきた土台から引き剥がされるので、新しいものを書くしかなくなるし、それはすごく刺激的です。自分が今まで想像してこなかった言葉がポンと出てきた時、楽しいと思います。

だからこそ、自分から「この人とコラボしたい」ってあまり言わないようにしています。自分が想像できる範囲より、はみ出していた方が意外なものができて楽しいです。だから、毎回共著の仕事を提案いただくと、すっごく嬉しいし、ありがたく思います。


―――清川あさみさんとの共著、『千年後の百人一首』ではどうでしたか?


最果 
清川さんが百人一首の絵札を作る、と聞いて、絶対見てみたいな、とまず思いました。私が百人一首を現代訳する、というのはただただ恐れ多い仕事だと思いましたが、でもただ正確に訳していくというのではなく、「詩の言葉で訳してほしい」と言われて、それは大変だけどおもしろそうだな、と。大変そうだと、やりたいな、って思ってしまいます(笑)。詩の言葉で訳すならば、和歌を詠んだ歌人がそのときに感じていた衝動から、言葉を生んでいきたいな、と思いました。なんていうか、読んだ若い人に「わかる〜」って言ってもらえたらいいなあ、って。なので、和歌が生まれた背景を勉強したあとは、どうしてもその和歌を訳したい!って思えるようになるまで、じっと待っていました。


―――今回の共著の作業工程はどう行われていったのでしょうか。


最果 
清川さんと並行して作業をしていたので、詩が先に上がってくる場合もあれば、絵が先行する場合もありました。はじめに顔合わせをしてからは全然会わずにずっとお互い作業をしていたのですが、偶然にも二人とも、最初に完成させたのは小野小町の歌でした。ただ絵と訳だけを送りあって、なんだか当時の歌のやり取りみたいでした。


―――詩はもちろん、歌の歌詞や小説も手掛けている最果さんですが、それぞれ創作の違いなどありましたら、教えてください。


最果 歌詞は曲が先か、詩が先かで変わるのですが、曲が先の場合は、その音になんの言葉をはめていくか、が前提になってくるので、詩に比べると制限が多いです。ただ、歌詞というのは、声とメロディと常にともにある言葉なので、たとえ文脈が飛んでいても、冷静に聞くとわけがわからなくても、そのまま聞いている人を引っ張っていける、巻き込んでいける力強さがあるなあ、と思います。だから、歌詞作りは、文字数などの縛りはあるけど別の方向では自由だなと思っています。

小説は、すべてが詩のままだと読者を置き去りにしてしまうんです。私の詩は、マンガのモノローグに近いかなあ、と思っていて。声には出さないけれど、ただ頭の中でもやもやとしているだけではない、少し整理のついた言葉。このレイヤーの言葉だけで小説を作ると、あまりにも曖昧で、ついていけなくなるんじゃないかなって。モノローグの外側の言葉もきっといるんだと思います。ただ、小説の場合、登場人物の目を通じて、風景を描いていくことになるんですが、どこからピントが合っていくのか、何を優先してその人は見ているのか、ということを、言葉の並び方や、文章の絡まりかたで描けるのは、小説ならではの面白さだなあと思っています。


―――確かに、歌詞は音楽が補ってくれる部分がありますが、詩だと言葉単体ですよね。


最果 ただ、詩の場合は、読むその人が頭の中で声にしているんですよね。その人の声が詩と重なって、そして、その人の生活の音や色もともに、そこにはあって。歌詞が、メロディに重なることで完成する言葉なら、詩は読む人の日々や思いに重なって完成する言葉だといいな、って思っています。詩をマンガのモノローグみたいだ、と思ったのも、その人の見えている世界に、そのモノローグの四角をぺたりと貼れるようなものかな、と思ったからなので。読んだ人が自分の生きている環境とかいまの心理状況を添えることで、自分のことを言っているような感覚になることが私にとっての詩なのかもしれません。だから、読む人によって感想が全然違ったりするのも、当然だなって。

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―――手塚治虫は「チョコが無いと描けない!」などと言いながら過密スケジュールをなんとかこなしていたという逸話があるんですが、最果さんにもコレが無いと書けない! というものがあったりしますか?


最果 私の場合はiPhoneですかね。思いついた時にすぐ書きたいので。ペンがなきゃ漫画は描けない、ぐらい基本的な話ですけど(笑)。手書きではまったく書かないのでiPhoneかパソコンがないと、無理ですね。自分の字の汚さで何を書いてもゴミのような文章にしか見えないんです(笑) 。あとは思いつくスピードのままで書きたいので、手書きだと間に合わないんです。嗜好品的なものは特にないかなあ。私もチョコはめっちゃ好きですけど。


―――インタビュー記事で、ガヤガヤしたところで詩を書くとありましたが本当ですか?


最果 そうですそうです。うるさい所や、イヤフォンで音楽を爆音でかけながら書くというのがマイブームです。静かな所は難しいですね。


―――それはどういった理由からですか?


最果 静かな場所は緊張してしまいます。「私は今から詩を書くのです」みたいな、妙な力が入ってしまう。それよりもうるさい場所で、「こんなところで集中できるわけがないやん」と思っている方が、気づいたら集中してた、みたいなことが多くて。あと、ふるいに掛けるように、うるさい環境にかき消されず残る言葉はギュギュギュギュッて凝縮される感じがします。それで消えてゆく言葉は書かなくて済むから。書きやすいからそうしているだけなんですけど。


―――iPhoneとうるさい場所さえあれば書けると。


最果 そうですね。宇宙に行っても書けるのでは、と思っています(笑)。


―――宇宙(笑)! 確かに、マンガ家だと道具が色々いりますからね。


最果 結構、変な場所で書いた作品もいっぱいあります。移動中も書くし、映画が始まるのを待っているときか、ラーメン屋に並んでいるときとか (笑)。そういうときの方がはかどるんですよね。肩肘張らず、どうせ無理でしょって思っているくらいの方が。


―――ラーメン屋の行列の中で生まれた詩もあるんですね!


最果 ありますよ~。どれとは言えないけど (笑)。


―――読売新聞の朝刊内「空想書店」にて、『ルナティック雑技団』(岡田あ~みん著)をピックアップされていましたが、普段からマンガはよく読まれるんでしょうか。


最果 めっちゃ読みます。本棚の7割がマンガです(笑)。小っちゃい頃マンガはあまり読ませてもらえなくて、月1冊だけ買うのを許されてました。大学生になって自分の好きなだけマンガが買えるようになったときに、その反動から、一気買いにハマってしまって。100巻まで買ったとしても旅行より安いじゃないですか。旅行並みに楽しい体験ができるのに! 夏休みとかがっつり買ってました。
手塚作品は、昔から読み親しんではいたんですけど、試し読みができるアプリが出たころ読み直して、もう一回ハマりしました。子供の頃はただただ面白がって読んでいたんですが、大人になってから読むと、作家としてすごい人だということがほんとよくわかって......。並行して連載していてもそれぞれ全然違う作風で、「コレとコレを同時に連載してたの!?」って。手塚さんは自分の作風の中だけでやっていくんじゃなく、新しいものをどんどん取り入れていく。大変そうな仕事がきて、「うわできるかな、やめとこうかな......」と尻込みしたときに、作品を読み直すと「すいません、やります! 申し訳ございません!」ってなります(笑)。


―――大人になってからは、どんな手塚作品を読み直したんでしょうか。


最果 最初は『アドルフに告ぐ』でした。ナチスのことは歴史の知識として知っているはずなのに、それをこんなに面白く読ませるのってすごいなって。『ブッダ』もビックリしました。重厚そうだな、ちょっと読むの大変かな、なんて読む前は思ってたんですが、試しに読んだら、めっちゃおもしろくて! 重厚感はあるんですが、しんどいものではなくて、むしろだからこそおもしろくて。一気に全巻買って、ただただ楽しんで終わりました。

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手塚治虫漫画全集より。どちらも歴史上の人物にフォーカスを当てた重厚なストーリーが展開される

最果 あと『火の鳥』は未来編だったかな、主人公・マサトが永遠の命を得て、身体がボロボロになっても生き続けてもう一度生命を作り直す、という話が二十歳前後の私の心に大ヒットしてしまいまして。未来編の影響がガンガンに出た詩がいくつかあります。不死身ってこの世で一番悲しいことじゃないかなって思って。"不死身"というテーマが一時期私の中で大ブームになりました。あと途中でナメクジみたいなの挟むのもすごい好きです。こんな重要な話してるのにナメクジ挟むんや~って(笑)。描いてる人は冷静なんやなって分かるのが面白い。「手塚さんの掌の上やった、私!」って。こういうところで、ああ、作家ってすごい仕事だな、と思います。

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『火の鳥』未来編では、ナメクジが人間のような進化を遂げ、文明を築く姿が描かれている

最果 手塚作品では、どんな重厚な作品でも、手塚さんが「これはあくまでマンガだ」って意識しているかんじがあって、そこがすごく好きです。あくまで「読む人を楽しませること」を最優先にしている、というか。本質的な部分に触れたときに、そこに酔ってしまうと途端に説教臭くなると思うんです。でも、読み手が楽しむことを手塚さんは絶対に忘れない。創り手はあくまで作品を創っているのであって、本質みたいなものをお伝えするメッセンジャーじゃないぞ、と。手塚さんの骨の髄までマンガ家、みたいなこの姿勢に圧倒されます。
だからこそこんなに作品を生み出せたんだなって思いますし、マンガを利用して自分の考えを押し付けているわけじゃないから読者を置いていかないんだろうなあ、プロだなあって思いますね。最後までマンガを一番大切にしているし、マンガに対して誠実ですよね。

―――「詩で本を紹介する」という選書フェアでは、手塚作品『ユニコ』に宛てた詩を書いて頂きました。はじめてカラー版の『ユニコ』を読まれたときは、いかがでしたか?

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リトルモア社より刊行されたオールカラー版『ユニコ』

最果 パッと見で、「めちゃくちゃキレイ!」って思いました。それまで、女の子向けの手塚作品って読んでなかったんですよ。大人になってからも人間の業なんかを表現した作品が面白くてそればかり読んでいて。でも、『ユニコ』って、女の子向けって言ってしまえるものじゃないな、って思いました。すごく素朴なんだけど、一番大事なことを描いている。ちょっと絵本に近いんですよね。私、絵本がすごく好きなんですよ。そして、作るのがこの世で一番難しいジャンルだとも思っています。それは、すごく大切なことを、理屈じゃなく本能的な部分で伝えなければいけないから。読んでいるとすごく簡単に書いているように見えるんだけど、そう見せることが何より一番難しくて。

『ユニコ』では、ユニコがどんどん記憶を失っていき、もはや自分が誰なのかも毎回思い出せなくなっています。それでも人に出会い、そして誰かにやさしくされたことに喜び、奇跡を起こしていきます。やさしくされて、嬉しかった、というのがいつもユニコの原動力になるんですね。そしてそれはきっと、ユニコが忘れてしまった過去の人々、その人たちからもらってきた優しさが心のどこかで共鳴して、頭では思い出せなくても、心が思い出しているからだと思うんです。
昔、幼い頃に家族に遊んでもらったとか大切にされたとか、嬉しかった愛情の思い出ってどうしても完全には覚えていられないし失っていくけど、でも心のどこかには残っていて、その部分が共鳴するからこそ、大人になってからも人からの優しさが嬉しいし、自分も誰かにやさしく出来たり、愛し合えたりする。その感覚が、記憶を失うユニコの中に重ねて見えるんです。ユニコを通じて、その感覚がすごく大切なものだと思えてくる。

一見、簡単なようでいて、すごく本質的なことを描いている。それを尚且つユニコ可哀想だな、寂しいな、って思いながら読めるのがまたすごくて。しあわせに出来ても出来なくてもユニコは立ち去って行かなきゃいけないから。

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愛されることでどんなちからでもだせるユニコ。たとえ、記憶を失ったとしても、やさしくされたことは感覚として覚えているのかもしれない

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ユニコの公式サイトより。選書フェアの模様と共に「ユニコの詩」とコメントが紹介された

―――「ユニコの詩」では"優しいということはさみしいことなのかもしれない"とコメントを寄せています。


最果 『ユニコ』の物語は物事を表裏一体に描いていると思うんです。ユニコのやさしさがユニコのさみしさと表裏一体にある。優しい子がただただ幸せになるお話じゃないんですよね。物事を単純化して描いているというよりは本質的な部分をピュッと引き出して物語にのせている感じがして。だから詩においても、やさしいからさみしい、というのを一番大事にして書きました。


―――『ユニコ』で特に印象に残ったシーンなどはありますか?


最果 ゼフィルスがユニコを連れ去ってしまうシーンが好きです。あと、すごく単純なんですけど、個人的にユニコのつのが2本に見えているコマが好き(笑)。こういうことをする手塚さんが好きです。

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一番左下のユニコに注目!


―――最果さんが作品を生み出すための源はどこにあるんでしょうか?

最果 単純に書いたら楽しそうだなと思ったら書く感じですね。「ユニコの詩」もそう。読んですぐに「あ、書きたい!」って。この選書したものに詩を書く、という試みも、今まで書いていたところとは違う部分から言葉が出てくるから楽しいだろうなと思ってはじめたんです。自分の想定できる範囲でものを書くのはあんまり楽しいと思えなくて、はみ出したいんですよね。過去の自分とは違うものを書きたいと思うのもそのためです。同じことばかりするのが一番面白くないと思うから。


―――常に書いたことのない言葉を求めているということですよね。


最果 文章を書いていて一番楽しいなって思うのは、「こんな意外な一行が自分から出てくるんだ!」と書いていて驚く時なんですよね。だからいまでも、やっぱり自分に驚かされたいなって思います。

手塚さんのマンガを読んでいると、手塚治虫が手塚治虫という枠にハマろうとしていない。生々しいほどに貪欲さが迫り寄ってくるときがあって。結構読んでいるのに、こんなコマ割り初めて見たぞっていう発見があったり、こんなに重いテーマを扱うんだって思えたりする。仕事としてとかプロとしてとかいう枠を飛び出すほど、自分が描くことを楽しみたいという気持ちが強かったんじゃないかなって。私はここまではできてないなといつも思います。手塚さんの、仕事としてものを創る没入の仕方は私の中で理想です。


―――最果さんの作品を拝読して、独特な文章のリズムもそうですが、まるでマンガのコマ割りのように行間を楽しまれている感覚がマンガ表現に近いように感じました。


最果 わ、面白いですね! そういう風に自分の詩を考えたことは無かったですが、確かに視線の移動は常に意識しています。下に下がってゆくと言葉が籠っていく感じがするので、縦書きだとここで折り返そう、間を空けよう、と気にしたり。マンガも視線の移動をすごく大事にしていますよね。絵の動きもそうですが、吹き出しの位置や形の強弱で印象変わりますし。いま言われて、マンガの影響もあるかも、とちょっと思いました。

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―――手塚作品をまだ読んでいない若い世代におすすめするとしたらどの作品になりますか?


最果 読みやすさでいうとやっぱり『ブラック・ジャック』かなあ、と思います。1話完結だし、アイデアがわかりやすいし、話の展開が速い。手塚マンガの美味しいトコ取りしてる感じがすごくあります。
『ユニコ』は私のなかでは20代かな。それかもっと若い7、8歳くらいの子。特にカラー版を小っちゃい頃に読むのは、すごくいい体験だなと思います。絵本とも繋がっているし、漫画と絵本を結ぶきっかけになる本かもしれないですね。そしてまた大人になってからゆっくり読むと、おもしろい見え方をしそうです。
『きりひと讃歌』は、すごく挑戦的なコマ割りだったり、前衛的な表現の面白さがあるので、手塚マンガをある程度読んだあとに読むと、手塚さんのマンガに対する貪欲さに触れられる気がします。


―――最後に、今後、言葉を使って新しく挑戦してみたいものはありますか?


最果 歌詞は、書かせてもらったことで、もっとやりたいなって思いました。あとはさっきお話した絵本。大人用もそうなんですが、いつかは子供用の絵本も挑戦したいなあと思っていますね。あまり気軽には言えないんですけど、やっぱり自分の原点なんで憧れがあります。義務感というか、逃げていてはだめだなと。難しいと思うものはやったら絶対に楽しいに決まっているんで。逃げていたら手塚先生に怒られます。逃げるどころか先生は捕まえに行っている感じですからね。

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『ユニコ』へひとことを添えて。更に『火の鳥』も『ユニコ』も『ブラック・ジャック』もめっちゃ好きです! というメッセージも。 最果さん、お忙しいなか、本当にありがとうございました!!

※こちらの記事は、虫ん坊2018年5月号の再掲載となります。



●関連情報

公式サイト :最果タヒ.jp
Twitter :@tt_ss



●バックナンバー

 生誕90周年企画 スペシャルインタビュー

・第1回 松浦だるまさん

・第2回 大塚明夫さん

・第3回 中村佑介さん

・第4回 [ALEXANDROS] 庄村聡泰さん


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