シリーズ
各話完結の短編形式で、SF的なアイデアを自由に展開した連作シリーズです。
金星探検から戻った探検隊が見たものは、荒廃した地球だった(「来るべき人類」)。
さまざまな宇宙人たちの人生が交差する宇宙空港で少年が凶悪犯に立ち向かう(「宇宙空港」)。
こうした、さまざまな時代のさまざまな設定のなかで、手塚治虫のSF的な発想が縦横に展開された、先駆的なシリーズでした。
01, 来るべき人類 1956/08 「おもしろブック」付録(集英社)
02, くろい宇宙線 1956/09 「おもしろブック」付録(集英社)
03, 宇宙空港 1956/10〜11 「おもしろブック」付録(集英社)
04, 緑の猫 1956/12 「おもしろブック」付録(集英社)
地球劇場
05, 恐怖山脈 1957/01 「おもしろブック」付録(集英社)
06, 双生児殺人事件 1957/02 「おもしろブック」付録(集英社)
07, 狂った国境 1957/03 「おもしろブック」付録(集英社)
08, 複眼魔人 1957/04〜05 「おもしろブック」付録(集英社)
09, 白骨船長 1957/06 「おもしろブック」付録(集英社)
10, 荒野の弾痕 1957/07 「おもしろブック」付録(集英社)
このシリーズは、集英社からの依頼に応じて、毎月1冊ずつ、月刊雑誌の別冊付録として1年間にわたって発表されたものです。
太平洋戦争前に活躍した、初期の空想科学小説作家・海野十三(1897-1949)が亡くなったあと、戦後の日本には、本格的なSF作品と呼べるものがほとんど絶えていた時期がありました。
そんな時代に発表されたのがこのシリーズでした。
子ども向け雑誌に発表されたにもかかわらず、かなり高い年齢層の読者も意識して描かれており、難解と受け取る読者がいた一方で、SF的インスピレーションを大いに刺激されたという人も多かったシリーズでした。
現在は、このシリーズのほとんどの作品が講談社版の手塚治虫全集で読めますが、全集版が出るまでは、長く絶版だった時期があり、ファンの間では、その名前のみ有名な幻の傑作群として語られていました。
主人公が共通の「シリーズ内シリーズ」とでもいうべき、「恐怖山脈」「双生児殺人事件」「狂った国境」では地質学者大垣龍太が共通で登場し、「地球劇場」シリーズとして発表されています。