もともとはハリウッド映画で使われていた言葉です。チャップリンが役者仲間たちと新しい映画会社を起こした時に、スター俳優を企画の中心に据えた映画作りを目指し、そのことを称して「スター・システム」と呼んだのです。それ以来、トップ・スターを中心とした映画製作システムのことをこう呼び習わすようになりました。
さて、手塚マンガにおける「スター・システム」はと言うと、ハリウッド映画の場合とはちょっと違って、マンガの登場人物をさながら映画俳優のように扱う、ということです。つまりひとりの役者がいろいろな役を演じるように、ひとつのキャラクターがいろいろな役に扮してマンガを演じている、ということです。
手塚マンガ以外ではこういう発想で描かれたマンガはありませんでした。ひとつのマンガの主人公が別の作品の中では脇役の、しかも悪役を演じる、なんてことは有り得なかったのです。
ところが手塚マンガはマンガの登場人物を本物の俳優のように考え、自分は監督として彼らに演技をつけることを楽しみとしたのです。読者にとってもアトムが別の作品では誘拐犯の息子を演じたりしている姿を見てニコニコと楽しみました。
手塚治虫はそれぞれのキャラクターたちのギャラまで考えていて、本当にマンガ作りを映画作りと重ね合わせて、ハリウッドの大物監督気分を楽しんでいたのがわかります。