光文社 少年「第三の魔術師の巻」扉絵 1962年
21世紀の未来を舞台に、10万馬力のロボット少年・アトムが活躍するSFヒーローマンガです。
「アトム大使」 1951年
2003年4月7日、科学省長官・天馬博士は、交通事故で死んだひとり息子・飛雄(とびお)にそっくりのロボットを、科学省の総力を結集して作りあげました。天馬博士はそのロボットを息子のように愛しましたが、やがて成長しないことに腹を立て、ロボットサーカスに売り飛ばしてしまいます。
サーカスでアトムと名づけられたロボットは、そこで働かされていましたが、新しく科学省長官になったお茶の水博士の努力で、ロボットにも人権が認められるようになり、アトムはようやく自由の身となったのです。
アトムは、お茶の水博士によってつくられたロボットの両親といっしょに郊外の家で暮らし、お茶の水小学校へ通うことになりました。けれどもひとたび事件が起これば、アトムはその10万馬力のパワーで、敢然と悪に立ち向かっていくのです。
「アトム大使」 1951年
1952/04-1968/03 「少年」(光文社) 連載
「アトムを創りたい」と思ってロボット工学を目指す科学者、「アトムに出てくる未来都市みたい」な街並み、「博士といったらお茶の水博士」などなど、手塚治虫のキャラクターの中でも、作者の先見性や良心の象徴としてしばしば語られるアトム。
キャラクターだけでなく、漫画としての「鉄腕アトム」を愛する著名人、文化人も多く、しばしばアートのテーマに選ばれたり、マンガや科学技術の象徴的キャラクターとして引用されるまでになっています。
『アトム大使』に、登場人物のひとりとして出ていたロボット少年アトムを主人公にして、新たに連載を始めたのがこの『鉄腕アトム』でした。
『鉄腕アトム』は大人気となり、手塚治虫の全作品の中でも、もっとも有名な作品となりました。
さらに1963年からは、手塚治虫が設立した虫プロダクションの商業アニメ第1号として、毎週30分のテレビアニメ『鉄腕アトム』の放映が始まりました。そしてこのアニメ版も、日本最初のテレビアニメシリーズとして大ヒットし、日本の第1次テレビアニメブームのきっかけをつくりました。
アトム
10万馬力のパワーと七つの力を備えた少年型ロボット。天馬博士の息子「飛雄」をモデルにして作られたが、天馬博士自身にサーカスに売り飛ばされ、そこで「アトム」という名前を付けられる。高い能力を駆使して、地球を襲うさまざまな危機を解決する。
>キャラクター/アトム
アトム
お茶の水博士
天馬博士
アトムをサーカスで見つけ、保護する。現・科学省長官。ロボットたちに人権を認めようという思想の持ち主で、アトムのよき保護者である。アトムに妹のウランと、両親をつくってプレゼントする。
>キャラクター/お茶の水博士
アトムの生みの親。天才的なロボット工学者であるが、アトムが成長しないことに腹を立ててサーカスに売り払ってしまうようなエキセントリックな一面ももつ。
>キャラクター/天馬博士
ウラン
コバルト
アトムの妹として作られた少女型ロボット。おてんばな性格だが、兄思い。
>キャラクター/ウラン
アトムの弟として作られた少年型ロボット。すこしのんびり屋で、細かい作業は苦手。兄と共鳴し合う機能がついている。
>キャラクター/コバルト
田鷲警部
中村課長
ロボットに反感的な立場の刑事。事件がおこると何かとロボットを疑う。アトムもたびたび疑われた。根は仕事熱心な人。
>キャラクター/中村課長と田鷲警部
ロボットに同情的な立場の刑事。田鷲警部の部下。
>キャラクター/中村課長と田鷲警部
ヒゲオヤジ
タマオ
ケン一
四部垣
アトムは、もう、あしかけ十五年描いています。私の作品の代表のようにいわれています。でも、アトムをさいしょ描きはじめたときは、まさか、こんなにつづくとは思いませんでした。
私がアトムを描きはじめたころは、まだ、人工衛星も、ガガーリンも、テレビですらも夢物語の時代だったし、こうしたマンガは、荒唐無稽な俗悪読み物として、世のひんしゅくをかっていました。
それが、この十五年の間に、あれよあれよといううちに、荒唐無稽どころではなくなり夢が現実になり、私は、あわてて描き直しまでやらなければならない状態になりました。
いまのアトムを読む子どもたちには、月ロケットや電子頭脳は常識となり、「アトムの電子頭脳の部品に使われている真空管など古いよ。現代の電子計算機でも、トランジスタやダイオードが使われているよ」と、いわれるしまつです。
そして、子どもたちの心の中には、すでに、アトムみたいに電子頭脳と原子力エンジンを持ったかしこいロボットが、人間の生活を助けてくれる二十一世紀の世界に飛んでいます。
(光文社刊 『鉄腕アトム ロボットの科学』 「アトムと私」より抜粋)
アトムに両親のプレゼント
(前略)
「アトム大使」が終わる寸前、編集長は、
「どうです。こんどは、アトム坊やを主人公にして稿を新たにしてみんですか。あの人物がいちばん好評だったから」
と、ぼくにすすめた。
「ええ、でも、あれは、ロボットですから」
「そうです。ロボットだが、アトムには血の通った人間の性格を持たせたいですね。そして、読者が、自分達とおなじ仲間だと思うような親近感をね。だから首がとれたり、手がとれたりするようなのじゃなく、泣いたり笑ったり、正義のため怒ったりするようなロボットにするんです」
「なるほど......」
横山隆一氏の「フクちゃん」も、もともと「江戸っ子健ちゃん」という連載漫画の、脇役にすぎなかったのだそうである。ところが主役にのし上がって、またたく間にアピールした。あの前例にならうことになった。
昭和二十七年の四月から、アトムは「鉄腕アトム」として復活した。最初「鉄人アトム」と予告には出たのだが、重っくるしいというので、「鉄腕」になおした。一回目でアトムの両親がつくられ、子供よりあとに親ができたというところがおかしいとみえて、読者に受けた。
(後略)
(毎日新聞刊 『ぼくはマンガ家』 より抜粋)
アトムに両親のプレゼント
光文社 手塚治虫漫画全集「鉄腕アトム」4巻 カバー表4「アトラスの巻」 1958年