深夜の街を走るタクシードライバーが出会う奇妙な客たちの姿を描いたサスペンスドラマです。「夜はいろいろな顔を持っている。その顔をひとつひとつのぞいていく男がいる。その名をミッドナイト」
そんなプロローグの言葉で始まるこの物語は、主人公・ミッドナイトの出会う奇妙な客たちの姿を、毎回、1話完結形式で読ませてくれます。
ミッドナイトが運転するタクシーは特別仕様で、車体の下に第5の車輪を持っており、それを使ってどんな道でも走ることができます。
また、そのタクシーとミッドナイトとは一心同体であり、ミッドナイト以外の人間がかってに動かすことはできません。
しかしなぜ彼はタクシードライバーという孤独な職業を選んだのでしょうか。
それは、昔、彼が暴走族チームのボスだったころ、少女マリを車に乗せて運転中に事故を起こし、マリが、心臓は動いているが脳死という状態、つまり植物人間になってしまったからでした。
そのマリの治療費をかせぐために、彼は今日も、深夜の街を客を求めて走り続けているのです。
1986/05/02-1987/06/12・1987/07/10-1987/09/18 「週刊少年チャンピオン」(秋田書店) 連載
この作品は、1981年から構想があたためられ、1985年の新年号から連載を開始する予定でしたが、1984年の11月に手塚治虫が急性肝炎で入院したため、連載は延期されました。 その後、『ブッキラによろしく!』(1985年)、『ゴブリン公爵』(1985-1986年)の2本の連載が入り、再度仕切りなおされて連載が始まりました。 主人公の三戸真也の名前は、三戸(ミッド)真也(深夜=ナイト)からきています。 最初に構想したときには、超能力を持つロボット自動車が活躍するというSF的設定でしたが、外国のテレビドラマに似た設定のものがあるため、タクシードライバーの人情ものに変更されました。 最終回の結末があまりにも意外だったため、最終エピソードは単行本には収録されませんでした。