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ストーリー

手塚治虫のライフワーク『火の鳥』の、雑誌「COM」に連載された第7作目です。
猟師のズクは、海岸の松の木に掛けられた美しい布を見つけ、それを売って金を得ようとします。
すると女の声がして、その布は自分のものなので返して欲しいと言いました。
ズクが素性をただすと、女はおときと名乗り、遠い空の上の国から旅をしてきたと答えました。
おときが天女だと思ったズクは、一緒に住んでくれないかと頼みます。
実はおときは、タイムトラベルをしてきた未来人だったのです。
未来の布が売られてしまえば、歴史が変わってしまいます。
それを恐れたおときはズクと暮らしはじめ、やがて、子どももできました。
そんなある日、都の侍がズクを兵隊にするために連れに来ました。
おときはズクを助けるために、布を侍に渡したのですが……。

解説

1971/10 「COM」(虫プロ商事) 掲載

日本に古くから伝わる「羽衣伝説」を元にした作品で、1話読み切りの短編です。 羽衣伝説というのは、天から降りてきた天女が水浴びをしていると、そこへ人間の男がやってきて衣を隠してしまい、天に帰れなくなった天女が、その男と結婚するという物語です。別名「天人女房」とも言われ、日本ばかりでなくアジア全体に類似した話があります。またヨーロッパにも「白鳥処女伝説」といわれるよく似た話があります。 この作品は、全編が、舞台で演じられるお芝居を客席から見たようなアングルで描かれた実験的なもので、手塚治虫自身によれば、後に発表される「乱世編」より70〜80年ほど前の時代のお話だということです。 雑誌掲載当初は、核戦争の犠牲者を主人公にした、反戦テーマが強く前面に出た作品で、その中に放射線障害をあつかった部分がありました。しかし、そうした内容は軽々にあつかえるものではないということで、長らく単行本化されませんでした。 その後1980年になって、セリフを全面的に書きあらため、ようやく単行本化が実現しました。 手塚治虫は、いずれこれとは別の「羽衣編」を、新たに描き起こしたいという構想を持っていましたが、残念ながらそれは実現しませんでした。

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  • 火の鳥 (8)

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