長い間、多くの人々に愛され続けてきた手塚治虫の「火の鳥」には、わたしたちが深く考えるべき二つの大きなテーマが描かれています。
そのひとつは、「歴史」「宗教」「愛」「寿命」「生き様」といった人類に普遍的な「生」の問題です。
もうひとつは、科学や文明の発達にともない提起され始めた、「環境」「遺伝子操作」「クローン技術」「ロボットと人間の関わり」という、わたしたち現代人が今まさに直面している、新しい問題なのです。
50年も前に描き始められた作品にもかかわらず、「火の鳥」は21世紀を生きるわたしたちにとっても「人間とは、生命とは何か」を問い続けている物語です。
(C)TEZUKA PRODUCTIONS・NHK・NEP
2004年4月4日~2004年6月27日 日曜/19:30~19:58/NHK総合
2004年3月21日~2004年5月4日 日時不定期/NHKハイビジョン
【火の鳥】 竹下景子
【猿田彦(猿田)】 小村哲生
【ナレーション】 久米明
■黎明編■
【ナギ】 竹内順子
【グズリ】 中尾みち雄
【ヒナク】 玉川紗己子
【ヒミコ】 来宮良子
【弓彦】 寺杣昌紀
■復活編■
【レオナ】 佐々木望
【チヒロ】 小林美佐
【ランプ】 広瀬正志
【ニールセン】 小川真司
【レイコ】 大坂史子
■異形編■
【左近介】 浅野まゆみ
【八百比丘尼】 久保田民絵
【可平】 島田敏
■太陽編■
【犬上(ハリマ・クチイヌ)】 松本保典
【マリモ】 内川藍維
【おばば】 巴菁子
【大海人皇子】 内田直哉
【法弁】大木民夫
【月壇】 江川央生
■未来編■
【マサト】浪川大輔/阪脩
【タマミ】冬馬由美
【ロック】桐本琢也
【ロビタ】牛山茂
【原 作】 手塚治虫
【監 督】 高橋良輔
【脚 本】 五武冬史 長谷川圭一 杉井ギサブロー 野崎透 小林弘利
【作画監督/ キャラクターデザイン】 杉野昭夫 内田裕 西田正義 大下久馬
【美術監督】 河野次郎 西田稔 斉藤雅巳 柴田正人
【色彩設定】 箕輪綾美 小林美代子
【音楽】 内池秀和 野見祐二
【音響監督】 小林克良
【効果】 田中秀実
【録音】 はたしょうじ 高橋清孝
【編集】 森田清次 山※由香
【アニメーション制作担当】 大澤宏志
【アニメーションプロデューサー】 清水義裕 宇田川純男
【制作統括】 貴志謙介 冨永慎一
【アニメーション制作】 手塚プロダクション
【国際共同制作】 Thirteen/WNET New York
【共同制作】 NHKエンタープライズ
【制作・著作】 NHK
1 黎明編 その一
三世紀のヒの国(クマソ)から物語は始まる。病床の妻・ヒナクに火の鳥の生き血を飲ませるべく、ウラジは火の鳥に飛びかかった。しかし、ウラジは火の鳥の炎によって焼け死んでしまう。ヒナクの弟・ナギが悲しみに暮れている頃、薬師のグズリが浜に流れ着く。ヒナクはグズリによって命を救われ、二人は夫婦の契りを交わす。その婚礼の夜、猿田彦率いるヤマタイ国軍がナギたちの村を急襲した。軍の手引きをしたのはグズリであった。
スタッフ
脚本:五武冬史 演出:吉村文宏
2 黎明編 その二
ヤマタイ国の女王・ヒミコは、火の鳥の生き血による不老不死を望んでいた。ナギを連れてヤマタイ国へ凱旋した猿田彦はナギを狩部に育て、ヒミコのために火の鳥を射ようとする。しかし、ナギは猿田彦の意に反し、ヒミコを襲ってしまう。責任を問われた猿田彦は、マダラバチの穴倉に放り込まれる。ナギは猿田彦を救い出し、故郷ヒの国に向かう。そこで二人は、子供たちを産み育てていたヒナクとグズリに再会する。
スタッフ
脚本:五武冬史 演出:津田義三
3 黎明編 その三
ヒミコの命を受けたヤマタイ国の兵が、火の鳥を捕獲するために再びヒの国へと迫った。ヒの国を襲撃したヤマタイ国の弓の名手・天弓彦と猿田彦は、奇妙な心の絆を感じあった。そんな折、新たな異国の騎馬軍団によってヒの国が襲われる。敗北し殺されかかったナギと猿田彦は、軍団の奴隷ウズメの命乞いによって奴隷になるだけで済んだ。ヒミコは火の鳥の生き血を飲まずして死亡する。一方、グズリとヒナクは地殻変動によって地底に閉じ込められていた。
スタッフ
脚本:五武冬史 演出:竹内啓雄
4 黎明編 その四
ウズメの協力によって騎馬軍団から逃げ出したナギと猿田彦。ナギの今後を案じた猿田彦は、ナギを故郷へと追い返す。ヤマタイ国をも襲撃する騎馬軍団に、猿田彦は天弓彦と共に闘うが、圧倒的な武力の前に劣勢となり、猿田彦は絶命する。火の鳥の遺骸の在り処を天弓彦から聞いたナギだったが、宮殿の崩壊に巻き込まれてしまう。一方、地底に閉じ込められていたグズリとヒナクの子・タケルは、地底からの脱出を試みる。
スタッフ
脚本:五武冬史 演出:青山弘
5 復活編 その一
25世紀の地球は環境悪化に苛まれていた。青年レオナは地球を再生する構想「フェニックス計画」研究施設の爆発事故に巻き込まれたが、人工頭脳を埋め込む手術で一命を取りとめる。しかし、事故以前の記憶を失くすとともに、人間を人間として認識できなくなってしまう。人間がガラクタにしか見えないレオナは、廃棄物処理場で旧型ロボットのチヒロと出会う。レオナにはロボットのチヒロが人間の女性に見え、恋に落ちる。
スタッフ
脚本:長谷川圭一 演出:吉村文宏
6 復活編 その二
医療施設を抜け出したレオナとチヒロは、爆発跡地にたどりつく。レオナは失った記憶の手がかりを探り始める。一方で、レオナの旧友・ランプは「永遠の命」の情報を手に入れようとレオナを執拗に追い続ける。次第に過去の記憶を取り戻していくレオナ。そして、過去の恋人・レイコの残した言葉の意味が明らかとなる。死ぬことのできない体となったレオナの最後の選択とは。
スタッフ
脚本:長谷川圭一 演出:萩原露光
7 異形編
時は、室町時代。左近介は領主の娘でありながら男として育てられた。非道の父の死を願う左近介は、病床の父を助けようとする八百比丘尼を斬った。しかし、その瞬間から時間の輪の中に閉じ込められ、寺を抜け出せなくなってしまう。やがて、左近介は自らが斬った八百比丘尼が未来の自分自身であることを知る。30年前に逆行した時の中、左近介は八百比丘尼として生き、寺を訪れる人から妖怪までありとあらゆる病苦を癒していく。しかしそれは、自分自身を殺しに来る左近介を待つ時間でもあった。
スタッフ
脚本:杉井ギサブロー 演出:大下久馬、水野健太郎
8 太陽編 その一
新羅軍との戦いに敗れ、オオカミの首の皮を顔に被せられた百済王朝のハリマ。村の人々に怖れられるハリマだったが、医術と仙術の心得のあるオババに助けられ、クチイヌと名付けられる。ハリマとオババは、傷を負った大花下将軍・猿田を連れて倭の国へ到着。そこでは狼の姿をした八百万の神・狗族と出会い、矢傷を負った狗族の娘・マリモに手当てを施す。猿田の旧知の村で休んでいるところを刺客に襲われるハリマとオババであったが、狗族に助けられる。
スタッフ
脚本:野崎透 演出:伊藤幸松
9 太陽編 その二
犬上と名を変え、犬上の里の郷長となったハリマ。平穏な里であったが、土地神を放逐し仏教を国家宗教に据えようとする朝廷の圧力は増すばかりだった。そんな折、土地神を祀った磐座が国司の部下によって引き倒されそうになり、犬上は決死の抵抗によりこれを阻んだ。このことで犬上と朝廷の対立は決定的となる。犬上は天智大王の弟・大海人皇子に産土神を擁護するよう懇願するべく、大津京へ向かう。道中、犬上を仏敵とする七人衆に襲われてしまうが、狗族の娘・マリモに助けられる。
スタッフ
脚本:野崎透 演出:桑原智
10 太陽編 その三
天智大王が崩御し、天智の子・大友皇子が皇位を継承する。七人衆に傷を負わされた犬上だったが、オババの看病により回復する。しかし、朝廷に抗った罪で投獄されてしまう。将軍・韓国の計らいで大友皇子との面会を果たした犬上は、大海人皇子に産土神の擁護を訴えたが、大友皇子は仏教の必要性を説いた。一方、猿田は大海人皇子の部下として挙兵の準備を進めていた。犬上は猿田と再会し、大海人皇子の子・高市皇子と共に大津京を脱出する。
スタッフ
脚本:野崎透 演出:竹内啓雄
11 太陽編 その四
大友皇子と大海人皇子の争いが始まる。突如として曇った空に、マリモは危険を察知する。それは、大友皇子の仏僧による仏法を用いた超常的な攻撃であった。狗族をはじめとする産土神たちは、猿田、犬上のつく大海人皇子に加勢する。そこで犬上は火の鳥に出会う。産土神を救い出す方法を問う犬上に対し、火の鳥はそれを拒む。激しい争いの末に犬上は仏僧を倒し、大海人皇子軍が勝利する。
スタッフ
脚本:野崎透 演出:西田正義
12 未来編 その一
西暦3404年。人類は、戦争での放射能に汚染された地上から地下都市に移住した。マサトは、不定形宇宙生物・ムーピーが姿を変えた美少女・タマミと共に地下都市・ヤマトから脱出する。二人は地上で人工生命を研究する猿田博士のもとにたどり着く。その頃、地下都市ではコンピューター同士による最終戦争が勃発する。地下都市全てが壊滅し、火の鳥の生き血を飲んで不老不死となったマサトと、ムーピーであるタマミのみを残し、人類は滅亡してしまう。
スタッフ
脚本:小林弘利 演出:吉村文宏
13 未来編 その二
やがてタマミも力尽き、世界にはマサトのみが残された。永遠の生命を持つマサトは死ぬことができず、他の生命を求めて孤独の世界を彷徨う。5000年間ものあいだ眠り続ける女性を発見したマサトは5000年後に女性が目覚めることを心の支えとするが、ついに会うことはできなかった。そして、何億年という果てしのない永い年月を経て、マサトという一個の有機体を起点に新たな生命が地球上に誕生する。
スタッフ
脚本:小林弘利 演出:鈴木卓夫