手塚治虫のライフワーク『火の鳥』の第10部です。
視聴率競争に追われるテレビプロデューサーの青居は、番組の人気回復のために、クローン人間をつくってハンターに殺させるという企画を考えて、アンデス山中のクローン研究所を訪れました。
そこで青居は、研究員の猿田とともに、クローン人間の秘密を知るインカの精霊の子孫鳥と出会いましたが、そこで何と青居自身のクローン人間をつくられてしまいます。
それは、欲のために生命をもてあそぼうとした青居に対して鳥が与えた罰だったのです。
テレビ局は、青居のクローンをハンターに殺させる番組をスタートさせましたが、本物の青居もターゲットにされてしまいます。
青居は、追っ手から逃げる途中で知り合った少女ジュネとの束の間の生活によって、忘れていた人間らしい心を取り戻し、殺されるためにだけ生み出されるクローン人間の工場を爆破する決心をしました。
1980/08-1980/12 「マンガ少年」(朝日ソノラマ) 連載
現在、世界中で社会問題となっているクローン人間について、手塚治虫は早くから大きな危機感を抱いていました。 人間が人間を人工的に作り出すことの恐ろしさやそこから生まれる悲劇を、手塚治虫はいくつもの作品の中で描いています。 そしてこの作品では、人間の生命をないがしろにしようとした男が、その目的によって、自分もその報いを受けることになるという皮肉な運命を描き、生命の尊厳はいかなる生命も等しいということを強く訴えかけています。 連載時は、青居がハンターに殺されたところで終わっていましたが、単行本化の際に、エピローグが追加されました。