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ストーリー

通り名悪右衛門は、誰も本名では呼ばぬ荒くれ武士。和泉の国の知事に命ぜられ、キツネたちを殺しまくるが、愛妻おくずに化けたメスギツネと一緒に暮らし始める。大学者安倍晴明の出生にまつわる「葛の葉」伝説手塚版。

解説

1973/09 「別冊少年ジャンプ」(集英社) 掲載

「悪右衛門」は、「別冊少年ジャンプ」1973年9月号に掲載された読み切り作品です。この作品は、歌舞伎などでも有名な「葛の葉伝説」を下敷きに描かれています。「葛の葉伝説」とは、人間の女性に化けた白狐と人間の悲恋物語で、「陰陽師」でも有名な安部晴明の出生にまつわる物語でもあります。手塚治虫が作家として高い評価を受けているのは、「鉄腕アトム」のようなSFだけではなく、「ブッダ」のような大河ドラマや「ブラック・ジャック」のような人間ドラマ、そしてこの「悪右衛門」のような民話調の作品も手がける、ジャンルの広さも理由の一つです。手塚治虫は、名作文学や演劇などを子供向けにマンガ化したり、作品の下敷きすることがよくありましたが、このような民話調の作品をあえて少年誌にて発表する点などは、子供に良心的作品を提供しようとする作家性のあらわれではないでしょうか。単純で粗暴だが心根はやさしい男・悪右衛門が、権力者・板倉左大将に利用され、傷つき、破滅していく悲劇は、のちの「火の鳥・乱世編」における弁太の原型とも言えます。手塚作品の中には「鬼丸大将」「シュマリ」など、男臭い主人公がその力強さで物語をグイグイと引っ張っていくものがありますが、この「悪右衛門」は、その“男臭い主人公”のパターンと民話を融合させた作品なのです。

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