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講談社 手塚治虫漫画全集「ふしぎなメルモ」 表紙用イラスト 1984年

ストーリー

食べると年齢が変えられる不思議なキャンデーを持った少女メルモが活躍する、幼年向けのファンタジーです。

メルモのママは、幼いメルモと弟のトトオを残して交通事故で死んでしまいました。メルモのことが心配でたまらない天国のママは、神さまにたのんでミラクル・キャンデーを作ってもらい、メルモに手渡します。

キャンデーは2色あって、青いキャンデーを食べると10歳年をとり、好きな大人になることができます。そして赤いキャンデーを食べると10歳若返るのです。

メルモはこのミラクル・キャンデーを使って、看護師や学校の先生、婦警さんなどに変身し、弟のトトオといっしょに、さまざまな困難をのりこえていくのです。

解説

1970/09-1971/03 「小学一年生」(『ママァちゃん』)
1971/04-1972/03 「小学一年生」(『ママァちゃん』 1971/10- 『ふしぎなメルモ』に改題)
1971/05-1972/04 「よいこ」(『ママァちゃん』 1971/10- 『ふしぎなメルモ』に改題)
(いずれも小学館) 連載

「肉体的な年齢を自在に操れるキャンデー」というアイディアはいかにも子供向けのファンタジーらしい設定ですが、そもそも「不老不死」だの、「永遠の命」だの、「いつまでも健康な体」だのといった人類普遍の夢も突き詰めたところ、「年齢を自在にあやつりたい」ということですから、メルモちゃんの持っているキャンデーもまた、火の鳥の生き血並みにすごいアイテムには違いありません。たまたまそれを手にしたのが幼い少女なら......、という無邪気で優しい物語です。

漫画にも若返りたい親戚のいじわるおばさんが出てきますが、テレビアニメのほうはメルモのキャンデーを狙うチッチャイナ国という独裁国家が登場しますので、キャンデーの魔力は大人をも魅了するようです。

主人公のメルモという名前は、変身を意味するメタモルフォーゼからきたものです。

もともとテレビアニメ用に企画された作品で、雑誌「小学一年生」に「ママァちゃん」というタイトルで連載が始まりました。しかしママァの名がすでに登録されていて使えなかったため、「小学一年生」の1971年10月号から『ふしぎなメルモ』と改題されました。

その後、雑誌「よいこ」と「てづかマガジンれお」でも連載が始まっていますが、「てづかマガジンれお」に掲載されたものは、ほとんど手塚プロスタッフによるものです。

テレビアニメは、手塚プロダクションが制作した最初のテレビアニメシリーズで、番組中に紙芝居風の性教育の解説を入れるなど、性教育アニメとしてアレンジされています。

主な登場人物

メルモ

メルモ

母を亡くした少女。寂しがっていると、ママが天使となって戻ってきて、ミラクルキャンデーを授かる。活発で明るい性格だが、時折ママがいないことを寂しく感じることもある。
>キャラクター/メルモ

メルモ

トトオ

メルモの母

トトオ

メルモの弟。利発で姉思い。あやしげなおばさんがキャンデーを狙ってやってきたときには、おとりのキャンデーの瓶をたくさん作っておばさんを困らせる。

メルモの母

ある夜、交通事故で亡くなった。一人残したメルモを心配し、神様に頼んだところ、大人になったりもどったりできるミラクルキャンデーをもらってメルモに渡す。

天使72号(右)、天使73号(左)

天使72号

メルモがキャンデーをむだづかいしないように天国からやってきた天使。ネズミの女の子の姿をしている。

天使73号

メルモがキャンデーをむだづかいしないように天国からやってきた天使。カエルの男の子の姿をしている。

天使72号(右)、天使73号(左)

手塚治虫が語る
「ふしぎなメルモ」

小学館 小学一年生 「ママァちゃん」 扉絵 1970年

「ふしぎなメルモ」は、テレビアニメのためにつくった漫画です。それも、虫プロの社長をやめて手塚プロを設立したとき、ご祝儀イベントとして企画した作品です。もちろんアニメの製作も手塚プロでした。

アニメのほうは、パイロット・フィルムでは、「アポロの歌」というタイトルでした。例の『少年キング』の「アポロの歌」とはなんのかかわりもありません。しいていえば、男女の"性"を扱っているという点だけでしょうか。しかし、パイロット・フィルムのおしまいにほんのちょっぴり「アポロの歌」の昭吾少年が登場するところがミソだったのです。

その後、このアニメのタイトルは、主人公の名の「ママアちゃん」にかわりました。同時に、幼年誌に連載がはじまり、はじめはたしかに「ママアちゃん」のタイトルでしたが、"ママアちゃん"では、アニメ商品にするには、"ママア"の名の登録がかなりほかでとられていてだめだったので、考えたすえ、"メルモちゃん"の名にかえたのです。"メルモ"ということばにはなんの意味もありません。ただ登録されていない語呂を探し出しただけです。

しかし、「ふしぎなメルモ」の裏番組が「サザエさん」だったこともあって、評判のよいわりにはかんばしくない視聴率で終わりました。
(後略)

(講談社刊 手塚治虫漫画全集『ふしぎなメルモ』 あとがきより抜粋)

小学館 小学一年生 「ママァちゃん」 扉絵 1970年

小学館 小学一年生 「ふしぎなメルモ」 扉絵 1972年

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  • ふしぎなメルモ

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