1955年
近未来、北極海上に原子力要塞の建設を進めようとする軍事国家の日本。要塞が爆発し大津波が日本を襲う様子を描いた破滅テーマのSF作品。
マンガ「大洪水時代」より
軍事国家となっている近未来の日本。
日本は北極海上に原子力要塞の建設を進めていた。
ところがその要塞が突如として爆発。
それによって発生した大津波が明後日の昼過ぎに日本の東海岸を襲うことが分かった。
それがテレビで報じられるや日本中が大パニックとなる。
一方そのころ,精神病院の病室にはそんな事情をまったく知らない数人の男たちが集まっていた。
要塞の建設に関わっている兄を妨害しようとして毒を盛られここへ閉じ込められていた海老原鯛二(えびはらたいじ)少年。
その兄と父、そして鯛二に毒を盛った実行犯の男とチンピラギャングのふたりである。
だが彼らが町の様子がおかしいことに気付いて地上へ出たときには、町はすでにもぬけの空となっていた。
そして間もなく地鳴りと共にビルの谷間をかき分けて大津波が押し寄せてきた。
1955年に雑誌『おもしろブック』の別冊付録として発表された読み切り作品で、『来るべき世界』に続いてノアの箱舟伝説"を下敷きとした破滅テーマのSFである。
「売国奴」「非国民」「疎開」など戦時中に使われた言葉を随所に登場させていて、それが世紀末的な緊迫感を一層高めている。