日本人は好戦的民族ではない

1980年

手塚治虫は、日本人は本来穏やかで、戦争を必要としない人間だと述べます。作られた国家意識により好戦的に仕立てられましたが、むしろ平和を説くのに適した民族だと考えます。

手塚治虫と横尾忠則の対談集 「宇宙意識の目覚め」より

ぼくは日本人というのは戦闘的な人間じゃないような気がするんですね。

戦闘的にさせたのは各時代の政府だったり何かで、日本人というのは、はっきりいうと最低必要量さえあれば、おとなしく生きてる人間じゃないかと思うんです。

 

それはまあ別としても、日本という島は大陸にも近いし、海流的にも外からどんどん来てまた行くような、ひじょうに環境のいい所にある島ですから、本来からいうと、待ってても物は入ってくるし、それが出て行くこともできますしね。

住みやすいんです。

四季もあるし、物も豊富だということになると、戦争なんかする必要はないわけです。

 

それを戦争しなきゃならない、あるいはひじょうに好戦的な民族と見られるようになったきっかけは、文明がたて続けに輸入されたり、あるいは作られた国家意識みたいなものが、無理やりに戦争に追いこんでいったような気がするんですよね。

 

マンガ ザ・クレーター「墜落機」原画より

マンガ ザ・クレーター「墜落機」原画より

そういうことを考えると、日本人ほど平和を説くには好都合な民族はいないような気がするし、あるいは人間というものをもう一度考え直す一つの実験台として、日本人というのは使いやすいんじゃないかと思う。

それだけにまた付和雷同的だしね。

講談社版手塚治虫漫画全集『手塚治虫対談集 1』「横尾忠則——宇宙意識の目覚め」より
(初出:1980年2月号 メジテーション 掲載)