虫ん坊

女王蜂・アヴちゃん 『どろろ』OP曲「火炎」について語る

2019/03/12

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女王蜂メンバー。左から、ひばりくん(Gt)、ルリちゃん(Dr)、アヴちゃん(Vo)、やしちゃん(Ba)

2019年1月から放送中のTVアニメ『どろろ』。OPを飾る曲「火炎」には、"アニソン"というジャンルでは括ることができない、多種多様な要素が取り入れられています。作詞・作曲を手掛けたのは、女王蜂のフロントマン、アヴちゃん。手塚作品を小学生の頃から読んでいたというアヴちゃんに、今回の楽曲に込められた想いを中心にいろいろお話を伺いました。



パーティは終わってたけど、それでも踊りたかったし、歌いたかった



――アニメ『どろろ』のOP曲「火炎」ですが、アヴちゃんの日記に16、7歳の頃から雛形があったと書かれていて驚きました。曲自体は以前から存在していたんですね。


アヴちゃん よく「書き下ろしたんじゃないか」と訊かれるんですけど、『どろろ』のお話をいただく前に、歌詞と曲も今の形がほぼ出来あがっていて。

アルバムかシングルか分からないけど、レコード会社から次は何を出すか聞かれたら、この曲を出そうと思っていたタイミングだったので、「あ、これは、呼ばれたな」って。宿命や運命をすごく感じましたね。


――「火炎」というタイトルについてですが、どのようなイメージから付けられたのでしょうか。


アヴちゃん 私のなかで火のメタファーって、踊ることなんですよね。
10代の頃、エネルギーがあまりすぎて、極限まで疲れないと眠れなかった時期があって。ある夜、眠れなくてじっとロウソクを見つめていたら、だんだん炎のなかに人間の影が2人見えてきて、ずっとくるくる踊っているんですよ。最後はロウソクが尽きて、ジュッと消えて。
そのときに、ああ、火は踊り続けているんだって。宿した命の熱が冷めた瞬間、終わっちゃうんだなって痛感したんです。それから、炎をモチーフにした曲を書くことが多くなって。その最古参の子が「火炎」の雛形だったりします。

本当、不思議なんですけど、「火炎」というタイトルもお話をいただく3,4日前に決まったんですよ。あと、設定資料をいただいて「百鬼丸には魂が炎として見える、嫌なやつは炎の色で分かる」と知って、本当に驚きました。「ガード固いんだけど漏れてた?」って(笑)。


――OP曲になることが決まったことで、雛形と完成形、大きく変化した部分はありますか。


アヴちゃん 書き下ろした頃は"起承転結"で作ってあったんだけど、殺陣シーンの絵を入れたいと言ってくださったので、歌わないトラックだけの16小節を入れて、"起承転"で押し切るアレンジに直しました。

女王蜂「火炎」OPノンクレジット映像


――制作陣から、リクエストなどはあったのでしょうか。


アヴちゃん 制作側からは「和楽器をもう少しフィーチャーしてくれませんか」と言われたりはしましたね。単純に "和"の世界観を入れるのは違うなって思ったから、コーラスの歌い方をこうしたら和楽器のように聴こえるんじゃないかとか、自分のなかのせめぎ合いはありました。今だからやれる表現をやりたかったので。

ラップパートはもうたのしかった(笑)。そこは"2018年2019年ver.の私"として新しく加わったところです。たのしかった。


――言葉のチョイスもそうですが、歌い回しにも遊び心を感じました。炎のメタファーをもとにした曲に対し、どういった心情を乗せて作られたのでしょうか。


アヴちゃん 女王蜂というバンドを結成して10年になるんですけど、義務教育よりも長く、好きなものと向き合い続けてきて言いたかったのが「Party is over それでも踊りたかった」ということで。

私は神戸出身で混血児なんですけど、阪神大震災を経験したり、百鬼丸とタイマン張れるくらい大変なことがありすぎて「人生、終わってんじゃん、あっちゃ~」って絶望していたんです。でも、なぜ、女王蜂を始めたんだろうって考えたときに、人生終わってたしパーティは終わってたけど、それでも踊りたかったし、歌いたかった、下手でもいいから、曲を書きたかった。諦めきれなかったんですよね。折り合いがつけられなかった。もはや、諦めることを諦めた。

バンドというアウトプットに出会わなかったらと思うと、ゾッとします。私の内包する灼熱のエンジンと熱量をそのまま置けたのがバンドという表現方法だったから。
破壊力もあって格好良くて、なにしでかすか分からない危ない感じも残せるグループって、バンドかヤンキーくらいだと思うし。勇気がいることだったけど、バンドをやることを選んだのは英断だったと思います。


――諦められない気持ちが「Party is over それでも踊りたかった」という言葉であり、バンドを続けてこられた原動力だった、と。


アヴちゃん はなむけですね。そのときの気持ちに対する弔いというか。この感覚は誰もがあるわけじゃないと思うんだけど、女王蜂を始める前の自分が喜ぶことをしたいんですよね。過去の自分には会えないんだけど、自分のことをジャッジしたり、鼓舞してくれるのは、その子とバンドのメンバーとスタッフでしかないから。当時の自分が納得するものを作りたいって思うんです。
大好きな手塚作品のOP曲の話をいただいたということについても「本当に、やったね」って言いたい。


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――完成したOP映像を初めてみたときはどう思われましたか。


アヴちゃん 可愛いと思いましたね~~!! カタカナじゃない、愛くるしいほうの"可愛い"。私たちも可愛らしさを大事にしないといけないから。これで、私が可愛らしくなかったら、ただのキレキレな人で終わってると思う(笑)。

『どろろ』もそうですよね。キャラクターとしてのどろろの愛くるしさがなかったら、それこそただ殺伐としたお話になっていたと思うし、百鬼丸の通訳がいないってなっちゃう。

特に、「ポン」っていう音に合わせて、どろろが指を出すところとか。印象的なシーンにバンバン手塚テイストが加わっていて。"アニメ"という媒体を通して作品愛も描いているなって思いました。


――『どろろ』の世界観にうまく調和していましたね。


アヴちゃん 先日受けたインタビューで「『東京喰種:re』EDテーマなどダークファンタジーへの楽曲提供が続いていますが、その辺はどう思いますか?」と聞かれたときにハッとして。腕が飛んだり、首が飛んだりするから、ダークファンタジーなのかなと思ったけど、私の中で『どろろ』は圧倒的に人間賛歌でしかなくて。
傍から見れば、女王蜂の音楽もダークファンタジーだと思われているのかもしれないし、私もオトコとオンナの狭間のように思われているのかもしれないんだなって。

多分、私は『どろろ』をダークファンタジーだと思ってないから、この角度で書けたのかなと思いましたね。



めっちゃなんでも出来るし、持っているんだけど、ひとつだけ手に入らない女の子っていうところが最高♥ (臼場)かげりちゃんとメフィストは絶対友達になれると思う



――手塚作品がお好きとのことですが、『どろろ』はいつ頃、どういうきっかけで読みましたか。


アヴちゃん 『どろろ』を読んだのは確か小学校2年生のときかな。ゲームもプレイするくらいすごく好きな作品。
今でもそうなんですけど、小学生のときから、とにかく文庫で手塚作品を集めていて、バンドでドラムをやっている妹と一緒に読んでいました。お母さんに「この漢字どう読むの」って聞きながら、小1くらいで『ブッダ』と『火の鳥』を読破して。
宝塚市にある手塚治虫記念館にもよく足を運んで、絵を描いていましたね。


――初めて、『どろろ』を読んだときの感想は?


アヴちゃん 手塚作品って、きちんと最後まで描いた作品の方が多いじゃないですか。でも『どろろ』の最後は「To be continued」で終わっちゃう。まだ子どもだったので「え? 5巻は」って。続きが気になって調べてみたら、「あれ? 手塚先生、もうこの世にいない......」みたいな。


――今回のお話をいただいてから、改めて読み返したりしましたか。


アヴちゃん 昨年の夏、実家に帰ったときに『どろろ』と『七色いんこ』を引き上げてきて読み返していました。
大人になってから読むと印象が違いますね。すごくグッときちゃった。一番泣いたのは、「白面不動の巻」のどろろのお母さんに化けた子の最後。最初、悪者だったのに、どろろを守って亡くなるでしょう。手塚作品って、こういうことを4コマくらいでやるから。頭がパンクしそうになるくらい起承転結のスピード感がすごいなって改めて感じました。

他にも好きなエピソードはたくさんあるんですけどね。「鯖目の巻」と「地獄変の巻」に登場するマイマイオンバのデザインも格好良くて好き。


――アヴちゃんがもし、『どろろ』の舞台となる戦国の世・室町時代に生まれていたら、どう生きていたと思いますか。


アヴちゃん 百鬼丸の初恋の子、みおの超サグいバージョンになっていたと思いますね。


――サグい(笑)。悪っぽいという意味ですよね。


アヴちゃん 主役級のキャラにタイマン張ってたと思うし、普通に。直接、醍醐景光に会いに行って「奥さんの声、全然聞いてないじゃん」って、「多宝丸のこともちゃんとして」って責めると思う。どろろには「冬は寒いから、服をもっと着て?」って言うし、百鬼丸に対しても「自分、妖怪倒しても良いけど、悪い奴だけにしなよ」とか言っちゃうと思う。作品としては、ギャルすぎて最悪の存在かもしれないけど(笑)。『どろろ』の世界のマザー・テレサとなって変革を起こしていたかもしれない。


――他にはどんな手塚作品を読まれているのでしょうか。


アヴちゃん 『人間昆虫記』と『ネオ・ファウスト』がすごく好きで。『人間昆虫記』は今年に入ってから、ずっと、読んでいます。毎日、読んじゃいますね、寝る前とか。『ネオ・ファウスト』も未完なんですけど、大人になってからは、この2冊がすごくフィットしている気がしますね。


――どういうところが特にフィットしていると思いますか。


アヴちゃん 手塚作品に登場するやけっぱちな美人が好きなんですよ。私自身もやけっぱちなところがあるからかも知れないですけど(笑)。めっちゃなんでも出来るし、持っているんだけど、ひとつだけ手に入らない女の子っていうところが最高♥ (臼場)かげりちゃんとメフィストは絶対友達になれると思う。「一緒にバンドやろう」って言いたいくらいあの2人は好きです。


――確かに、手塚作品のヒロインはクセがあって気が強いキャラクターが多いかもしれませんね。


アヴちゃん 特にこの2つの作品は、内容がすごく"手塚治虫"っぽいと思う。歳を取ってからもう一度やりなおすとしたらというアプローチや、模倣の天才が心や能力を盗んで盗んで盗み倒したらどうなるんだとか、手塚先生自身の神髄なんじゃないかって。『鉄腕アトム』とはまた違うシュガーレスな感じ。青年マンガとして描こうとしている挑戦的なところもすごく好きですね。


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十村十枝子(本名:臼場かげり)は、才女として、女優、デザイナー、作家と次々と名声を手にする。それは才能のある人間に近づき、心や能力まで相手になりきる術をもっていたからだった。主人公の悪女ぶりがとにかく魅力的で惹きつけられる。(講談社版手塚治虫漫画全集『人間昆虫記』より)


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人生に絶望していた一ノ関教授のまえに、悪魔・メフィストが現れる。メフィストと契約した彼は、自分の魂と引き換えに若さを手に入れるのだった。手塚治虫が最後まで病気と闘いながら描いた未完の作品。(講談社版手塚治虫漫画全集『ネオ・ファウスト』より)



表現においては、「今これがベストです」って思ってやることがすごく大事な気がする



――バンドを10年続けてきて、改めて振り返ってみてどうですか。


アヴちゃん イニシアチブを持って活動して"自分たちがやりたいことしかやらない"って、すごく責任を伴うんだなって。

私たち、10代でバンドを結成して、楽器を始めて1年半でメジャーデビューして、映画『モテキ』(2011年に公開された大根仁監督作品)のテーマソングに抜擢されてバンド出演して。あのとき、正直にいうと、実力がなかった。音楽性で評価されたのではなくて、年齢・性別・国籍不明でやってる子が世界に一組もいなかったし、ただラッキーなだけだった。表現欲求に対して実力が伴っていなかったんです。

レコーディングだって全然できないのに頑張っちゃって。すり減って活動休止して。実際、音楽を一度やめようとしたし、正直、地獄なんてなまぬるいと思った。本当の牢獄って、砂漠なんだなと思いました。カラッカラに乾いた砂のような虚無しかない。そんな状況だったんです。


――そんな強烈なジレンマを抱えていた時期もあったんですね。


アヴちゃん もう、二度と戻りたくないけど、逆に、そこを経験しても、歌いたかったし踊りたかったんだって自信にもなりましたね。

今はいろんなカタチを併発したいって思いますね。手塚作品をはじめとしたいろんなものをインプットして、そこから感じ取ったものをアウトプットし続けてここまで来たから。恥ずかしくても良いから挑戦する。その情熱が伝播していくといいなって思う。『どろろ』だって、未完でしょ。完成されたものだけがよいものじゃないと思うから。


――アヴちゃん自身も完璧じゃないものや熱量と見合っていなかったものでもどんどん発表していったから今があるという。


アヴちゃん そうしていなかったら、今ここにはいないと思います。完璧な2、3年を過ごして、飽きて終了していたんじゃないかな。「もっとこうしたい」って考える余地がないから。

最初は色鉛筆でもいいから、今持てる画力でベストのものを描いて、次は水彩画、油絵って、画材もどんどんレベルを上げていって。上手くなった状態でまた色鉛筆で描きはじめたり。表現においては、「今これがベストです」って思ってやることがすごく大事な気がする。その積み重ねですね。


――今後、バンドとして挑戦していきたいことはありますか。


アヴちゃん 私個人としては、8月末からミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」という2人芝居に挑戦するんですけど、バンドと違って、千秋楽、終わりがあるので、やり抜くというのがひとつの挑戦です。演じることによって、新しい視点や技を身に付けられるし、そうやって成長し続けていくことが女王蜂にとっても健康的なことだと思う。

バンドとしても丁度10年ということで、いろいろ仕込んでいるので、期待していてほしいですね。


――「火炎」のツアーが2019年4月から始まりますが、『どろろ』ファンの方に向け、ひとこといただけたらと思います。


アヴちゃん マンガやアニメが好きなら、女王蜂のライブは絶対ハマると思います。マンガやアニメと一緒で、世界観に浸ってもらえると思うし、同レベルでありえないことが起きているから。私たちも、やけっぱちな綺麗どころを揃えてるように見えるかもしれないけど、普通に中身はヲタでギャルでヤンキーで可愛らしい人たちなので、怖がらずに勇気を出して観に来てください♥

女王蜂 『火炎(FIRE)』Official MV

女王蜂 プロフィール
2009年結成。アヴちゃん(Vo)、やしちゃん(Ba)、ルリちゃん(Dr)、ひばりくん(Gt)の4人からなるバンド。
高音と低音を使い分ける個性的なヴォーカル、独創的かつ衝撃的なパフォーマンスが音楽業界のみならず各方面で話題騒然となり、2011年メジャーデビュー。圧倒的なステージによって、話題・実力共に音楽シーンを席巻。2019年には結成10周年を迎え、リリース、LIVEともに精力的に活動中。

Release、Tour Information
◎New Single『火炎』Now On Sale
◎"全国ツアー2019 「十」-火炎-" 4/17から開催

女王蜂OFFICIAL SITE http://www.ziyoou-vachi.com/
女王蜂 公式twitter @qb_announce
女王蜂 アヴちゃんtwitter @qb_avu


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