制作スタッフでしか語れない裏話や制作過程などが語られた、トークイベントの模様をお届け!
アニメスタジオの合同イベント『アニメスタジオミーティング(アニスタ)』が2月9日、10日の2日間、東京・秋葉原にて開催。その一環として、アニメ『どろろ』のスタッフトークショーも行われ、音楽担当の池頼広さん、キャラクター原案の浅田弘幸さん、シリーズ構成の小林靖子さん、株式会社MAPPAのプロデューサー、大塚学さんと木村誠さんの5人が登壇しました。
冒頭、中央の大きなモニターにOP映像が映し出された後、大きな拍手と共に制作スタッフ陣が登場。それぞれ、メインとなる5つのテーマとともにお話が展開していきました。
その1 どろろ制作スタッフィングの裏側
大塚学さん(左)と木村誠さん(右)
今回のスタッフの人選について、まずはプロデューサーである大塚学さんと木村誠さんを中心に伺っていきます。
まず、古橋一浩監督の起用理由として「当時『将国のアルタイル』で監督を務めていた古橋さんが、『るろうに剣心』といった時代劇のアニメを経験されていて、『どろろ』という作品にものすごく興味を持ってくれたのもあり、本作の監督をお願いしました」と大塚さん。
シリーズ構成の小林靖子さんと音楽の池頼広さんに関しては「シリーズ構成の小林さんと仕事で関わるのはこれで4作品目になるのかな。絶対、小林さんにお願いしたいと意見が一致して。音楽の池さんも付き合いが長く、初期の段階(2016年)から具体的なイメージを持ってお話していました」といいます。
今回の制作スタッフのなかで一番難航したのがキャラクター原案。
手塚マンガの絵を活かしてアニメ化するのが良いのか、他の方に描いてもらうのがいいのか、いろいろ話し合っていた時に、木村さんから「浅田(弘幸)先生はどうか」という意見が出たそう。お二人とも以前から浅田さんのファンだったそうで、「浅田先生が描かれた手塚キャラの絵を拝見したとき、すごく愛を感じて、こういう方と組んでやることで新しいアニメが作り出せるんじゃないかと思いました」とオファーした理由を語ります。
オファーを受けた浅田さんからは「オファーが来て1週間後が締切だったんです」という話も。浅田さんに是非お願いしたかった気持ちと共に「締切が1週間ですみませんでした」と謝罪する木村さんに、会場から笑いがこぼれる場面も。
更に、大塚さんから「この話を初めて聞いたとき、どう思われたのか」と聞かれた小林さんは、当時、「タイトルはもちろん知っていたけど、原作は読んでいなかった」と話し、「タイトルが大きい分、ありがたいとか嬉しいよりも、オファーをいただいてすぐ、いまやるにあたってどうやればいいのかを考えましたね」と気持ちを述べていました。
その2 浅田先生のキャラクター原案の公開
浅田弘幸さん
次は、キャラクター原案を手掛けた浅田弘幸さんを中心にトークを展開。
1週間で描き上げたコンペ用の百鬼丸は今より年齢が高めの設定だったそうで、そのあとの打ち合わせで古橋監督から「話が相当殺伐としていて、エグイ表現も多いので絵柄くらいは可愛くしたい」という意見をいただいたそう。それに対し浅田さんは「百鬼丸も年齢を下げて、手塚先生の原作に近づける形で描いてみることになりました。あとは、傀儡的なキャラクターなので、表情が動かなくてもしっかり存在感があって、佇んでいるだけで何かを醸し出しているというのを意識しましたね」と百鬼丸の絵について説明します。
「手塚先生の絵ではない、というところが一番心配だったんですけど、そこは、絶対伝わるだろうなという気持ちで描きました。僕も手塚先生の遺伝子が入っているので、なにかしら出せているのではないかと」と浅田さん。
提出された原案は、1話2話の脚本を元に描かれたそうで、「脚本を元にキャラデザを上げていただいて、(小林)靖子さんはどう感じましたか」という木村さんの質問に対し小林さんは「いっぱつで好きになってしまいまして。監督が仰るとおり、お話が殺伐としていますし、百鬼丸は感情移入しにくいキャラなので、絵に救っていただいているなと。絵を見て好意を持っていただけるなあとすごく安心しました」と語っていました。
どろろのキャラクター原案
どろろのキャラクター原案に関しては、この絵からほぼ直しが入っていないそうで、大塚さんからは現場の声として「『どろろ』という作品はなるべく3Dを使わず作画でやっていこうという方針があったので、百鬼丸もどろろも、とてもやりやすく浅田先生に落とし込んでいただいて、現場も喜んでいました」と伝えます。
司会者からの「この先、注目して欲しいキャラクターはいますか?」という声に、浅田さんは「多宝丸のお付きのものが2人いるんですけど、彼や彼女もすごく素敵なんじゃないかなと期待しています」と答え、小林さんもすかさず「すごく格好良かったです、あの2人。是非、楽しみにしていてほしいです」と語っていました。
その3 音楽での世界観表現
池頼広さん
続いて、音楽を担当されている池頼広さんを中心にお話を伺っていきます。
「どろろの世界観を作る上で意識したポイントは?」と司会者から尋ねられると「監督と大塚さんからいろいろとリクエストがあって。そのリクエストがあまりにもタフなので、結構大変でした」と池さん。
タフなリクエストというのが「和風のジャズでどろろのテーマを作ってほしい」や「ジャングル大帝みたいにコーラスの入った大きなオーケストラの曲がほしい」、「和太鼓でドンドコやってほしい」といった内容だったそうで「オケ録って、ジャズ録って、邦楽器録って......。歌舞伎座に出ているような、家元クラスの方々をお呼びして。壮大な企画になりましたね」と制作の苦労をのぞかせていました。
それに対して、プロデューサー側も「アフレコの次にダビングという音を付ける作業があるんですけど、そこでお聴きして、これは"大河" かなって。それくらい迫力があり、素晴らしかったですね(大塚)」、「多様な音楽でどろろの音楽を作っていただけたなって思っています(木村)」と賞賛。
浅田さんからは「良い意味でアニメっぽくない、ちゃんとした時代劇を観ているような感覚になりました」、小林さんからも「映像作品って、音楽が占める役割がめちゃめちゃ大きくて。どんなシナリオを書こうが演出をしようが、音楽ひとつで全く作品が変わってしまう。今回の『どろろ』はセリフを極力減らして描こうとしている作品なので、そこをうまく重厚な音楽で盛り上げていただいていて、すごいなと感動しました」と絶賛の声が上がっていました。
その4 "どろろ"の物語を紡ぐ!
小林靖子さん
テーマは"物語を紡ぐ"ということで、シリーズ構成を務める小林靖子さんを中心にトークを展開。
『どろろ』をアニメ化する上で一番意識したポイントについて「原作とは少し変えるというお話は最初からありましたけど、昔のものをそのままリメイクしても今やる意味がないというのがあって。明確にテーマを「こうだ!」と決めるのではなく、試行錯誤して作っていったので、なかなかひとことで言い表せないですね」と小林さん。
視聴者の間でも話題になっていた、"5話までひとことも話さない百鬼丸"という演出についても「百鬼丸が身体を取り戻すというところが『どろろ』の一番の特徴で物語の筋。そこをはっきりどう描くのか、いろいろ考えた末、本当に身体を失った人を表現できるのって映像ならではだと思ったんです。そこを無理なく表現していった結果、5話までしゃべらないことになってしまいました」と説明。「声を取り戻しても無理にしゃべらせないようにしたため、百鬼丸に感情移入しづらいポイントとなってしまった」と語っていました。
基本的に小林さんにお任せではあるものの、古橋監督も「失ったものを取り戻した後どうなるのか、観ている側にきちんと伝わるように描いていこう」と意識していた模様。
木村さんも「天下統一と引き換えに実の息子である百鬼丸の身体を鬼神に差し出す、という手塚先生の強い設定をベースに靖子さんに組み立ててもらったんですけど、しゃべれなかったり人の姿が炎として見えたり、(百鬼丸のキャラクター性を)強調していただけたのが話の起点になった」とコメントを返していました。
その5 手塚作品を手掛けるにあたって
最後は、登壇者全員に質問を投げ掛けます。
「『どろろ』は未完の作品なわけですが、この先どうなっていくのか。言える範囲内でお願い致します」という気になる問いに対して「靖子さんどうですかね」と間髪入れずツッコむ木村さん。
『どろろ』をリアルタイムで読んでいたという池さんも「僕の世代は『どろろ』の最後は気になりますよ。黙っちゃいられないところですからね(笑)。どうなるんですか」と畳み掛けます。
「意識していたのは、例えば、百鬼丸が手を取り戻すことや手があることが良いことである、という風に表現しないということ。命のやりとりもそうですし、今の価値観や倫理観を持たせないことを意識しました」と小林さんはいいます。
また、原作と異なる設定として、身体を48箇所奪われるところを12箇所にした点については「奪われた身体を取り戻すほどに百鬼丸の特徴がなくなってしまうんですよね。仕込み刀とか、折角、面白いギミックなのに、そこを活かしたアクションをなくしてしまうのは非常にもったいないので、取り戻す順番にも拘ったり。どの箇所を奪われるかについてもかなり揉めました。「胃を取り戻した」って言っても映像ではちょっとやりにくい(笑)。そこはいろいろ大変でした」とコメント。
第3話「寿海の回」など、アニメのオリジナルエピソードに関しては「なにしろ、百鬼丸がしゃべらないし、あまり感情を表に出せないので、どろろをはじめまわりのキャラクターが考えたり、百鬼丸を通して変わっていくことになる。寿海にもなにかドラマが必要になって、ああいうエピソードになったんです」と語り、終始、気になる内容に集中し、トークパートが終了。
今後行われる、アニメイトとのコラボカフェや舞台『どろろ』のお知らせなどを挟み、最後は登壇者の皆様から本日の感想とひとことをそれぞれ順番に伺います。
「まだアニメでかかっていない曲もたくさんあるので楽しみにしていただきたいですし、サントラが出たら是非聴いていただきたいと思っています。『どろろ』の今後の展開を一緒に気にしていきましょう(池)」
「本当に先の先までキャラクターがたくさんいますので、注目して観ていただきたいのと、『どろろ』という大好きな作品に携われて嬉しくて仕方ないです。最後まで必ず面白いと思いますで、観てください(浅田)」
「この先の『どろろ』は、あまり親切な作りにはなっていないのですが、最後まで観て応援していただけたら嬉しいと思います(小林)」
「アニメの現場はまだまだ制作中です。監督や(キャラクターデザイン担当の)岩瀧さんを中心に最後まで走り切って、1話ずつ魂を込めて作っていきますので、最後までよろしくお願い致します(大塚)」
「アニスタはスタジオが連携したイベントなんですけど、今後も、スタジオが作品を盛り上げるような場を作っていきたいと思いますので、よろしくお願い致します(木村)」
会場の皆さんの盛大な拍手で見送られるなか、約1時間のイベントは幕を閉じました。
全部で2クール、24話で放送されるアニメ『どろろ』。これからの展開が非常に期待されます。是非、ご覧になってください!
関連情報
★テレビアニメ「どろろ」公式サイト
https://dororo-anime.com/
★TVアニメ「どろろ」×アニメイトカフェ
https://cafe.animate.co.jp/event/dororo-anime-1902/
★舞台「どろろ」公式サイト
https://www.dororo-stage.com/
★人形劇団ひとみ座「どろろ」公式サイト
https://dororo.hitomiza.com/
★テレビアニメ放送中! 「どろろ」情報
https://tezukaosamu.net/jp/mushi/entry/14920.html