私たち人間のみならず、すべての生き物が持っている、という「遺伝子」。親から子供へ受け継がれていき、身体的特徴やどんな病気のリスクがあるのか? はては性格的な特徴までが、遺伝子を解析することで分かってしまう!
まるでSFみたいなお話ですが、それが今や、物語の話ではなくなってきているようです!
7月7日、ジェネシスヘルスケア株式会社が、「手塚治虫遺伝子解析プロジェクト」の実施を発表しました。トレードマークのベレー帽に残されていた遺髪や血縁者の遺伝情報から、なんと、手塚治虫のDNA情報を解析することに成功しました!!
本プロジェクトは手塚眞監督によるテレビCMも作られ放送される予定です。
今月の虫ん坊では、テレビCM撮影現場に潜入しました!
手塚治虫のような人物は、どのようにして生まれるのか?! 「GeneLife Genesis(ジーンライフ ジェネシス)」などの個人向け遺伝子解析キットを販売するほか、法人・医療機関向けに遺伝子解析サービスを提供する研究会社、ジェネシスヘルスケアが、今回、手塚治虫の遺髪や血縁者の遺伝情報から、手塚治虫のDNAを解析することに成功しました。 その情報の一部は一般公開もされ、手塚治虫の性格的特徴などが明らかにされる予定とのこと。それに合わせて、手塚眞監督による、テレビCMも制作されました。
火の鳥も登場するテレビCMには、手塚眞のほか、なんと手塚眞と手塚眞が演じる手塚治虫も登場します。CG? いえいえ、特殊メイクでの出演となります。
まずは、「手塚眞」出演パートを撮影。演出は手塚眞が自ら担いました。
モニターで入念にチェック。いろいろなセリフを何カットも撮っています。どんなセリフが放送されるのか、お楽しみに。
CMの制作は白組。一部CGなども使いながら、現代に手塚治虫をよみがえらせます。
手塚治虫役で出演し、自ら演出も手掛ける手塚眞に、お話を聞きました。
——今回は、俳優と監督を兼任されるそうですね。
手塚眞(以下、手塚):クライアントから直接、手塚プロと私のところに依頼がきました。
初め、私の構想では手塚治虫と火の鳥だけが出てくるプロットで考えていたのですが、どうしても私にも出てほしい、というクライアントの要望があったのです。なにも自分で自分を出そう、と思ったわけではないです(笑)。
——やはり、遺伝子についての映像だから、血縁の方を出したい、ということでしょうね。
手塚:遺伝子情報や遺伝子検査って、まだあまりなじみがないと思うんです。それをたった30秒のCMで説明するのは極めて難しい。今回はむしろ、そういう詳しいことはWEBサイトのほうで説明をして、それを見てもらうためのきっかけとなるCMとして作ることになりました。
遺伝子検査というと、ちょっと怖いイメージもあると思うんですよ。でも、実際はもっと広い意味で活用されています。そういうことも知ってもらえるといい機会かな、と思います。
——白組にご協力をいただくことになったきっかけは何でしたか?
手塚:今回のプロデューサーとは、以前「実験映画」でお仕事をしたことがあって。そのご縁でご一緒することになりました。白組は、実写とCGの映像を絶妙に合成できる技術を持っている日本の会社としては一番だと思っています。今後もいろいろな仕事でお付き合いができればいいな、と思っています。
現在では、CGなどを駆使すれば、映像の世界ではできないことはほとんどなくなってきているんです。問題は条件に合わせられるか、というところが一番難しいですね。予算やスケジュールに合わせて、いろいろなやり方を検討します。時間さえあれば、手塚治虫をフルCGで作ってもいいわけです。
——今回手塚治虫を特殊メイクで登場させる事情は、そんなところにもあるんですね。
ところで、実際に「手塚治虫」を演じてみて、どうでしたか?
手塚:あまり違和感はなかったですね。血縁でも自分とまったくタイプが違う人物だったら難しいと感じると思いますが、父と私は自分でも結構似ているな、と思うので。まあ、なんとかなるんじゃないか、と…。でも、メイクで似せていこうとすると、やっぱり違うものですね。あごやおでこの形はずいぶん違うし、厳密にいえば目や鼻の位置も微妙に違いますし。
ただ、仕事をしている場面があるので、そこはそういう気分にならなくてはいけませんから、そこがまあ、難しいところかな、とは思いました。
——覚えていらっしゃる、手塚治虫の動きの上での癖って何かありますか?
手塚:意外と動きが早いですよね。ちゃきちゃきしている、というか。一般的なイメージだと、鷹揚でゆったりしている、みたいに思われているかもしれませんが。
母の意見だと、普段の動きは基本的には私と同じだそうです。
あと、今回の撮影とはあまり関係ないですが、人に会う時にやたらに頭を下げる、という癖もありましたね。
たぶん、原稿が遅れて謝ることが多くて、そういう癖が染みついてしまったんでしょうね。
浦沢直樹さんによると、一度だけパーティで出会った時に、当時の浦沢さんの担当だった編集者の長崎さんが隣にいらしたのですが、父は長崎さんの顔をみるなり、「どうも、どうも」なんて言いながらすっと逃げちゃったそうです。長崎さんは父の担当だったころもあったみたいですからね。苦手意識があったのかも(笑)。
長崎さんによれば、父は彼には、ずいぶん優しかったそうですが……。
——今回、手がアップになるシーンがありますね。
手塚:ほんの一瞬ですが、手塚治虫の手の中に、火の鳥が入ってゆく、というシーンで写ります。実は、父は左手だけ、俗に「百握り」といわれる手相の持ち主。私は両手がそうなんですが、左手だけ大写しにすると、同じだから面白いかな、と思いました。
——代理の手のタレントさんは使われなかったんですね。
手塚:こればかりは私の手じゃないと(笑)。
ドラマなどでは役者さんに手塚治虫を演じていただいた例はありますし、有名な役者さんが演じることで話題になるということもあると思うんですが、今回のCMはテーマ上、少しでも、手塚治虫本人に実際に似ているところを映すことができれば、説得力も増しますよね。
——演技をすることは苦にならないでしょうか?
手塚:実は、私は初めのころの映画ではけっこう自分で出演しているんですよ。特殊メイクまではいかないまでも、メイクしてかつらをかぶったりして、別人になりすまして出ていたり。クレジットにも別の名前で載せたりしてね。声も、別の人に声を吹き替えてもらったり…。
学生映画のころって、役者も監督ももちまわりなんですよ。それがあたりまえだと思ってるところはありましたね。
それに、私が映画を作りたい、と思った原体験って、チャップリンの映画なんですよ。チャップリンって、基本的には自作自演じゃないですか。チャップリンから映画を知ったので、映画ってそういうものなのかな、という気持ちがありました。
でも、今回のように仕事となると、それぞれの役割を兼ねなければならないので、やっぱり難しさもあります。そこのところはスタッフのみなさんに助けてもらいながら、やっています。
——普段は映画を撮られることが多いですが、CM撮りならではのむずかしさというのはありますか?
手塚:やはり、クライアントがあるものですから、厳密さは求められますね。映像もきれいに仕上げなければならないし。そういう点では、冒頭にも話しましたが、クライアントと直接話しながらできるというのは、やりやすいです。
——ありがとうございました。
さて、いよいよ、手塚眞演じる手塚治虫の登場! 3時間ほどの時間をかけて、特殊メイクが施されます。
特殊メイクアーティストは、百武朋さん。
やはり一番特徴のある鼻から…。写真をチェックしながら。
恰幅の良い手塚治虫の輪郭を再現します。
形が違う、というあごも素材を貼って、調整します。
女性にはおなじみのファンデーション以外にも、絵の具やエアブラシ! などで肌の質感をなじませていきます。
トレードマークのベレー帽とメガネが加わると、やっぱり一気に雰囲気がでますね!
そして7月7日、ジェネシスヘルスケアによって、手塚治虫遺伝子解析プロジェクトの発表が行われました!
その中で手塚眞が再び手塚治虫のメイクで登場、今回の解析によって判明した手塚治虫の性格的特徴などについて、遺族の視点でコメントしました。