今ではマンガでいろんな職業のヒーローを主人公にするのは一般的になりましたね。中でも人気が高いのは、やっぱり裏側がなかなかしろうとには分からない警察官や消防士、弁護士や医師、といった、専門性の高い職業の世界を描いたものでしょう。
手塚マンガにもさまざまな職業のヒーローが登場しますが、職業モノマンガの旗手といったらやっぱり「ブラック・ジャック」! 現役の医師の先生がたにも「読んだことがある」「影響を受けた」という方が多数いらっしゃる、とのこと。
そんな「ブラック・ジャック」を名前に掲げ、外科医の仕事を実践を通じて子どもたちに紹介する取り組みが、製薬会社ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニーの主催で、各地の病院で開催されているのをご存知でしょうか。
今月の虫ん坊では、その「ブラック・ジャック セミナー」について、ご紹介します!!
「皆さん、『ブラック・ジャック』はご存知でしょうか?」
「ブラック・ジャック セミナー」は、医療機器・薬品などのメーカーであるジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社が、近年の外科医を目指す人が減っている現状をなんとか改善しようという目的で開催している、小学生〜高校生向けの医療体験セミナーです。大きな病院や大学の医学部を会場に、実際に医療現場で使用されている器具を使う体験が出来る、ということで、年々参加希望者も増えているそうです。
今回の会場は、東京都・旗の台にある昭和大学病院。昭和大学医学部消化器・一般外科の先生方が忙しい時間を縫って、4時間ほどみっちり教えてくださいます。これは、かなりレアな体験であることは間違いありません!
今回の参加者は小学生から中学生までの26人。先ほどの『ブラック・ジャック』は知っていますか、という質問には、半分ぐらいの方が「知っています」と手を挙げていました。学校の図書館などで出会うことが多いとか。
セミナーは昭和大学病院・副院長の村上雅彦教授からのレクチャーで始まりました。どんな厳しい講義かな…!? と緊張の面持ちの参加者たちでしたが、「外科医ってどんな立場なの?」といったお話から、チームワークの大切さのお話などを噛み砕いてやさしく講義してくださいました。
【切除器具体験コーナー】
がんの出来てしまった胃から、悪いところを切って取り除き、 残ったところをつなげる実習コーナー。 「消化器のしくみとは…」まずは身体のしくみの講義です。 「もう理科で習ったかな?」。 |
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スポンジ状の胃の簡単な模型をつかって実習します。 「こんな手順で切除しますよ」。 |
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つかわれるのはこのような、 先端にはさむところがついた棒状の器具。 はさむところには、奥に並んでいるオレンジの器具をはめて 使います。真ん中にカッターが走る溝がついていて、 両側にはホチキスの芯のようなものがついている、という 仕組み。切りながら縫合もできるという優れもの。 |
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真剣な表情で実践をしています。 切りたいところにはさんでボタンを押すと、 カッターが動いて切りながら、両側をがしゃん、と ホチキスが閉じてくれます。 |
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管状の器官のための、丸い形状の器具もあります。 胃と十二指腸をつなげます。 |
【手術縫合体験コーナー①】
こちらは、鉗子(かんし)を使って専用の針で傷口を縫う 体験が出来るコーナー。傷口の模型はスポンジです。 |
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まずは鉗子の正しい持ち方から。「薬指と親指で…」。 使い慣れない道具を始めて使うのはなかなか緊張します。 |
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根気良く説明をする先生。普段は何気なく使いこなしている 道具だからこそ、説明もなかなか難しいのかも知れません。 |
【手術縫合体験コーナー②】
こちらは2本のゴムを血管に見立てて、外科医がいつも 使っている糸の結び方の実践です。 血管を切断するときには、ちゃんと糸で結んでおかないと 血がもれてしまうので、緩んだりせず、手際の良い 糸の結び方が必須なんです。 |
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何重も結び目を作ってきっちり止血。 コツを覚えるとけっこう楽しい!? |
【内視鏡手術シミュレーション】
こちらのコーナーでは、モニターごしに器具を操作する コーナーです。手前のドーム状のものがおなかの想定。 いくつか器具を入れる穴を開けて、患部を治療する、 「内視鏡手術」の体験です。手元が見られず、モニターしか 見られないというのは案外難しい! |
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ビーズを拾うのはまあ、なんとかなりそうですが、 ピンにゴムをかけたり、それを糸で縛ったり! 指先でも細い糸を結ぶのは難しいのに… |
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「さあ、何分でできるかな?」器具をつかって、さらには モニター越しということで皆さん苦戦してました。 実際の治療でも、血管を縛ったり、患部を取り除いたりという細かい作業が要求されます。 |
【超音波メス体験コーナー】
こちらは開腹手術を想定。 鶏肉をつかって、超音波メスでの切開・切除を体験します。 |
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刃の部分が1秒間に5万回振動して、肉を切ります。 だから、超音波メス。 |
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マークをつけた患部を、メスでくりぬいていきます。 | |
「最近では腹腔鏡手術が多くて、開腹手術のように 額を突き合せて患者さんのおなかの中を 覗き込むようなことも少なくなりました」ということです。 ブラック・ジャックの世界では、外科手術というと こんな感じですよね。 |
実習修了後には、村上先生から参加者の皆さんに修了証が配られました。
◇修了後、村上先生にお話を伺いました。
——昭和大学病院としては、今年は何度目のセミナーになるのでしょうか。
村上先生さん(以下、村上):
今年で4年目になります。始めたばかりのころはどうなるかな、と思っていましたが、毎年受講生も増え、好評をいただいているようです。
——今回、教えてくださった先生方は、どんな方がたなのでしょうか。
村上:
現役3年目の医師からベテランまで、科内総出で参加しています。
——セミナーを通して、伝えたいことはなんですか?
村上:
外科医は確かに、年々不足してきているんですよ。進路を選ぶ早い段階で、外科医という仕事に具体的なイメージを持ってもらいたいと考えています。最近は、せっかく医学部を受けても、外科は大変だから、と別の科を選ぶ学生が多くなってきています。若い人ほど、労働条件にシビアになってきました。確かに外科医は体力的にはきつい仕事ですが、その分、チームワークも育ち、科内の人々は結構楽しくやっています。そんな雰囲気も少しでも伝えられていればうれしいです。
——外科医のやりがいとは?
村上:
やりがい、というニュアンスではないのかも知れませんが、人を手術して助けることが出来るのは外科医だけなんです。それは誇らしいことでもあり、手ごたえを感じられることでもあると思います。
このセミナーを受けた方も、ぜひ外科医を目指してがんばってほしいですね。
◇参加者にもお話を伺うことができました!
——体験はどうでしたか?
参加者:
双子のきょうだいと一緒に参加しました。覚えることが沢山あって、難しそうだな、と思いましたが、参加してよかったです。
——一番むずかしかった実習は?
参加者:
モニターをみながら、ビーズをつかむ実習です。また、基本的な、紐の結び方のようなことも、ふつうとはちがうのが面白かったです。
縫ったり、肉を切ったりするところは家庭科の授業みたいでもあって、ちょっとイメージがかわりました。
——応募のきっかけは?
参加者:
学校の理科室に張り紙がしてあって、それを知ったお父さんが応募しました。
——外科医を目指したいな、と思いましたか?
参加者:
思いました! がんばってなれたらいいな、と思います。
「ブラック・ジャック セミナー」な全国の病院・大学で行われています!
もし、あなたの学校で張り紙を見かけて、興味があったら応募してみてはいかがでしょうか?