今月のオススメデゴンスでご紹介するのは『ブラック・ジャック』より「タイム・アウト」。
困難と思えるような状況でも、その天才的な技術で手術を成功させる姿はまさにかっこいい!の一言に尽きます。
「タイムアウト」は『週刊少年チャンピオン』昭和51年2月23日号に掲載されました。映画「ブラック・ジャック ふたりの黒い医者」では、冒頭のエピソードとしてストーリーに組み込まれています。
建設会社のトラックに積み込んだ大量の鉄骨が崩れ落ち、そばにいた小さな子供が下敷きになってしまいました。子供は何とか生きてはいるものの、鉄骨の間に挟まれ外に出す事もできません。しかも、鉄骨の山はいまにも崩れ落ちるかもしれないという状態。そこに偶然居あわせたブラック・ジャックは鉄骨の下にもぐりこみ、子供の様子を見て言います。「体を4個に切れば取り出せるだろう」。
命を助けるために、一時的に人体を物として扱うという「価値観の切り替え」もさることながら、ギリギリの時間の中で極限まで高まっていく緊張感には、読者も否応無く引き込まれていくことでしょう。「ブラック・ジャック」は手塚治虫の高い構成力が存分に発揮され、短編集としても名作揃いですが、「タイムアウト」の手術シーンにおける緊張と緩和は、作品中でも出色の出来だと言えます。
そして、さらにこの「タイムアウト」のおすすめポイントを挙げると、ブラック・ジャックのかっこよさでしょう。最初から最後まで、とにかくクールで「ブラック・ジャックらしい」のです。「ちぢむ!」や「ときには真珠のように」のように、ブラック・ジャックの敗北を描くことで名作が生まれることもありますが、やはり手術の天才・ブラック・ジャックがいてこその「ブラック・ジャック」なのです。