10月29日から宝塚の手塚治虫記念館で開催されている「
今月の「虫ん坊」では、そんな星新一さんの娘さんで、現在、星ライブラリの代表を務めていらっしゃいます星マリナさんにインタビューしました!
展覧会とあわせて、ご覧ください!
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企画展「星新一展 〜2人のパイオニア〜」開催
家での父は、一言でいうと「半透明な人」ですかね(笑)。家が仕事場で、創造および想像の場だったので、肉体的には存在しているけど、意識は常にどこか、未来とか異次元に飛んでいるわけですよ。だから、いるけどいない。
ソファに横になっているのは抜け殻で、本人は宇宙に行っていたんだと言われたら、そうだったのか、と納得してしまう、そんな感じです。
そうそう、ある日、駅の近くに、おせんべいの専門店ができたんですよ。父はおせんべいが好きなので入ってみたら、お店のおじさんが手塚さんそっくりだったんです! ベレー帽をかぶって黒いメガネをかけて、年齢や背の高さも同じくらいだったと思うんですが。お店を出てから、「あのおじさん、手塚さんに似ているね。ファンなのかな」という話をしたのを覚えています。
父はその後も、引っ越すまでずっとそのお店に通っていました。そのお店、今はもうないみたいですけど。
父が旅先で買った小物をたくさん並べて展示するのですが、これは今春の世田谷文学館での星新一展の際にはまだ遺品整理の終わっていなかったもので、今回初公開です。
どれも、ものすごく小さいんですが、実際の建物、動物、人間などを頭の中でこれぐらい小さく縮めたら、地球や宇宙の全体像が見えるのかもしれません。
中学生の頃に読んで夢中になったのは、「ブラック・ジャック」「火の鳥」「鳥人大系」ですね。その前は、テレビで観ていた「リボンの騎士」や「鉄腕アトム」です。
「ブラック・ジャック」は、家族が読めるように、今英語版を買いそろえているところです。夫も子供たちも日本語が読めないので。「ブッダ」「MW」などは、私も最初から英語で読みました。ハワイの本屋で、手塚漫画の英語版を普通に買えるのはすごいことだと思います。
一番好きなのは、星真一の出てくる「W3」ですね。お兄さんの星光一が、手塚さんご本人なのではないかと思うので、私の中では手塚治虫=星光一です。漫画家はカバーで、本当は「人類の平和のために戦う人」なんですよ。
残念ながら、手塚さんにちゃんとお会いしたことはないです。
でも、大学を出て働いていたときに、お昼に立ち寄ったレストランで手塚さんをお見かけしたことがあるんです。両側に10人ずつくらい並んだ長いテーブルのはじに、手塚さんが立ってスピーチをしていました。あいさつしに行ってみようかなと思ったのですが勇気がなく、それに、前述のように手塚さんにそっくりな人(おせんべい屋のおじさん)を知っていたので、その人もそっくりさんじゃないかと思ってしまったのです(笑)。
家に帰ってから父に話したら、「きっと何かの会合だったんでしょ。あいさつしてみればよかったのに」と言われました。「そっくりさんなんて、そんなやたらにいないだろう」って。
そのあと1、2年して手塚さんが亡くなられたので、すごく後悔しています。
父の影響のまったくないところで認められるのは、やっぱり10倍くらいうれしいですよ。サーフィンの大会に出ていた頃も、「今日優勝したのは、星新一の娘であることとは何の関係もないのだ」と思うと、達成感が全然違いました。
でも、常にそれを意識していたわけでも反発していたわけでもなく、単に自分の好きなことをしていただけです。
サーフィンも気がすむまでやったし、長男が大学生、長女がハイスクール11年生(高2)になって子育ても納得いくまでできたので、もう自分のことはどうでもいいという心境になりました。星新一の娘として生きてみようと、今は思います。もう47歳なんですけど(笑)。
私がサーフィンを始めた頃、サーフィンのジャーナリストというのはいたんですが、エッセイストというのはいなかったんです。サーフィンについて書くには、記者の目で「サーフィンを極めた人」について書くというのが主流でした。でも私は、もっと発展途上の普通の人が、海に行って日々感じることを書いたっていいんじゃないかと思ったのがきっかけです。
今は、自分の文章を書くことより父の作品を英訳することに興味があります。これも、英語圏の出版社やプロの翻訳家から話が来なくても、自分で訳せばいいんじゃないかと単純に思ったわけです。
英訳したものは、オーディオブックになったものもあり、NHKの番組を国際エミー賞にエントリーする際の字幕監修にも役立ちました。今、著作権管理の仕事が忙しくて英訳の時間がなかなか取れないのですが、がんばってつづけたいです。
第1回日本SF大会(1962年)の貴重な資料を、
ふたりの頭の中には、50年後の日本のイメージがつまっていたと思うのですが、白黒の8ミリの中で動くふたりと、その50年後からふたりを見つめている私たちと、どっちがほんと? みたいなSF感覚が味わえます(笑)。
また、そのときのインタビューで手塚さんは、「SFには人間本来の夢がひそんでいる」と話されています。
SFを通して、よりよい未来を夢見てきた手塚治虫と星新一。ふたりのメッセージが、100年後、200年後の人たちにも届くといいなと思っています。
星マリナさん、お忙しいところ、素敵なお話をありがとうございました!
なお、手塚治虫記念館で開催中の「星新一展 〜2人のパイオニア〜」は、来年2011年2月20日まで開催中です! 期間中にお近くにいらっしゃる際にはぜひ、お立ち寄りください!
写真提供:星ライブラリ
<関連リンク>
星新一公式サイト
http://www.hoshishinichi.com/