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ストーリー

「鼠が関ビル」工事現場地下で、売れないマンガ家山辺音彦が仮死状態で発見された。彼に聴診器を当てがった医師は喪神状態に陥る。音彦は、自らの妄想世界「ジレッタ」に他人を引き込み没入させる能力を秘めていたのだ。 一方山辺の恋人・越路君子もまた、お腹が減ると絶世の美女に変身する、という特異能力を秘めていた。彼らの能力に目を付けたやり手プロデューサー・門前市郎は二人を使って、世界を相手に一大プロジェクトを仕掛けようと暗躍する!

解説

1968/08/14-1969/09/10 「漫画サンデー」(実業之日本社) 連載

題名の「ジレッタ」というのは、登場人物の一人、山辺音彦のあやつる妄想世界の名前です。「ジレッタ」は特殊な超音波と、山辺音彦の脳髄が感応して生まれた妄想で、電波のようにどんどん増幅されて、レシーバー等を使えば他人にも体験することができる、という不思議なシロモノです。それに目をつけた悪魔のようなやり手ディレクター、門前市郎と、彼のプロデュースした、お腹が空っぽの時にだけ絶世の美女に変身するというへんてこな歌手・小百合チエこと越後君子が入り乱れ、ついには国家をも巻き込んだ大騒ぎを引き起こす、というかなり風刺の効いたストーリーとなっています。「人間ども集まれ!」や「フースケ」など、わざと単純で荒削りな線で描かれ、テーマもブラックでエロティックなものが多く扱われた作品群は、大人向けを意識したもので、このようなテイストの作品については、上の「人間ども集まれ!」の解説に詳しく語られています。この「上を下へのジレッタ」もその仲間で、遠慮会釈なく飛び出す皮肉でナンセンス、エロティックなギャグの奔流には、少年向けの漫画を読みなれた方には、少し刺激が強すぎるかもしれません。それでも、この漫画は確かに手塚漫画です。政治やメディアのあり方を皮肉った風刺的なストーリーもそうですが、普段は不細工で、空腹時に美人に「変身」する越後君子、絶え間なく様々な物に形を変える事物がこれでもかというほど登場する妄想世界「ジレッタ」の描写などもまた、「メタモルフォーゼ」というテーマを追い続けた作家、手塚治虫の真骨頂と言えるでしょう。ぜひ手塚流実験アニメで見てみたい、鮮やかなものばかりです。

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  • 上を下へのジレッタ (1)
  • 上を下へのジレッタ (2)

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