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ストーリー

今回ご紹介する『ダスト8』は、人間の死について、「生命の石」という架空の物質をキーに描いたオムニバス短編風の物語です。「死」の物語、ということで、亡くなった人をお迎えする日本独特のこの季節の伝統行事「お盆」にちなんでみました。周防灘上空を飛行中の旅客機が、故障により墜落。ところが、墜落した島は地図にもレーダーにも映らない謎の島でした。旅客機は突然レーダーから消えてしまい、「神隠し」にあったもの、と思われたのですが、その中から8人が生き残り、事故機から奇跡の生還をとげます。実は、旅客機は「生命の山」がそびえる不思議な島に墜落していたのでした。事故の際にその「生命の山」にぶつかって、山の岩肌が削れ、そのかけらが10人の人間にふりかかったのです。この「生命の山」から削れた石のおかげで、彼らは生き残ったのです。そのうち二人の少年少女の体にもぐりこんだ「キキモラ」という妖精は、残りの8人を探し出して、彼らが持っている山のかけら——「生命の石」を取り返してくるよう、死に神の「ボス」に命令されて、いやいや人間の国に降りていきます。8人はいずれも日本人ですが、性別も職業もまちまち。日本各地に散らばった人々をキキモラは苦労をして捜し当て、石を返すように言います。石を取り上げられたが最後彼らは死んでしまうのです。当然彼らは、キキモラを死神として恐れ、なんとかして彼らの手から逃れようと必死になります。この作品の一番の見所はやはり、キャラクターのはっきりした8人の生還者たちが、キキモラに迫られて死を目前にした際に、どんな反応を示すのか、というところでしょう。皆、はじめは一様に突然訪れた死に神を前におびえるのですが、その後の行動がキャラクターごとに違っていて、大切な目的を成し遂げて満足して死ぬ人、みっともなくあがいたあげく、結局死んでしまう人、自らの目的のために命を投げ出すのに躊躇一つ見せない人、様々です。しかし皆それぞれに人間らしく、みっともなかろうがかっこよかろうがじんと来る最期を遂げるように描かれているところには、人間を愛した手塚治虫の視線の優しさを感じます。結末はまたかなり大胆などんでん返しで、びっくりするのですが、読後感はじつはハッピーエンドで、暗くならないので、「人がどんどん死んでいく話なんて……」と、読むのをためらった人も是非読んでみてください。

解説

1972/01/9-05/14 「週刊少年サンデー」(小学館) 連載

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  • ダスト8 (1)
  • ダスト8 (2)

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