1967-68年
【解説】
日本人・天下太平(てんかたいへい)の精子には特別な性質があった。それは男でも女でもない無性人間を生みだすというものだ。無性人間は自分の意志も欲望もなくただ人の命令に従う。それを発見した医者の大伴黒主(おおともくろぬし)は、ブローカーの木座神明(きざがみあきら)と組んで彼を利用し、戦争用無性人間を大量生産して輸出する事業を始めた。やがて彼らは太平洋上の孤島に独立国を作り、太平はその国の総統におさまる。
総統となった太平の姿はチャップリンの映画『独裁者』よろしく、ドイツ第三帝国を率いた独裁者ヒトラーのパロディとなっている。
連載時にハッピーエンドだった結末は、単行本化の際、手塚自身の手によってアンハッピーエンドに描き変えられた。