ライオンブックスシリーズ「狂った国境」

1957年

大国同士が領有権をめぐって睨み合う南極大陸で、国境線が移動するという怪現象が。まだ複数の国が南極の領有権を主張していた時代を反映したSF作品です。

 マンガ ライオンブックスシリーズ「狂った国境」より

 マンガ ライオンブックスシリーズ「狂った国境」より

マンガ ライオンブックスシリーズ「狂った国境」より

【解説】

近未来。南極大陸では大国の進出が進み、レッドベア国とブルジョイ国が国境線を作って互いににらみ合っていた。

ところがその国境線がなぜかたびたび数百メートルも移動するという。

そこで日本人地質学者オーガキが国連から派遣されレッドベア国へと調査にやってきた。

だがオーガキがそこで最初に出会ったのは、国境を越えてブルジョイ国へ逃げようとする人々を容赦なく射殺する冷酷な国境守備隊長だった。

 

『おもしろブック』1957年3月号別冊付録として発表されたライオンブックスシリーズの第8作目。

この作品が発表された1957年7月から58年12月にかけては国際地球観測年と定められ、これまで複数の国が領有権を主張していた南極大陸を国際協力のもとで平和利用しようという動きが進んでいた。

手塚はそうした動きをいち早くとらえて本作を描いたのだろう。

そして1959年12月には南極の軍事利用や国境を定めることを禁止し、反対に科学的調査の自由などを認めた南極条約が成立することになる。