明治末期の北海道を舞台に、一癖も二癖もある登場人物たちが「アイヌの埋蔵金」を巡って繰り広げるサバイバルバトル! 北海道開拓史、アイヌ文化など、北海道の魅力を満載した漫画『ゴールデンカムイ』が朝日新聞社主催の第22回手塚治虫文化賞・マンガ大賞を受賞しました。
綿密な考証と緻密な描写はもちろん、ダイナミックなストーリー、ときに過酷にもなる展開を和ませて余りあるギャグやグルメ描写、まさに「和風闇鍋ウエスタン」のキャッチフレーズの通りのエンターテイメント全部盛りの本作の魅力については、とにかく作品を読むのが一番手っ取り早い! とはいえ、いろいろ知りたいことも……。作者の野田サトルさんに、書面にて質問に答えていただきました。
野田サトル
北海道北広島市出身。2003年に「別冊ヤングマガジン」(講談社)掲載の読み切り「恭子さんの凶という今日」でデビュー。 11~12年にかけて「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で『スピナマラダ!』を連載。
14年より同誌にて『ゴールデンカムイ』を連載中。
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このたびは受賞おめでとうございます。
『ゴールデンカムイ』はアイヌの少女・アシリパと日露戦争から帰還した元兵士・杉元佐一が出会うことで物語が動き始めます。
アシリパや、彼女のコタンでの暮らしがとても魅力的に描かれていることは本作の大きな特徴の一つであろうと思いますが、一方でアイヌ文化を描くことは長らく難しいこととされていました。
『ゴールデンカムイ』が誕生する過程で、アイヌを描くことに関して葛藤やおそれはありましたか?
アイヌのコタンに招かれた杉元佐一がたびたびアシリパに教えられるアイヌ文化に関する教えも読みどころの一つ。
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「恭子さんの凶という今日」は他紙の漫画賞を獲得したデビュー作ですが、今は「週刊ヤングジャンプ」の看板作家となりました。
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熊谷達也氏の作品からインスピレーションを受けたそうですが、他に読んでみた作品はありますか?
銀の毛並みの狼・レタラと、レタラを追う二瓶鉄造。『銀狼王』からのインスピレーションが生かされています。
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描かれたエピソードは読者の思いもよらない方向にどんどん進んでいくように思います。どうやってアイディアをひねり出していらっしゃるのでしょうか?
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作品としてはシリアスなテーマを扱いながら、ギャグ表現もふんだんに盛り込まれています。
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また、魅力的なキャラクターがいっそう作品の魅力を高めていると感じます。暗号のカギを握るのは脱獄囚たちですし、彼らを追うキャラクターたちも皆一癖も二癖もあって、いわゆる「善良な市民」ではないですね。アウトローでありながら、一つ筋の通った人物、というか。
野田先生の自画像にも採用されている辺見和雄は、凶悪な殺人犯ながら、どこか憎めない多面的な人物。出だしこそ不気味な印象ですが、一連のエピソードを読めば、「こいつに早く死んで欲しい」とは、思えなくなるはず。
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キャラクターの服装も、つい注目してしまうのですが、杉元や白石の和洋折衷スタイルや、アシリパやキロランケのアイヌ衣装など、非常に細かく描きこまれています。さまざまな立場のキャラクターが出て来るために、さまざまな知識が必要ではないか、と思います。実はここが大変だった、というところはありますか?
鶴見中尉の服装に注目。登場するたびに微妙な変化が。軍装の人物はほかにも様々な階級で登場します。
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連載中の「ヤングジャンプ」誌上では、谷垣がグラビアページに登場し、大きな話題を呼びました。1人、誰かを選んで模擬写真集をつくるとしたら、やっぱり谷垣になるのでしょうか。
阿仁マタギ・谷垣源次郎のセクシーグラビアページは単行本未収録。まだチャンスはある!?
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ちなみに、ファンの間ではどのキャラクターが人気なのでしょうか? またそれは、先生の中では納得の反響なのでしょうか? 少し意外な声もあったりするのでしょうか?
月島軍曹(1コマ目奥)と尾形百之助(2コマ目)の対決シーン。寡黙な副官タイプの月島と、プロフェッショナルでシニカルな尾形。野田先生の「素」は尾形寄り?
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手塚治虫公式サイト、ということで、ここは伺いたいところですが、かつて手塚治虫も『シュマリ』や『勇者ダン』といったアイヌをテーマとした作品を描き、「征服者である内地人であるぼくが、被害者であるアイヌの心情などわかるはずがないと悟った」とあとがきに書き残しています。
読んでみたりはされたのでしょうか?
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もしあれば、好きな手塚作品か、印象に残っている手塚作品を教えてください。それはいつ頃、なぜ手に取ったのでしょうか。
『三つ目がとおる』より 和登千代子
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読者に向けて何か一言ありましたら、お願いいたします。
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お忙しい中、ありがとうございました!
(C)野田サトル/集英社