「自然環境×2次元コンテンツ×メディアアート」がテーマの体験型エンターテイメント、兵庫県立淡路島公園アニメパーク『ニジゲンノモリ』が7月15日にオープン!
園内のアトラクションのひとつとして、「ナイトウォーク 火の鳥」が開設されます。
プロジェクションマッピング等の技術により光輝く火の鳥が出現! 作品の世界観を題材にしたオリジナルストーリーを追いながら、全長約1.2kmの夜の森の中を歩きます。
今回のオススメデゴンス! では、オープンを記念し、『火の鳥』復活編をご紹介します。
ロビタファンは必読デゴンス!!
手塚治虫のライフワーク、『火の鳥』には、複数のエピソードにわたって登場するキャラクターが何人か登場します。ロボットの"ロビタ"もその中の一人。「未来編」、「復活編」で登場するロビタは、大きな丸い頭、円筒形の寸胴にカニのはさみのような手をした、原始的な形でありながら人間並みの心を持っています。
「復活編」は、雑誌「COM」1970年10月号~1971年9月号に連載された『火の鳥』の第6作目。前掲の「未来編」より後に描かれたものですが、作品の時制は「未来編」に先行する物語となっています。ロビタという心を持つロボットを通して、人間の心の問題について深く掘り下げた傑作です。そのけなげさや人間臭さからか、密かにファンも多いロビタの「誕生」と「死」が描かれています。
手塚治虫のライフワーク、生命の生と死の問題をテーマに過去と未来をダイナミックに行き来しながら進められる物語『火の鳥』。その中でもこの「復活編」は少々変わりものといえるかもしれません。
進歩した医学の力で死から蘇った少年、ロボットと人間の恋愛、「心」を持ったロボット…、人間や生命といったどちらかといえば有機的な世界を主に描いている『火の鳥』の世界で、「生命」ではないロボットが主役をになうこの「復活編」ですが、無生物の立場から逆説的により深く『火の鳥』のテーマをえぐっているといえるでしょう。
「復活編」では、活気溢れ、人間に溢れた都会も、動物たちが躍動する自然も描かれていません。登場する人間たちは皆どこか人間らしい温かみの欠ける、まるで死人のような冷たさですし、雑踏や自然のにぎやかな物音が一切描かれていないせいか、読んでいると、周りの音まで吸い取られそうな強烈な静寂が絵の中からにじみ出てくるようです。動物より静物が、生よりも死が、より存在感を持っているこの物語では、ただチヒロやロビタたちロボットだけがかろうじて生命らしくあたたかく生きているようにも見えます。ニールセン博士やレオナの家族たちのような良識的な人物はおろか、臓器密売組織の女ボスやランプ演じる月の倉庫番といった、本来醜悪なまでに人間臭く、生き生きとしているべきいわゆる「悪人」たちでさえ、半分死人のように生気が感じられないのです。血が通っているはずなのに死んだようにつめたい心の人間と、血が通っていないはずなのにあたたかく優しく描かれるロボット…。やはり改めて生命とはいったい何か、という問題を考えさせられてしまいます。
この作品でロビタは、「心」を持つがために悲劇をたどるのですが、それは果たして、悲劇だったのか。悲しみや怒りを感じられるうちが、生命の幸福なのではないか…思わずロビタと一緒に悩んでしまう内容の深みはさることながら、この強烈なまでの寂しさと静けさをぜひ、よく味わってみてください。
これほどまでにインパクトがある一コマがあるでしょうか。見開き一面に描かれるロビタたちの姿……。ちなみに、こちらの一コマは、AD3030(7巻収録)、AD3009(8巻収録)の2回登場します。
はじめのAD3030では、何万人ものロビタが職務を放棄し、とある集団行動にでるシーンから始まります。既存のロボットとは違い、人間くささをあわせ持つロビタという存在。なぜ、悲劇的とも言えるその行動を選んだのか、そもそも、なぜ、彼らは「心」を持つのか。物語はAD3009にさかのぼり、ロビタの誕生を紐解きながら描いていきます。
彼らが最終的に辿る運命を知ったとき、悲しみを通り越して、不思議と愛しさすら込み上げるような、なんともいえない気持ちに包まれるはずです。
チヒロ「あさってまで秒なら たった 十七万二千八百秒だわ」
会社の機密がインプットされたロボットであるチヒロとは、彼女に時間ができたときにしか会うことができません。
次はあさってに会う約束をするレオナとチヒロ。
去り際に口にする、恋する女の子らしい部分と、時間を秒換算して即答するロボットならではの感覚とがうまくユニゾンしているこのセリフに、思わずキュンとしてしまいそうになります。